いま聴きたいオーディオ! 最新ポータブル&ハイエンド事情を知る 第4回
お耳の恋人、「Layla II」「Angie II」「Roxanne II」
実売19万、26万、40万のイヤフォンを耳に順にねじ込んでみた (3/3)
2016年04月22日 14時00分更新
それぞれの個性を聴いて選ぶべき
Layla II、Roxanne II、Angie IIは、同じ“SIREN Series”に位置づけられる製品であるが、実際に聴いてみると、単純な上位機・下位機という印象はない。それぞれに個性的で、クオリティーの差というよりはキャラクターの差を基準に、気に入ったモデルを選ぶべきだと思う。
というわけで3モデルをこれまだ超ハイエンド機、Astell&Kernの「AK380」と接続し、バランス駆動で聴き比べてみた。AK380は実売価格40万円台後半、特にLayla IIとの組み合わせは、ポータブル環境ではハイエンド機の中でも頂点と言ってもいい組み合わせだと思う。
第2世代に進化したサウンドを改めてチェックできるのは、やはり感慨深い。
ハービー氏の説明では、Layla IIは従来同様ニュートラルで“スタジオモニター的”なサウンド傾向。素材は変えたが、計測上の特性には変化がないという。ただ、ジェリー・ハービー氏自身の言葉を借りると、聴感上は「より正確なサウンドになった」という。Angie IIも同傾向とのこと。
一方、Roxanne IIはクロスオーバー(高域と中域への信号の割り振り方)に手を加えている。これまでのRoxanneは、ロックサウンドを意識した“濃厚な低域”が特徴だったが、Roxanne IIでは高域を少しLaylaに寄った味付けに変更したとのこと。ただし「“ロックンロール”サウンドである点には変わりがない」とハービー氏は語る。
このあたりがどう刷新したかは注目のポイント。Roxanneの発売はLayla/Angieよりもさらに前だったので、その間に培った技術的なノウハウも積極的に盛り込んだということだろう。音質面でのジャンプ度合は3機種中、最も高い製品と言えるかもしれない。
高域が“癖なく”抜けて“女声もきれい”なAngie
各モデルのサウンド傾向について簡単にコメントしてみよう。
まずはAngie IIから。ユニット構成もあり、ほかの2モデルよりバランスは少し高域寄りだ。低域の量感や押し出し感は少し控えめで、スケール感は上位2機種に譲るものの、情報量や個々の音の見通しの良さという点では極めて高水準。薄口な感じに聞こえなくないが、若々しいサウンドともいえる。
女性ボーカルの再現が美しく、バイオリンやギターなどアコースティック系の楽器の音色の抜けもいい。音の輪郭感はしっかりしており、かっちりとした描写で癖が少ない。ハイエンドイヤフォンを聴く醍醐味を素直に感じさせる製品だ。
音楽ジャンルを選ばず、ポップス、ロック、クラシックなど、オールマイティーに使える印象の機種。特に、アコースティックギターや弦など限られた数の楽器をバックに歌うボーカルなど、シンプルな構成の曲を聴く用途は特に魅力的だ。
この個性は唯一感あり、Layla II
Layla IIとRoxanne IIは、内蔵するBAドライバーの数が12基に増える。構成は同じだが、キャラクターは対照的だ。
まずLayla IIは非常にニュートラルなサウンド。チタン筐体にした効果が表れているのか、さらに付帯音が減り、ストレートにソースの音が飛んでくる感覚が得られた。加工感のなさや付帯音の少なさは、電子楽器の鳴りが、より純粋で華やかになっている点などからも気づく。
音の傾向としては中低域が厚く、高域はそれほど欲張らない。そのため女性ボーカルなどが詰まった感じに聞こえたりもするが、安定感のあるバランスで、へんな癖をまったく感じない。派手さはそれほどなく、深みのあるサウンドでもあるので、聴きなれるまでちょっと地味な印象も持つのだが、リスニングを重ねてよりソースの細かな部分に関心が向かうようになると、スタジオの機材で録音した素材を直接モニターしているような鮮明さ、明晰さがあると気付く。
Image from Amazon.co.jp |
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圧巻はドラムやベースなどリズム帯の表現だ。とても見通しがよく、音がきれいに分離する。ただし筆者は年明けにSHUREの「KSE-1500」を最近購入して使用しているが、同じハイエンド機種でもサウンドの狙いがかなり違う印象であった。
KSE-1500は音の立ち上がりが非常に早く、打楽器がスパンと鮮烈にノータイムで立ち上がってくる感覚があるが、Layla IIの音はそれほど急峻な立ち上がりではない。ゆったりとした余裕感すら感じる。少々極端な表現なので、あくまでも喩えとして読んでほしいが、KSE-1500が金物のバケツを叩く感覚なら、Layla IIはポリバケツを叩くような違いがある雰囲気だ。
Hi-Fiのハイエンド機では、割と線の細かさ、繊細さを重視する機種が多い。線画のように細かな線で緻密に音像を描き切る表現を狙っているともいえる。Laylaはそれとは一風違う、輪郭がしっかりしたふくよかかつ、太い線で音を描く。ただその輪郭は油絵のように、光と影によって描かれる。背景から浮き立ってはいるが、そこには無限のグラデーションがあり、聴きこむと細かなニュアンスをそぎ落とさず、微細な情報もしっかりと残していると感じる。
3モデルで筆者が最も注目したのはRoxanne II
同じ12ドライバーでもRoxanne IIはどうか。実はこちらは非常にハツラツとしたサウンドだ。ワイドレンジでアグレッシブな再生だ。量感のある低域のビート感、そして抜けがよく際立つハイハットなど、Hi-Fi機器らしいメリハリの利いたサウンドとなる。
また傾向としてはロックを中心に考えてしまいがちだが、クラシックのオーケストラなどもかなり楽しく聞ける。高域が伸びるので、女性ボーカルの抜けもLayla IIよりいい感じがする。
Layla IIを聴いてしまうと、こうした高域や低域の表現に若干の強調感があると感じてしまうが、このノリの良さは楽しく、癖になる。3機種の中から1台を選ぶとすると、個人的には、個性が強くJH Audioらしさも感じられるRoxanne IIかなと思ってしまった。
さらに特徴のバスブーストでユーザーが低域の鳴りを調整可能。視聴したサンプル品は最初このバスブーストが最大に設定されていて、際立って個性的なサウンドであると感じたが破たんはなかった。独創的で懐の深いサウンドであると感じた。
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