最新ハイエンドオーディオ、本当のところ 第10回
ロックの里標築いた名曲の、女性名を冠したハイエンドイヤフォン
価格だけでなく音も本当にすごい「Layla」と「Angie」 (5/6)
2015年03月15日 17時40分更新
弦のアタックや空間の表現に違いを感じる
曲を変えて今度はハイレゾ版の「Angie」(ザ・ローリング・ストーンズ『Goats Head Soup』から5曲目)を聴く。こちらもLayla同様女性の名前を曲名に据えたロックの名曲だ。左チャンネルによった感傷的なギターソロで始まり、その後、音が左右に音が広がってミック・ジャガーのボーカルが始まる。
Layla(製品名:曲名と製品名が混乱しやすく選曲を若干後悔している)で聴くと、冒頭の静寂感(ボ~ン、ジャーンというアルペジオから始まるギターの旋律と休符の対比)、そして音がステレオに広がった際のダイナミクスが、ボーカルの切ない旋律を際立てる。
音はやはりとげとげしさがなくやさしい。ピアノの伴奏で、隣り合ったピアノ線同士が干渉しあうことで生じるうなり、あるいはハイハットの自然な硬さ(トランジェントに優れ、なおかつ硬すぎない)など、非常にニュアンスに富んだ音の空間の中で、甘く少しほろ苦いこの曲のイメージが広がっていく。
これをAngie(製品名)で聴くと、音はよりメリハリがある、しっかりしたものになる。バランスはLaylaと比べると少し高域に寄っている印象もあるが、よりHi-Fi感が味わいやすく、ギターの音色などもピンと張り詰めた弦の感じをよく示している。情報量はもちろん豊富で、Laylaよりもクールなテイストだが、その分、各音がわかりやすくていい。
情感の表現と理知的な再現というキャラクターの違いはこの曲でも顕著に感じる。
ポップスや女性ボーカルの再現はAngieもシャープでいい
ポップス系も聴いてみた。CD品質だが、TVアニメ『Angel Beats! Original SoundTrack』から1曲目「My Soul,Your Beats!」、中島美嘉のハイレゾ版ベストアルバム『DEARS』から19曲目「僕が死のうと思ったのは」、バイオリニスト、リサ・バティアシュヴィリ(Lisa Batiashvili)のCD『Echoes of Time』から、エレーヌ・グリモーが伴奏の8曲目、ラフマニノフの「Vocalise」など。
Image from Amazon.co.jp |
TVアニメ「Angel Beats!」オリジナルサウンドトラック |
Angel Beats!では、冒頭のピアノ伴奏、追って始まるボーカルが印象的でここを聞く。Laylaは、少し奥まった空間の中央に浮かぶボーカルの定位感が非常に優れている。正確な位相と整った周波数バランスの賜物だろう。そして、Laylaはピアノの表現が非常にリアルだ。
生録音・音源を問わず、音の粒立ちや見通しが恐ろしくいい。コロコロと転がり、低域は深く沈みこみ、濁った特有の音色など微細な情報もよく拾う。そして低域の明瞭さ。曲が進み、1:30付近からベースが刻むビートは特に見通しがよく、弦を指でたたくあるいはつまむ感覚がよく伝わる。そしてタイト過ぎず、よく広がるので、絶妙なビート感が生まれる。
一方Angieでは、Liaの声がより明瞭で高域が抜ける。Laylaではボーカルは少し上が詰まる独特な音色に聞こえていた。Laylaで感じたベースが地を這っていくような感覚や、包み込むような空間の広さは乏しくなるが、女性ボーカルの声を美しく聞くという意味では、Angieのほうが適しているようにも感じる。
Image from Amazon.co.jp |
TEARS(ALL SINGLES BEST)(初回生産限定盤)(DVD付) |
中島美嘉では、ボーカルの再現が対照的。Laylaで聴くと大人びた低い声、高域が丸まって少し鼻声に聞こえなくもない。その意味ではAngieのほうが中島美嘉に持っていたイメージに近い声だ。Angel Beats!のLiaの声でも感じたが、女性ボーカルでは高域がよりクリアーかつストレートに前に来るAngieのほうが聞きやすい面がある。
伴奏の楽器の音ではここもアコギやリズム帯の表現の違いを感じる。Laylaでは、キックが前にドンと出て、ピアノも腰が据わって魅力的な音色。音に包容力や余裕感がある。必要なアタックは出ているが、全体としてウォームになる傾向はほかの曲と一緒。これをAngieで聴くと、アコギがより前に出てきて聴きやすい。打楽器のリアルさ、低域の沈み込み、ピアノの深みといった部分は控えめだが、ボーカルとアコギがストレートに前に出てくるので、声や楽器の生々しさ、瑞々しさが際立つ。
Image from Amazon.co.jp |
時の谺(こだま) |
Vocaliseは、幽玄かつ瀟洒でLaylaが持つ空間表現力の高さに気付く。バイオリンの音色という意味では、上がそんなに伸びない点が不満といえば不満だが、ピアノ伴奏では楽器の持つダイナミクスや、演奏者のタッチのニュアンスが出ている。ただ、こういった少ない楽器のソースはAngieも得意だ。音調が整い、落ち着いて聴けるし、バイオリンの音色が美しく、ピアノも硬質で透明だ。冷静なタッチで、Laylaにあるような、心を揺り動かされる感じは控えめだが、音の分離のよさ、聞こえ方などは好ましい。小編成のクラシック曲を聴く場合、筆者ならLaylaよりAngieを選びたいと思うかもしれない。
この連載の記事
-
Audio & Visual
第11回 DITA「Answer」は、インイヤーの究極の“答え”となるか -
Audio & Visual
第10回 価格だけでなく音も本当にすごい「Layla」と「Angie」 -
Audio & Visual
第9回 ハイレゾ機の定番、第2世代Astell&Kernを比較試聴 -
Audio & Visual
第9回 本格派USB DACのバランス駆動で、音の世界に浸る -
Audio & Visual
第8回 力感と繊細さを兼ね備えた新進ブランドのイヤフォンを聴く -
Audio & Visual
第7回 驚きのHi-Fi感をぐっと凝縮した、パイオニア U-05を聴く -
Audio & Visual
第6回 真空管のサウンドをポケットに、「Carot One」のポタアンを聴く -
Audio & Visual
第5回 最高のプリメインアンプを求め、LUXMANの試聴室を訪問した -
Audio & Visual
第4回 伝統と革新の両立、DA-06とDA-100が受け継ぐラックストーン -
Audio & Visual
第3回 コンパクトなボディーからあふれ出る上質、ELAC AM50 -
Audio & Visual
第2回 無線ならXeoで決めろ! 狭い我が家で、本物の音を - この連載の一覧へ