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最高の失敗──カシオ計算機代表取締役 樫尾和宏社長

カシオ社長「腕時計の失敗も成功もスマートウォッチの資産」

2016年01月22日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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胸を張って「失敗なんかしていない」と考えなさい

お客さまから期待される、新しい文化をつくるという話です。ほかはある市場に入ってきているだけともいえます。新たな消費者を引っ張っていくモノづくりの姿勢がある電機メーカーでいうと、アップルとソニーとうちくらい。うちは業績こそ伸びていますが、消費者から期待されているような、カシオらしい新しい製品を次々に出した結果ではない。ソニーさんも同じ悩みを持たれているのではないかと思います。

── 「発明は必要の母」。時代をひっくりかえすような発明をしていないと。

メーカーの資産は、技術力だけでなくブランドであり、お客さんの期待です。うちも今、そこがあまり出せていない。本来うちはどちらかというと商品企画が強い企業です。技術がとびぬけて優れているわけではなく「こんなもの作ってみたい」という強いこだわりがあるだけ。まわりから「バカだ」と笑われてもやりきるのがカシオらしいモノづくりです。面白く、初めてで、意味があり、驚きがある。そういうモノを作り続けて初めて、うちらしさが作れる。アップルは今でもそうでしょう。そこを目指せる体力をつくれるかどうかが、最大のポイントだろうと思うんですよ。

── とはいえ企業が大きくなってくると、「バカだ」と言われるような失敗はしづらくなるものです。失敗に怯える社員にはどうアドバイスしますか。

うちの会長もそうですけど「失敗したことなんてない」と考えることですね。

── 「勝つまでやれば負けない」という欧米流の発想ですかね。

いちど負けても、必ず巻き返しのチャンスはあるというわけです。うちは商品でいろいろ失敗してますが、市場に貢献するんだという執拗なこだわりを持ってるなら、自分は後押ししますよ。うちでつくったスタンプメーカーも売れ行きはまだ小さいですが、それは失敗じゃない。クラフト市場を豊かにしたいという思いがあって作った。この商品で喜んでくれるユーザーが1人でもいて、それで新しい文化を作りたいというのがゴールならいくらでもやりなさいと。

── 心からやるべきだと思えた仕事なら、時間はかかっても成功につながるはずだと。

本当にやりたいと思っていた当時のポリシーを貫けているなら、それでいいんですよ。時代がいくら変化しても、ニーズ自体が本物なら変わらずそこにあるはずですから。だから、ただ売れるものをつくることがゴールであってはいけない。本当に毎日使い続けてもらうものをつくるには、文化・市場の創造、そこをつねに中心に持っていてほしい。カシオのゴールはいつだってそこにあるはずなんです。


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