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ASCII STARTUP 今週のイチオシ! 第64回

ハードウェアベンチャーは儲からないがロマンがある

旧ウォークマンのものづくりを受け継いだDJオーディオ機器「GODJ Plus」秘話

2017年08月11日 07時00分更新

文● 柳谷智宣 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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組み立て工場でのミスはほとんどゼロ 日本のすごいものづくり

 前機種に比べて、日本でのものづくりの比重が高くなっているのもGODJ Plusの特徴だ。

 宮崎氏は構想を練っている際、地元仙台市の職員と話し、被災後に受注が減っているが、すごくいい工場があると紹介してもらう。かつてソニーのウォークマンを何万台も出荷した実績がある工場で、そこの役員と話すうちに、被災地でのものづくりというストーリーを描き始めた。そして、「GODJ」は韓国と中国で製造されたのだが、「GODJ Plus」は日本で製造することになる。

 さすがに複雑な製品なので、個々の部品は全世界から調達しているが、今後は「基板制作から部品調達、塗装まで、すべて我々が1時間以内でいけるところでやりたい。後は、ディスプレーとか、プラスチックの部分も宮城で考えている。コストは若干高くなるが、1.5倍から2倍くらいの価格までなら許容したい」と宮崎氏。

 海外から輸入する部品は価格が安いもののそれなりのクオリティー。不良が発生したときには輸出しなおして修正をかけることになる。「実際見に行って問題を説明しても、絶対自分のせいとは言わないので、そこはまあなんとか折半するとか、こういったコミュニケーションコストを考えると、日本でやれるならやった方がいいと考えた。もちろん、日本でも不良ゼロにはならないが、何か起きた時には工場と直接相談ができる。組み立てに関しても、石巻なら中国と比較しても高くない」

 組み立ての技術、というところだけ見れば中国でも同様のことができるという。しかし、宮崎氏は効率化への努力は日本ならではだと太鼓判を押す。たとえば、「GODJ Plus」は当初1日50台の生産を目標にした。初日は20台しか作れなかったのだが、どんどん台数が上がってきて、最終日には104台も作れるようになった。工場長が、組み立ての流れを見て、効率化を進めたおかげだという。ボトルネックになっている箇所があると、その人はさらに頑張り、横の人が助けたりして川が流れるように進んだ。組み立てのミスはほとんどなく、発送ミスもゼロ。日本のものづくりはまだまだ生きていた。

苦労したのは基板の設計部分だが、
そのおかげで反応速度は10ミリ秒以下に

 量産に入る前には、もちろん試作する。部品ごとに回数は異なるが、たとえばシリコンパッドは7回も作り直しを行なった。一番大変だったのは事前の想像通り基板製作。ここでミスがあると、ソフトのアップデートでは解決できなくなってしまうので、慎重を期する必要がある。基板のテストが最もスケジュールを圧迫したそうだ。

 実は宮崎氏の最初の経歴は、半導体メーカーのモトローラ。その時の経験で半導体の設計とその半導体の上で動くプログラムの作成が得意だった。なかでも、特にオーディオ機器のプログラムに詳しいという。PCではないので、非常に限られたリソースでいい音を出さなければいけない。とにかくレスポンスと安定性は重要視したそうだ。

 「DJプレイでは、安定性と高速応答性をすごく求められるが、iOSやAndroidアプリだと到底実現できない。たとえば、スマホの画面をタッチしてから音を出すまでに100ミリ秒とか数百ミリ秒かかってしまう。しかし、GODJ Plusであればサンプラーを叩いて音を出すまでに、10ミリ秒を切っている。我々のシステムにはOSがないので、電卓クラスの安定感となっている」(宮崎氏)

 いろいろと独自技術を搭載しているとのことだが、特許はほとんど出していないという。人には思いつかないだろうという技術がいくつもあるのだが、特許を取ろうとするとそれを開示しなければいけない。だったら、逆に謎のまま出そうという判断をしたのだ。製品を買ってばらしてしまえばわかるのではと聞いたところ、「解析できないと思う」と宮崎氏。

 現在、宮崎氏は「GODJ Plus」のことをDJ機器とは言っていない。DJ機器という商品分類では、現状はパイオニアのひとり勝ちの状況。そこは、ベンチャーならではの勝算を考えてのことだ。

 たとえば、「GODJ Plus」を購入している人の用途がみなDJプレイをするわけではないという。個人のユーザーが、自分で楽しむために曲をつないで音楽を楽しむ軽いユースケースも多い。「GODJ Plus」ならダブルカセットなので、普通に選曲してつなぐなど、かつてのラジカセっぽく使い、家族や友人達などが集まる際に楽しんでいるそう。数としてはそんな一般ユーザーが多いので、その市場を開拓したいと宮崎氏は語る。

 かつてCDラジカセやMDコンポを使って、お気に入りの曲を編曲したりしていた経験がある読者も多いのではないだろうか。ちょっと形は違うが、「GODJ Plus」で似たような体験ができるというわけだ。

 「ラジカセという以上は、ラジオの機能もなければいけない。そこで、今後は『Spotify』のようなストリーミング機能を新たに付けることを考えている。すでに開発は進んでいて、Wi-Fiのドングルを付けてネットから楽曲を取れるようになる」(宮崎氏)

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