似ているようで異なる
Intel 820とIntel 840の構造
Intel 820の構造は、Intel 810の延長にある。主な違いは、SDRAMの代わりにDirect RDRAMをサポートし、かつIntel 810に内蔵されていたグラフィックスを取り去ってAGP 4Xを追加した程度のものである。
Intel 820と同時に、Pentium III Xeon用のIntel 840も発表された。こちらはサーバー/ワークステーション用に、CPUを2つまでサポートするとともに、Direct RDRAMを2チャンネル搭載する。さらに高速I/O用に64bit PCIもサポートするなど豪華な構成で、MRH-R(Memory Repeater Hub for RDRAM)を利用するとRIMMの搭載数を増やすことも可能だった。さすがに規模が違うので、Intel 820をベースにIntel 840を作ったり、Intel 840から機能を削ってIntel 820にしたのではなく、この2種類のチップセットを同時に開発したようだ。
Direct RDRAMが抱える問題が
Intel 820の足を引っ張る
しかし、Intel 820の前には多くの困難が待ち受けていた。まず最初に指摘されたのは、その性能の悪さである。カタログスペック上はPC-100 DIMMの倍の帯域を持っているにも関わらず、期待通りの性能を発揮しないことがある。同じCPUを使って、以下のチップセットとメモリーの組み合わせを考えてみよう。
・Intel 820 + PC-800 RIMM
・Intel 440BX + PC-100 DIMM
この2つを比較すると、Intel 440BX+PC-100の方が性能が高いというシャレにならない結果が、極めて高い再現性を持って示された。これに関しては色々な理由が取り沙汰されたが、約10年後にインテルのSteven Woo博士※2にこの話を振った時の返答は、「Pentium IIIはもともと並列性(パラレリズム)が少なく、パイプラインも浅いため効率が悪かった」というものだった。
※2 当時はTechnical Director、現在はDirector of Strategic Development
Direct RDRAMは構造上の問題で、速度こそ速いもののレイテンシーが大きい。例えばPC-800の場合、普及品のレイテンシーは45ns、高速品でも40ns程度だった。一方PC-100はレイテンシーがCL2かCL3、つまり20nsか30ns程度である。要するにチップ単体で比較しても1.5~2倍のレイテンシーが発生する。加えて、Direct RDRAMは等長配線かつ一筆書き方式を採用しているため、物理的な配線長がSDRAMより長くなり、さらに余分なレイテンシーを生む。
レイテンシーの増加は、複数のアクセス命令を同時に発行したり、パイプライン方式で次々にアクセス命令を発行することで遮蔽できる。しかし、Pentium IIIはメモリーアクセスでそれらへの配慮が少なかった。結果、細切れで単発のメモリーアクセス命令が発行されることでレイテンシーの遮蔽が難しくなり、性能に多大な影響を及ぼした。これはチップセットで解決できる問題ではなく、CPUのアーキテクチャー側の問題にまで遡るため、Intel 820で対処できることには限りがある。
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