久々にチップセット黒歴史をお届けしよう。今回のテーマは、旧ATI Technologiesがリリースした「IXP200」である。
これまではチップセットの話をするときは、ノースブリッジとサウスブリッジを対にした形で紹介してきたが、今回はやや状況が違うこともあって、サウスブリッジの「IXP200」のみを取り上げたい。
グラフィック専業ベンダーが
チップセットにまで事業拡大
ATIのチップセットは連載43回で紹介したが、改めて説明しよう。それまでATIはグラフィック専業ベンダーとしてやってきたが、競合するnVIDIA(当時の表記はまだ“n”が小文字だった)がマイクロソフトのXbox向けチップセットの開発を手がけるなど多角化の方向を見せていることを踏まえて、同社も製品を増やす方向に一歩踏み出すことになった。
その最初の製品が、2000年2月に発表されたチップセット「S1-370 TL」である。実は連載43回の記事にはいくつか間違いがある。まずは製品名で、「S1-370」ではなく「S1-370 TL」である。
もっとも、当時のプレスリリースや、製品紹介ページを見ても、“TL”の意味するところはよくわからない。おそらくは搭載するグラフィックが、DirectX 7.0のT&L(Transformation & Lighting)に対応するハードウェアを搭載しているから、これにちなんだのではないかと思われるが、もう確認する術はない。
もう1つの間違いは、搭載するグラフィックのコアである。以前の記事では“おそらくは「RADEON VE」あたりを統合したものと思われる。”としたが、そうではなくてArtXの開発していたDirectX 7対応のGPUコアを統合したものであった。
先に示したATIの製品ページでは、このGPUコアの性能として12.5Mポリゴン/秒、4ピクセル/クロックのパイプライン、330Mテクセル/秒といった数字が並んでいる。RADEON VEの場合、ポリゴンレートは不明だがピクセルレートは336Mピクセル/秒、549Mテクセル/秒といった処理性能で、ArtXコアよりも若干ながら性能は上である。
とはいえ、「S1-370 TL」はUMA方式で、メインメモリとグラフィック用のバッファが共用だったから、これによる速度低下があったと考えると同等レベルと考えても間違いではなさそうだ。

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