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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第100回

Direct RDRAMはなぜPC分野では失敗したのか?

2011年05月09日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 メモリー編7回目では、主流になり損ねた米Rambusのメモリー技術「Direct RDRAM」について解説したい。

RDRAMのコンセプトは
信号の高速化で狭いバスでも高速転送

 元々Rambusは社名のとおり、DRAM用のインターフェースを扱うことを目的に、1990年に設立された会社である。もっとも最近はDRAMという枠を超えて、高速信号伝送技術全般を扱う会社になっている。それゆえ、広範囲のアナログ技術をがっちり特許で保護している会社であるため、特許係争に絡む頻度が非常に高い。その結果として、さまざまな標準化団体(JEDECやPCI-SIGなど)と仲がいいとは言えない会社でもある。

 それはともかく、Rambusはすでに5世代目のメモリー技術をリリースしており、うち4世代は製品化されている。最初に登場したのが「RDRAM」(Rambus DRAM、Base RDRAMとも呼ばれる)で、ついで性能を上げた「Concurrent RDRAM」が登場し、第3世代のDirect RDRAMではPC向けメモリーとして採用された。

 このDirect RDRAMから大幅に構成を変えて登場したのが、「プレイステーション3」にも採用された第4世代「XDR DRAM」である。現在はこれに続き、第5世代となる「XDR2 DRAM」の開発と製品化へのプロモーションを進めているといったところだ。

 ただし、Rambus自身はあくまでもテクノロジーを提供する会社だ。実際の製品は、RambusからIPのライセンスを受けたメモリーチップベンダー(サムスンやエルピーダ)やメモリーコントローラベンダー(インテルや東芝など)が、Rambusの技術を組み込んで製造している。

 第1世代のBase RDRAMから、第3世代のDirect RDRAMまでの特徴をまとめたのが以下の表である。XDR DRAMは今回の範疇からちょっと外れるので割愛している。

Base RDRAM Concurrent RDRAM Direct RDRAM
最大動作速度 500MHz(250MHz DDR) 667MHz(333MHz DDR) 1066MHz(533MHz DDR)
データバス幅 9bit 18bit
アドレス指定 データバスを時分割多重 アドレス線を利用
バンク数 最大4バンク 最大64バンク
インターリーブ なし 最大2段/チップ 最大4段/チップ
電源電圧 3.3V 2.5V
信号電圧 2.5V 1.8V
信号振幅 1.0V 0.8V
最大信号遅延 0.7サイクル 3サイクル

 第1~第3世代の特徴を端的に述べると、「バス幅を削減する代わりに転送速度を上げることで、より高い帯域を確保できる」である。従来型のFP DRAMSDRAMなどの場合、転送速度を上げるのが難しく、帯域を増やすためにはバス幅を増やす必要があった。その結果として64bit幅のDIMMが利用されるようになり、さらに帯域を上げるために、複数チャンネルのメモリーバスを利用するという方式がとられている。しかし、これは配線数の増加につながるため設計と実装が困難だし、例えば64bitならば4~8個、128bitだと8~16個のDRAMが必要になるといった制限もある。

 これを逆手に取り、「回路技術や実装技術を最適化することで信号速度を高速化すれば、バス幅は狭くても必要な帯域を確保できる」という発想に基づいたのがRDRAMである。表を見るとそれが明らかだ。Base RDRAMやConcurrent RDRAMは「9bit」(パリティ含む。パリティなしの場合は8bit)、Direct RDRAMでも「18bit」(同16bit)という狭いバス幅にも関わらず、転送速度が500~800MHzと高速なため、トータルとしての帯域は同時期の他のDRAM技術を上回るものになっている。

 ここで重要なのは、DRAMチップの数を大幅に減らしながら帯域を確保できる点である。Base RDRAMは米Chromatic Researchのメディアプロセッサー「MPACT!」に、Concurrent RDRAMは任天堂の「Nintendo 64」や米Cirrus Logicの「GD546x」のグラフィックチップに、Direct RDRAMは「プレイステーション2」にそれぞれ採用された。

 こうした製品はいずれも、「帯域は必要だが、トータルとしての必要なメモリー量はそれほど多くなく、コストダウンのためにもチップの数が少ないほど好ましい」という製品だ。これらにはRDRAMのアーキテクチャーは最適であった。ところが「これをPC用のメモリーに」と考えたあたりから、話が面倒なことになっていった。

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