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北海道のIT業界事情「#みんなの札幌移住計画」とは

連載
ASCII STARTUP 業界ポジトーク

「ASCII STARTUP 業界ポジトーク」は、ベンチャー、スタートアップ、テクノロジー業界で活躍するインキュベーターらを著者に迎え最新情報を共有する“ポジショントーク”連載です。

 アスキーをご覧の皆様、はじめまして。北海道の札幌でWebマーケティングのコンサルティングを行っているマーケティストの赤沼です。北海道・札幌のみんなの札幌移住計画”を紹介します。

北海道・札幌の人気の秘密は?

 あなたは北海道や札幌についてはどういう印象を持っているだろうか?

 私は北海道の札幌に生まれ、大学卒業後、東京に住んだ。こちらで驚いたことは北海道物産展がとても人気なことである。「北海道物産展が開催されているから、◯◯のデパートに行く」という方に何度も会った。

 だが北海道物産展を見ても、北海道に生まれた自分にとってはよく見慣れている商品がただ並んでいるだけであり、目新しさは特にない。北海道生まれにとっては特に魅力を感じない北海道ブランドが、東京の方にとっては魅力的なブランドだということを知った。

 日経BP総合研究所の2016年調査(関連サイト)によると、札幌市は「住んでみたい自治体」1位に選ばれた。その他の調査でも「住みたい街」として札幌市はおおむね上位に選ばれることが多い。札幌は人気の都市であり、強いブランド力を持っている。

札幌のIT業界は?

 人気のある北海道・札幌。では、IT業界にとっても北海道・札幌は素晴らしい場所なのだろうか。

 北海道ITレポート2014(関連サイト)を元に、北海道のIT業界を伝えるWebメディア、キタゴエ(関連サイト)にて札幌市役所職員からの解説を引用する。

 平成26年時点の北海道のIT市場規模は約4000億円です。グラフからもわかるように近年はずっと微増をしておりまして、過去30年間の推移でみると約15倍の規模になっています。北海道の全産業の生産規模が18兆円くらいですから、IT産業は北海道全体の2~3%くらいの規模になりますね。

――なるほど、IT事業の従業員数はどれくらいでしょうか?

 約2万人おりまして、こちらも微増傾向です。北海道全体の就業者数が250万人くらいですから、1~2%くらいがIT関連の従業員ということになりますね。1~2%の人員で2~3%の生産をしているので、他産業と比較するとIT産業は労働生産性が高いと言えるかもしれません。

 札幌市役所職員の解説によると、十分な市場規模があることがわかる。

 私は短い期間ではあるが、東京在住の間、何人もの札幌出身者に会った。地元、札幌の話に花が咲く中で、「将来どうするんですか?」と聞くと、個人的実感で恐縮だが、札幌出身者の約半分は将来、札幌に帰りたがっていた。

 だが、帰りたいにも、帰れない札幌出身者が東京にはいた。理由を尋ねると、そこには「給料が低い」、「やりたい仕事がない」という答えが返ってくる。十分な市場規模がある北海道IT業界だが、なぜ札幌には帰る場所はないのか?

ニアショアとしての北海道IT業界

 数年前、IT業界では「オフショア開発」という言葉が流行り、開発価格の安い海外に発注する流れがあった。以前は中国であり、現在は東南アジアに多い。では、類似の言葉で「ニアショア開発」という言葉をご存知だろうか?

「ニアショア開発」とは海外よりも近く(=near)、比較的開発単価の安い日本の地方に発注することである。このニアショア開発に北海道、特に札幌のIT会社が選ばれることが多い。

 仕事があるのはいいことだが、ニアショア開発は「開発単価が安い」という理由で選ばれる。当然、開発会社に入ってくる金額が少なく、そこから社員に払われる給料は低くなってしまう。

 札幌のIT業界ではニアショア開発を重視しているIT会社が多い。このニアショア開発の影響によって、東京と比べ、札幌のIT業界で働く方の給料はおおむね低い傾向がある。

札幌のIT企業は魅力がないのだろうか?

 では札幌のIT企業はこのニアショア開発の影響を受け、魅力がない企業が全てだろうか? もちろん、そうではない。

 札幌にもニアショア開発を行わず、独自でサービスを提供している会社もある。システム開発を行っているが、ニアショア開発のような低価格で勝負せず、技術力で勝負している会社もある。札幌IT業界に携わっているとわかるが、実は魅力的な会社がいっぱいある。

 しかし、東京に住んでいると札幌の魅力的な会社を見つけることは非常に難しい。そのような会社は常に転職サイトに求人情報を載せているわけではないし、転職サイトに頼らず人材を集めている企業もある。

 一方、札幌の魅力的な会社に話を聞くと、口々に「良い人材はいませんか?」と言われる。機会があれば良い人を良い会社に紹介することを行っているが、私一人では限界がある。

「札幌に帰りたいが、良いIT企業が見つからない」という東京在住の札幌出身者と、「良い人材がいない」という札幌IT企業のミスマッチが起きている。札幌に住んでいるとこのミスマッチを解決したくなっていく。

移住は、まずは仕事から「#みんなの札幌移住計画」

 札幌IT業界におけるミスマッチを解決するべく行ったのが、2016年1月開催した初の東京イベント、札幌移住計画主催による「#みんなの札幌移住計画」である。東京開催にもかかわらず、18社の札幌IT企業に参加いただいた。

 移住に必要なものは何だろうか? 最近は「地方創生」として予算が付くこともあり、地方自治体が格安、または無料の住居を提供しているケースがある。しかし、移住した先で低い収入しかない場合、低コストの住居を借りたとしても、単にスケールが小さくなっただけの生活になってしまう場合がある。最近では希望した仕事ができず、移住先に馴染めない「移住失敗」という言葉も話題になりつつある。

 私たち札幌移住計画では、移住にとって最も優先することは「仕事」だと思っている。収入を得るべき手段も確保しつつ、やりたい仕事もやる移住がベストだと考えている。移住先で仕事を転職によって獲得すると仮定する。しかし、転職しようにも、東京にいると札幌のIT企業の存在が見えない。

 そこで札幌移住計画では、札幌の魅力的な企業を首都圏の方たちに紹介するために、「札幌の企業が東京に行き、直接アピールできる仕事相談ブースを設ける」という手段を用いた。

 ミスマッチが少しでも解消し、札幌に帰りたい方は札幌に帰れるように札幌の魅力的なIT企業と出会うイベント。このイベントを通して、札幌に少しでも移住が進めればと考えている。

2017年1月も開催する#みんなの札幌移住計画

 この「#みんなの札幌移住計画」は話題を呼び、さまざまな方にブログを取り上げていただいた。広告費はかけずに来場者は100名を越えた。

 詳しくは開催レポート(関連サイト)をご覧いただきたい。

 今年は札幌市の正式なバックアップをいただき、2017年1月28日に#みんなの札幌移住計画を再び開催する。

「住みたいところに住める」というシンプルな願いを実現できる世界に

「札幌出身者は札幌に帰りたがっている」という話を冒頭にさせていただいたが、誤解のないように補足すると、全ての札幌出身者が札幌に帰りたがっているわけではない。札幌出身者でも東京のほうが肌に合い、東京生活を楽しんでいる方ももちろん存在する。

 また、札幌移住計画は「札幌出身者が札幌へ」という「Uターン」だけではなく、北海道以外の出身者が、札幌に来る「Iターン」も大歓迎している。実際、私の周りにもIターンで札幌に来た方は多く、観光で来た北海道が大好きになった方がいたり、ウインタースポーツが大好きで札幌に住んでいる方は、北海道出身者よりも北海道を満喫しているのでは、と思うほどである。

 私は「自分が住みたいと思うところに住める」というシンプルな願いを実現できる世界にしたい。私はたまたま札幌出身であったため、札幌移住を進めている。先日、福岡に旅行してきたが、福岡も大変素晴らしいところだった。福岡出身であったら、福岡移住計画に参加していると思う。

 あなたが今、住んでいるところはあなたが住みたいと思っている場所だろうか。もし、本当に住みたいところに住んでいない場合、本当に住みたい場所に住む活動を始めてみるのはいかがだろうか。

 もし、今読んでいるあなたが北海道や、札幌に住んでみたい気持ちがある方は、2017年1月28日に開催する#みんなの札幌移住計画にぜひ参加してほしい。新しい一歩を踏み出したい方への一歩となるイベントになるよう準備中である。ぜひイベント会場でお会いしましょう。

■関連サイト
#みんなの札幌移住計画 2017
参加申し込みフォーム

赤沼俊幸(マーケティスト)

著者近影 赤沼俊幸

札幌を中心にWebマーケティングコンサルティング・サポートを提供するマーケティスト代表。2011年から2013年にかけて北海道初のコワーキングスペースGarage labsの運営を行う。2014年、マーケティストを創業。札幌IT業界の環境向上を使命として、2015年、起業家を作るイベント、Startup Weekend Sapporoを共同主催。2016年1月には札幌移住計画として、札幌移住を促進するイベントを東京で開催。北海道のITを届けるキタゴエにも記事提供を行う。Twitterは@toshiyuki83

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