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レビュー総数1億突破 Yelpはインバウンド便利ツールとして成功する?

生活すべてをレビューできる米国発世界最大級コミュニティサイトの戦い方

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日本のYelperは積極的!?

 ローカルでの具体的な数値こそ出なかったものの、日本でのYelpはグローバルなマーケットの中では伸びしろがあるという。しかし、国内ではすでに口コミのサービスやアプリのライバルはすでに数多い。ここからのYelpをどのように活性化させていくのだろうか。

――ウェブサービスとしての上陸には、約10年の遅れが日本でありましたが、今後のプランはどのように考えていますか。

 過去にも、2007年のアトランタや2015年のフィリピンでも同じようにライバルがいました。しかし、創業から11年の間に世界中でコミュニティを作る力や方法を学んできました。スタートが遅くても、今までの経験を生かして、迅速に日本でも活性化していけると思います。我々は今、「Yelpを便利に使いやすくすること」だけを考えています。そして、シリコンバレーでは「コンテンツがキング」とよく言われていますが、Yelpはすでに1億のレビューを持っています。

 コミュニティでのイベント開催にあたっても、10人ぐらいの少人数から、5000人という大規模なものもあり、イベントによって目的が違います。Yelpをスタートしたばかりの街で、Yelpユーザーが20人オフラインで会うということはすばらしいことです。逆にYelpの歴史がある街では多人数が参加できるイベントが必要になるでしょう。

日本でも毎週のようにYelperたちによるさまざまなイベントが開催されている。

――日本での小さなコミュニティイベント開催の感触はいかがでしょうか。

 日本のYelperたちは集まるのが好きで、思っていたほどシャイではありませんでした。さまざまな国に行きましたが、もっともフレンドリーだったのが日本です。Yelper同士が交流して楽しんでいます。

 一方で日本のイベントは他の国と違う点も発見しました。日本では乾杯の合図まで飲み物を待っているんです(笑)。これは他の国ではありえませんが、そういう違いもリスペクトしています。

――日本のYelperについては、どんなペルソナを設定しているのですか。

 よくあるYelperは、コーヒーやラーメン、あるいはテクノロジーなど、何かにすごく興味を持っています。そして共有することが大好きで、自分が良いと感じたものを知らせたい気持ちを持っています。あらゆる国のYelperと会いましたが、どの国でもタイプが似ています(笑)。

Yelpで質の良いレビューを書くことで、選ばれたるユーザー“Yelpエリート”に選出される。

Yelp Japan代表取締役社長の髙田智之氏も熱心なYelperで、エリートYelperとして3000近いレビューを投稿している。

――Yelperは“おもてなしの心”をもつ人が多いということですね。日本での今後のロードマップをお聞かせください。

 まずは、いちばん大事な街である東京と大阪にフォーカスをおきます。2004年のスタート時から変わらない方針は「街で一番便利なガイドになる」こと。日本でもその方針は変わりません。「1センチの間を深く掘る」という方針でいきます。そして、テクノロジー的においても、日本人にとって便利なツールにしていきます。

――「1センチの間を深く掘る」とは、どのような意味でしょうか。

 日本でもっとも大事な街で、いちばん便利になるということです。同時にユーザー数も増やしていきます。Yelpではパン屋だけでなく、自動車整備や靴の修理も見つかる。そういう意味で「深い」ということです。

店のオーナーには無料で専用ツールを提供

――ユーザーへは、どのようにYelpの使い方をサポートしているのでしょうか。

 Yelpの使い方自体はサポートしていますが、多くのユーザーは自分にとって何が便利かを理解しています。たとえば写真であれば、お店に行く際、外から見た写真があるとわかりやすいので、自分で写真を撮る際に外観の写真を入れてくれます。日本ではひとつのビルに複数の飲食店が入っていますが、外国人旅行客には見慣れないものです。そんな時、レビューに看板の写真があるとわかりやすいです。

 ほかに便利な機能としては、チェックイン機能やブックマークがあります。チェックインは自分が今ここにいることを知らせられるほか、お得なサービスが受けられることもあります。わたしは世界中の気になる店をブックマークしているので、初めての街に行ってもお気に入りのお店がたくさんあり、地元のような雰囲気を感じられます。

お気に入りの場所や店をブックマークしたり、店の予約を取ることも可能。

――店やサービスのオーナーに対してはどんなメリットがありますか。

 メリットはたくさんあります。ビジネスの運営者や店のオーナーの場合、完全無料のオーナーツールが使えます。店のページからオーナーであることを申請すると、店に直接電話がかかってきて、パスワードで承認されるという仕組みです。

 オーナーツールでは、写真や店からのコメントを登録できるほか、Yelperのレビューに返事ができるようになります。ツールは全世界無料で提供していますが、いくつかの街では宣伝費をもらって紹介している店もあります。

――日本では、飲食店オーナーへ足を使った営業を行い呼びかけるというのも聞きますが、Yelpはどんな方法をとっているのでしょうか。

 オーナーのサポートはコミュニティマネージャーが行います。また、アメリカやヨーロッパでは営業部隊がいます。ただし、営業するには良いコンテンツが必要です。日本のような新しいマーケットは、まずよいコンテンツを増やすことに集中しています。

――コミュニティマネージャーの役割はなんでしょうか。

 どの街でもYelpの顔です。ビジネスオーナーだけでなく、Yelperにも教育を行なうほか、新しいユーザー増やすためのマーケティングを担当しています。そして、その街の“モデルYelper”という役割もあります。

既存サービスの壁を超えるには時間が必要

――Yelpが海外のように日本でも使われるようになるには、どうしても既存のサービスがハードルになってくると思います。その点はどうやってクリアしていくのでしょうか。

 わたし自身GoogleやYahoo!で検索はしますし、雑誌やテレビも見ます。それがなくなるのを求めているわけではありません。Yelpには多くのすばらしいコンテンツがあるので、まずはそれを知ってもらわなくてはいけません。「あなたの求めているものはYelpにある」ということを知ってもらえば、ユーザーも増えます。ただ、このプロセスは時間がかかります。11年間のYelpの経験と結果から、待つ価値はあると思っています。

――日本では、今後どの分野に力を入れていきたいですか。

 すべての分野にコンテンツを増やしていきたいですが、特にショッピングやヘアサロン、エクササイズスタジオ、病院、ホテルなどを考えています。Yelpを始めるきっかけは食べ物が多いですが、慣れていくと自分のライフスタイルに関わっていくすべてのものをレビューしていくようになります。

インタビューを終えて
 ウェブサービスやアプリは海を越えやすいが、消費者へ訴えかけるものの広がりは、ことタイミングが重要だ。その点で10年というギャップをどう見るのかが気になっていた。インタビューを通して、ウォーレン氏に確認したYelpの現在の手ごたえは、「日本で想定以上の勢いでYelperが増えており、情熱的なYelperが多い」とのこと。数字ではない部分があくまで重要という見立てだが、注目となるのは、今後のインバウンド需要となるだろう。2020年の東京五輪の開催時にどこまでコミュニティが育っているか、そこはまだまだ未知数だ。

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