性能は申し分ないが
発熱が気になる
最後に「ウイッチャー3 ワイルドハント」でフレームレート対決は〆としよう。このゲームはPhysXによる物理演算に加え、NVIDIAが力を入れているゲーム開発用フレームワーク“Gameworks”が使われているためRadeon系は圧倒的不利、という話も出ていたりするが今回はGeForce同士の対決なので気にせず全画質関係の項目を最も高く設定した。テストは安全なフィールド上の一定のコースを移動した時のフレームレートを計測している。
全体的な印象としてはGTAVの結果に非常に近い。フルHD環境ではGTX980でもそこそこの性能をたたき出しているが、4Kになると最低fpsがガクッと下がるのも同じだ。
最後にGPUの発熱をチェックする。TITAN Xはスペックを山盛りにした設計ゆえにカードや裏面のチップが高熱をもつという弱点があったが、GTX980Tiではどうなのか知りたいところ。
そこでウイッチャー3を30分以上プレイし、その間のGPU温度やコアクロックの推移を「HWiNFO64」で追跡した。テスト環境はFractal Design製「Define R4」に組み込み、GPUにとってかなり不利な状況(吸排気ファンは静音重視、吸音材の内張りがされたケースで密封)になっている。
グラフは左軸がGPU温度(単位℃)、右軸がコアクロック(単位MHz)となっている。GPU温度はブーストのかかり方にも影響するのでコアクロックの推移にも注目だ。ここではGTX980TiとTITAN Xのみを比較する。
温度はどちらのカードも83度でほぼ安定。TDPも同じ、搭載クーラーの設計も同じなのである意味当然の帰結。オリジナルクーラー搭載版の1日も早い登場が待たれるところだ。
だが今回ちょっと気になったのがコアクロックの推移だ。GTX980Tiの実測最高クロックは1202.3MHz、これに対しTITAN Xは1189.7MHzであるためCUDAコアが少ないぶんブーストクロックが高い、という公式スペックは十分納得できる。
しかしGPU温度上昇に伴い両者ともブーストが“抜けた”ようにコアクロックを下げている。この挙動そのものは全く問題ないのだが、今回テストしたGTX980TiはTITAN Xよりもクロックが下回っている点に注目したい。
BIOSの熟成度が甘かったか、ドライバーに原因があるかまでは不明だが温度が高止まりしているためなかなかブーストできないどころか、ごく数秒とはいえベースクロックまで戻ることもある、というのは少々残念なところだ。
誰か円安を止めてくれ!
GTX980はフルHD環境なら素晴らしい製品だが、重量級ゲームを4Kで楽しむにはメモリー周りのスペックが少々削られすぎている。だがGTX980TiはTITAN Xの設計を流用することでプレー限界を大きく引き上げることに成功したGPUといってよいだろう。
さすがにシングル構成でGTAVやウイッチャー3クラスのゲームを4K&最高画質で楽しむのは厳しいが、画質高程度ならビジュアルのクオリティーをさほど損なわずに良好なフレームレートを獲得できるはずだ。
TITAN Xは高すぎて変えないがGTX980だとVRAMが不足する……というコアゲーマーならすぐにでも欲しいGPUだろう。CUDAコア数よりもメモリー搭載量6GBという仕様に魅力を感じられるかがGTX980Ti導入の見極めポイントといえる。
その一方で、現状のGeForce用リファレンスクーラーの限界も見えてきた。検証用サンプルゆえの問題かもしれないが、コアクロックがTITAN Xより下がるシーンが多かったなど、第2世代Maxwellとはいえハイパワーモデルだとクーラーも相当強力なものが必要と感じる。
その点では発表と同時に発売されるリファレンスモデルよりも、今後登場するオリジナルクーラー搭載モデルを待つ方が得策といえるかもしれない。
しかし最大の敵は(TITAN Xの時も書いたと思うが)円安傾向が止まらない為替レートだ。リファレンスが694ドルでも為替マジックのおかげで10万円近くになる可能性も十分にある。オリジナルクーラー搭載モデルが出そろう頃にはもう少し円高傾向になっていることを強く期待したいものだ。

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