充実してきた単品ヘッドフォンアンプの実力を探る
本格派USB DACのバランス駆動で、音の世界に浸る (1/7)
2014年12月29日 09時00分更新

パソコンを使って高音質の音楽再生をするために重要なアイテムと言えば「USB DAC」だ。再生した音源をデジタル信号のまま受け取り、アナログ信号に変換してアンプなどのオーディオ機器に送る機器のこと。
パソコンで音楽を聴くスタイルが普及するにつれ、このUSB DACの人気は急上昇。手軽に使えるポータブル型から、コンポスタイルの据え置き型までさまざまなモデルが登場している。
小型でも高音質な製品が多い、USB DAC
USB DACはそもそも、オーディオコンポに昔からあったD/AコンバーターにUSB端子を追加し、パソコンからのデジタル信号を受け取れるようにしたもの。 パソコンとオーディオ機器つなぐ架け橋のような役割をする製品だ。
ハイレゾ音源などのデジタル信号は、パソコンの内部でもアナログ信号に変換できるが、高周波ノイズや振動など音質に悪影響を及ぼすものが多いため、ノイズの悪影響を受けにくいデジタル信号のままUSBで出力し、アナログへの変換はオーディオ専用に設計した外部機器を使うことで、より高音質な再生ができるわけだ。
ただ、信号を受け取るUSBインターフェースやDACチップ自体は、シンプルなもの。アナログオーディオのように大規模な回路は必要なく、その気になればかなりコンパクトにできる。
例えば、カナダのオーディオメーカー・レゾネッセンスラボ(Resonessence Labs)の「HERUS」(実売4万6000円前後)のような、極めて小さなものもある。それでいて、リニアPCMは最大384kHz/24bit、DSDなら2.8MHzと5.6MHzに対応と、スペック的にも十分。音質もなかなかのものという優れ物だ。
USB DACは、必要とする回路の基板サイズ自体がかなり小さいため、アンプをはじめとしたさまざまな機器に内蔵されることが増えていった。その代表例と言えるのが、ポータブルヘッドフォンアンプ(ポタアン)。今やポタアンはUSB DACを内蔵したモデルが主流と言ってもいい。
そんなポタアンもハイスペック化が進んでいて、バッテリーを内蔵して手軽に持ち運べるサイズに収めながら、スペック、音質ともに優れた高級モデルも数多い。
高価格ながらその音質の良さで人気が高いのが、CHORDの「HUGO」(実売25万2000円前後)。ハイエンドオーディオの世界でも高級USB DACを発売しているイギリスのブランドだが、HUGOはハイエンドモデルと同様の独自のアルゴリズムを使い、リニアPCM384kHz/32bit、DSD2.8MHzと5.6MHzに対応したモデル。USB入力のほか、デジタル入力(同軸、光)も備える。ヘッドフォン出力のほか、アナログ音声出力も持つので、据え置き型のようにオーディオ機器との組み合わせにも対応している。
スペックの高さでは、イギリスのiFI-Audioも見逃せない。
「nanoiDSD」(実売:2万6000円前後)は、コンパクトなUSB DAC内蔵ポタアンだが、リニアPCM384kHz/32bit、DSDは一般的な2.8MHzと5.6MHzだけでなく、11.2MHzや22.4MHzにも対応するという最先端のスペックを備える。驚きなのは、パソコンだけでなく、iPhoneなどのiOS機器(リニアPCM、DSD対応)やソニーのAndroidウォークマン(リニアPCM対応)とのデジタル接続まで可能となっている。今やスマホや携帯プレーヤーでも、ハイレゾ音源を存分に楽しめる環境が整っているのだ。
最後はソニーの「PHA-3」(実売8万9000円前後)。DACチップはESS Technologyの「ES9018」で、リニアPCM384kHz/32bit、DSD2.8MHzと5.6MHz対応というスペック。
CD音源や圧縮音源をハイレゾに近い音質に高める独自技術「DSEE HX」も盛り込まれている。こちらもウォークマン、Xperia、iPhoneなどiOS端末とのデジタル接続に対応する。
もうひとつの特徴としては、ポタアンとしてはまだ数が少ないバランス出力にも対応すること。ただし、バランス接続のためには専用のバランス接続ケーブルが必要で、対応するヘッドフォンもソニーの今秋発売モデルの一部となっているのが少々難点だ。

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