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情報の取り扱い説明書 2015年版 第1回

ソーシャルメディアとマスメディアが混ざっていく「メディアの液状化」が起きている

SNSをやめる人が続出? なぜTwitterは面白くなくなったのか

2015年06月10日 10時00分更新

文● 高橋幸治、西牧/ASCII,jp

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SNS登場から10年、人と情報の関係性を考え直す必要がある

 そしてこちらが西牧氏に返答したメールだ。

 西牧さま

 メール、拝見しました。そうですね、僕が編集長として2012年に立ち上げた動画系のウェブマガジン「UPLOAD」で「Look Up」を紹介したのはちょうど1年前ですね。

 実を言うとあの原稿を書いたときはすでに動画の公開から3週間ほど経っていて、日本でも徐々に話題になり始めていたものですから、正直、記事を書こうかどうかちょっと迷っていたんです。

 ほかのメディアでも取り上げるだろうし……といった感じで。ただ、あの動画で作者が発したメッセージは今後ますます重みを増していくだろうという漠然とした予感もあり、あえて僕なりのメッセージも付加したかたちで掲載に踏み切りました。

 あれから1年……。僕らを取り巻く情報環境はさらに変化したように感じます。先日もASCII.jpで「Apple Watch」の所感を書かせてもらいましたが、ウェアラブル・コンピューターが今後われわれの生活をどう変えていくのかとても気になるところです。

 また、テレビやウェブのニュースでは「ビッグデータ」という言葉を耳にしない日はないくらい、人間と情報との新しい関係が着々と用意されているような気がします。

 改めて宣言するまでもなく僕は編集者なので、仕事の本質はさまざまな情報のデザインです。幸いアナログ/デジタルを問わず広範な領域のメディアに関わらせてもらっていますし、大学でも編集を軸にメディア、情報、コミュニケーションといったことについてしゃべっているので、西牧さんのおっしゃる「違和感」はとてもよくわかります。

 実際この1年くらいの間に、僕の知り合いでもSNSをやめてしまった人たちはかなりたくさんいて、当の僕自身、近頃はだいぶSNSとは疎遠になっています。単純に「熱が冷めた」とか、そういう感覚とはちょっと違う心境ですね。

 考えてみればTwitterやFacebook、Flicker、YouTubeといったサービスはだいたい2005年前後に登場していますから、今年はSNS(ほぼ)10周年と言えるでしょう。さすがに10年の間には質/量ともに大きな変容があるのは当たり前です。

4つのSNSの設立日
Facebook 2004年2月
Flickr 2004年2月
YouTube 2005年2月
Twitter 2006年6月

 それに加えて、昨今は上述したウェアラブルやビッグデータという新しい潮流も押し寄せつつあります。おそらく、いま、人間と情報との関係は新たなステージに突入しつつあり、わりと楽観的に語られていた「集合知」や「共有」や「つながり」といったことを、今一度じっくり考え直してみる必要があるのかもしれません。

 これから、西牧さんの中にある得体の知れないモヤモヤがいったい何に起因しているのか、さまざまな角度から編集的に考えてみたいと思います。

 もちろん、即座に解答が導き出せるような類の問題ではないでしょう。何だかんだ言っても1日に一度くらいはSNSのタイムラインを眺めたりしますし、「じゃあ、お前、スマホなしでやっていけるのか?」と問われればいささか不安です。

 「Look Up」と「Look Down」の狭間を生きるわれわれにいま必要な情報デザイン術とは何か……このあたりを探ってみたいですね。

パロディー動画「Look Down」は名前のとおり、Look Upと逆のメッセージングだ。このほかにも多数のパロディーが上がっている

もはやマス対ソーシャルなんて図式はない

 改めてソーシャルメディアに対するガッカリ感について考えてみよう。根底には「ソーシャルメディアはマスメディアへのカウンター(=対抗メディア)であり、既存の言説とは異なる新しい語り手と新しい語り口を生み出すものだ」という希望や期待があるのだと思う。

 実際、ソーシャルメディアがそのように機能した例は東日本大震災でTwitterが活用されたように、枚挙に暇がないし、いまでもそうした側面を持っていることは否定しない。

 しかし、最近はタイムラインに流れてくる情報のほとんどがテレビや新聞といったマスメディアにまつわる話題で、これは正直、落胆を禁じ得ない。

 一方のマスメディアはどうかと言うと、こちらはこちらで変なことが起こっており、バラエティー番組などではかなりの頻度でソーシャルメディアで話題になったトピックが取り上げられていたりする。

 この「奇妙な相互依存」もしくは「奇妙な共犯関係」がきわめて現在的なメディア状況と言っていいだろう。テレビというメディアに対するオルタナティブな存在であったはずのYouTubeの投稿動画が、バラエティー番組に不可欠のコンテンツになっているといった具合だ。

YouTube10周年ベスト10ランキング
1位 PSY - GANGNAM STYLE M/V
2位 Justin Bieber - Baby ft. Ludacris
3位 Katy Perry - Dark Horse (Official) ft. Juicy J
4位 LMFAO - Party Rock Anthem ft. Lauren Bennett, GoonRock
5位 Charlie bit my finger - again !
6位 Eminem - Love The Way You Lie ft. Rihanna
7位 Jennifer Lopez - On The Floor ft. Pitbull
8位 Shakira - Waka Waka (This Time for Africa) (The Official 2010 FIFA World Cup Song)
9位 Katy Perry - Roar (Official)
10位 PSY - GENTLEMAN M/V
YouTube10周年を記念して今年の2月に発表された歴代再生ランキング。ベスト10のうち9つまでがメジャー・アーティストのプロモージョンビデオだった。5位にかろうじてユーザー投稿による動画がランクインしている。ここにも奇妙な共犯関係が見られる

(次ページでは、「ソーシャルとマスから見える、トランスメディアとは?」)

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