「英語のライザップ」人気の秘密は第二言語習得(SLA)学習メソッド
3カ月でTOEIC800点超え続出!究極の英語ジムENGLISH COMPANY
2016年05月13日 07時00分更新
自社製のアプリはすべて「効率よく勉強ができるため」
ここまで好調を見せているが、ボトルネックは何か尋ねると「指導する人材」だと岡代表は語る。だが、そのフォローアップの1つとしてアプリの利用も始まっている。
現在、恵学社では『Listening Hacker』というiPhoneとAndroid用のアプリを出している。英単語と英単語がつながる連結部分の発音の変化が学べるリスニングアプリで、実際のトレーニングとして、または予習や復習としても使える。
このアプリはあくまでも誰かの成績を上げるサポートするためのもので、現場が使いやすいものを作っていくだけだという。カフェのようなスタジオスペースと同じように「効率よく勉強ができるためのものの1つ」という位置づけだ。
「モチベーションが高い人ならばCD教材で勉強すればいいけれど、たいていは続かない。だからパーソナルトレーナーが必要。そのトレーナーをEdTechで武装して、ものすごく強化したい」(岡代表)
「EdTech」はEducation×Technology(教育×テクノロジー)の造語だが、ENGLISH COMPANYではオンライン動画で受けられる授業といった単体で完結する教育方法ではない、トレーナーによる教育のフォローアップの1つという意識が強い。
現在は新しいアプリも作成中だ。
「英語のパーソナルトレーニングに関することをなんでもできるようにするアプリを作っている。トレーナーにチャットで質問をしたり、英単語テストの機能や、シャドウイングが1人でできる機能や、進捗状況もログやカレンダーで見えるように盛り込みたい」と岡代表。
テスト版を作っている段階だが、シャドウイングでは発音した英文をボイスメモで録音して、トレーナーがチェックできるようなシステムを考案中だ。これが実現すると、英語ジムに通うのは週2回でも、毎日の自宅トレーニングが充実したものになる。
ちなみにアプリはすべて内製。一度、外注に出したことがあったが失敗した経験がある。
「やりたいことは学力を上げて、これまで分からなかったことが分かって喜んでもらうこと。そのような教育現場では合理化を超えた人間的な部分が大切なこともある。その部分にITは苦手なため、ITと人間の力をうまく融合する必要がある。そこは、教育の現場を分かっている人でないと作れない。便利なツールを作れば、教える側を効率的にできるので人材をエンパワーできる」と岡代表。
アプリ作りの陣頭指揮は、同社エンジニアの河合貴文氏が執っている。「これまではIT万能みたいな気持ちがあったが、いまは人がやらないとダメな部分があると思えてきて、あえて合理化しすぎないようにしている点がある。アプリはあくまでも人と人をつなげる1つのツール」だと河合氏は語った。
ITの技術があるだけでもダメだし、教育があるだけでもダメ
学習をハックすることをかかげる教育系ベンチャーで、学習現場の雰囲気作りから一線を画す作りだが、各サービスを束ねる恵学社という堅実な社名の通り、根の部分は「熱い教育者」としての姿勢があり、インタビューでの岡代表の発言にもそれは強く表れていた。
「いつも思い出すのは、昔教えていた1人の中学生の生徒のこと。その生徒は、成績が良くないし、学校ではいじめもあった。20点しか取れない科目があったので、塾でものすごく勉強させたら、学校のテストで80点を取れた。その日、見えるか見えないかくらいの遠くから、テストの答案用紙を振りながら走ってくるのを見た。あれくらい喜んでもらえるものなんだと分かって、そういうものを、たくさん作りたいし、そこにこそ価値があると思う」(岡代表)
ビジネスの本命として始まった英語ジムの実績はすでに折り紙付き。あとはトレーナー=教員という属人的な部分がボトルネックとなる学習塾の経営メソッドを、いかにSLAやアプリ、メディアといったツールで塗り替えられるのかに期待したい。
実際自分も始めたいという思いに駆られ指導時間を聞いてみると、3カ月間毎日最低1時間の自主学習時間の用意は必須とのこと。だが、これでTOEIC高得点というのは魅力的だ。
ちなみに、中学校の英語教科書にSLAのメソッドを使えば、2週間ほどで一冊全部が覚えられるほどその学習効果は高いという。
「大人がやっているくらい真剣にやれば、教科書くらいの量は実は大したことない。ただ、今の学校教育には制約が多すぎるため、SLAのメソッドは使えない。ウチのようなプライベートな企業で教えるしかない」と岡代表はきっぱり。
いずれは全国規模でそれをやりたいというが、もしそうなったら日本の英語教育は変わって行くだろう。
●株式会社恵学社
2010年2月設立。予備校運営、英語ジムの運営、教育系アプリの開発、メディア運営などを手がける教育系スタートアップ。
自己資本が主で、調達などは未実施だが、英語ジムの将来展開では上場も狙う。
社員数は2016年5月現在で63名。英語ジムのトレーナー、ビジネスサイドの人材を今後は増員予定。
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