課題はカード番号と本人をどう結びつけるか?
サイフにしても、サイフがわりのスマートフォンにしても、そのデバイスの中のデータ(クレジット番号や電子マネー情報)と所有者をどう結びつけるかが大事な部分。そこがしっかりしていれば、置き忘れたり盗難にあっても、電子決済を悪用される心配はありません。ときどき、サイフに鎖をつけている若者がいますが、いわゆるアレです。
いままでは、本人照合が暗証番号だったり、サインだったりしたのですが、ソーシャルハッキング(暗証番号やパスワードなどを理由をつけて聞き出す)や偽造、スキミングもあとをたちません。本来なら、所有者本人以外では機能せず、カード番号や個人情報が外にもれないことが理想です。そうした意味では、Apple Payが一歩リードしている感があると思っているのは筆者だけでないはず。2015年10月から米国の銀行による、店舗に磁気テープ式のクレジットカートを使わないように義務付ける方針も電子決済には追い風になるはず。
電子決済の話で忘れてはならないのは、日本で普及しているFeliCaです。おサイフケータイやSuicaに使われている非接触型の決済システムです。コンサートチケットになったり、電話内でチャージができるなど、日本人らしい細やかさある一方で、機種変更時にデータ移行をキャリアに委託する必要があったり、再申し込みなど手間がかかることも…。FeliCaチップは、処理速度が速いなど、デバイスから先のシステムは優秀なのですが、やはり本人確認、つまりデバイスとユーザーの結びつけがネックになっています。
六本木ヒルズなど、都会に行くと、首からIDカードを下げたままランチをとっている人を頻繁に見ますが、あれはやっぱり理にかなっているのですよね。サイフの鎖と同じです。
プライバシーと安全を保ちながら、リストウォッチ(腕時計)やスマートフォンで電子決済ができるのなら、筆者のようなライフスタイルや仕事にはピッタリ。Apple Pay、滑り出しは好調のようですが、上手くいけば、将来はプライバシー機能をともなった身分証明機能もきっと付加される予感。AppleがなぜiPhoneを薄くしたがるのか、こんなことも理由の1つだと筆者は推測しています。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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