最新ハイエンドオーディオ、本当のところ 第10回
ロックの里標築いた名曲の、女性名を冠したハイエンドイヤフォン
価格だけでなく音も本当にすごい「Layla」と「Angie」 (4/6)
2015年03月15日 17時40分更新
異なるキャラクターを持つ、LaylaとAngie
それでは音をチェックしてみよう。製品の説明では、LaylaもAngieも、ステージ使用を前提した従来製品に対して、スタジオでのリファレンス用途を想定し、フラットな特性を重視しているとある。ただ、それは従来製品と比べてということだろう。
特にLaylaで感じたことが、全体にウォームで中低域の分厚い表現に特徴がある傾向に感じる。一般的なHi-Fi機器でイメージするような、キレのある低音とか、音の輪郭が立っているとかいうのとはちょっと違う印象だ。高域はあまり欲張らず、一方で中低域のボリューム感が豊かで、リズム帯の動きが手に取るように感じる。その意味では明瞭に音が分離しているのだが、タイトというわけではない。
小さめのライブハウスで力強くたたかれたドラムあるいは大口径のPAの風圧で会場の空気が変わる感じとでもいうのだろうか。グルーブ感だったり、包囲感だったりという言葉が合いそうな、音を聴くというよりは、空間そのものに放り込まれた感覚が味わえる。
一方、弟分的な位置付けとなるAngieはどうかというと、こちらはもっとシャープで個々の楽器の情報をよりストレートに表現し、高域も伸びてワイドレンジという印象になる。聞き比べると、単純な上位・下位というわけではなく、異なる魅力とキャラクターを持った製品であることが分かる。
ニュアンス豊富なLayla、理知的でクリアーなAngie
ベタな話で恐縮だが、最初に聴いたのが、製品名の由来にもなったロックの名曲「Layla」のハイレゾ版(デレク・アンド・ドミノス『Layla And Other Assorted Love Songs』の13曲目)。ご存知エリック・クラプトンとジム・ゴードンによる痛切なラブソングだ。
冒頭のジャガジャガジャガ、ジャーンという有名なリフから。突如ライブハウスに放り込まれたような感覚となり、リバーブ感とグルーブ感に心が躍る。そしてしわがれた声で繰り返し絶叫するLaylaという言葉が痛切。押し寄せてくる音の波に圧倒される中、ピアノの和音が連打され、まったく別の曲といっていい後半が始まる。夢見心地で音に包まれ、恍惚としたスライドギターの音の行き来に身を任せているうち、7分を超える大曲の演奏が終わった。ボーっとするような気だるさと満足感が心を満たす。
ではAngieではどうかというと、その印象はずいぶんと異なる。
より客観的に音楽を聴くようになると言ったらいいのだろうか。同じギターでも指が忠実にフレットを押さえてリズムと音階をなぞっているなとか、ピックアップはシングルコイルに違いないとか、使っているエフェクターはなんだろうとか、そんな方向に考えが進む。演奏者との距離も近付き、よりダイレクトに音を聴いている感覚だ。
簡単に言うなら、よりHi-Fi的な傾向。ハイエンドヘッドフォンとしてイメージする、豊富な情報量・レンジの広さ・見通しのよさを兼ね備えていると感じる。ニュアンスや情感を生々しく伝えるLaylaを聴いた後だからなおさらだったのかもしれないが、ソースの音をニュートラルに出し、高域もよく伸びていて、全域にわたってクリアーかつシャープだ。より若々しく明瞭で活気があり、理知的にソースの素性をあからさまにする感覚を味わった。
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