Intelチップセットの歴史 その2
チップセットの構造が大きく変わったIntel 810世代
2009年11月23日 12時00分更新
前回に続いて、インテルチップセットの変遷について解説しよう。
Intel 810でチップセットの構造は大きく変化
1999年にリリースされた「Intel 810」シリーズで、インテルはチップセットの構造を大きく変えた。従来のチップセット(Intel 440BXあたりまで)の構造を、簡単にまとめると図1のようになる。
通常「North Bridge」と呼ばれるチップは、「FSB+PCIバスブリッジ+メモリーコントローラー+AGPインターフェース」という構造だった。これにPCIバスでつながる先に「South Bridge」が置かれる。こちらにはPCI-ISAバスブリッジのほかに、いくつかの周辺回路(例えばIDEコントローラーなど)が統合されている。
なお「Super I/O」というのは、シリアルポート(RS232C)とパラレルポート(IEEE488、いわゆるプリンタポート)をワンチップで提供するものだが、後にPS/2ポートやFDDやらと、さまざまな機能が統合されたものだ。かつてはこうしたI/Oポートは、ISAバス接続の拡張カードとして提供されてきたが、これがワンチップ化されたのでSuper I/Oという名前になったようだ。
ちなみにそれぞれのチップがNorth/Southと呼ばれるのは、図1を地図に見立てて、上が北だとすればメモリーコントローラー側がNorth、ISAブリッジ側がSouthだからという、割と安直なネーミングである。
ともかく、こうした構造がIntel 810から大きく変わる。最大の目的はISAバスの撤廃であり、加えてシステムの高速化に備えて接続を高速化する、という目的もあった。図2がその構造であるが、従来のNorth Bridgeにあたるものは「MCH」(Memory Controller Hub)もしくは「GMCH」(Graphics and Memory Controller Hub)と称され、FSBとAGPのインターフェース、メモリーコントローラー、それに「HubLink」と呼ばれる独自のチップ間インターフェースを持つ。
HubLinkはPCIバスとプロトコル的には似ているが、バス幅は8bit(信号線は11本)しかなく、その代わりに266MHzの速度で駆動された。これにつながるのは、South Bridgeの代わりとなる「ICH」(I/O Controller Hub)である。こちらはHubLinkとPCIのブリッジのほか、HDDインターフェースやオーディオ、USBなどの周辺機器を内蔵し、さらに「LPC」(Low Pin Count)と呼ばれるこれまた新しいバスインターフェースを内蔵した。
もっとも、だからといって急にISAバスを撤廃するわけにもいかないので、当初はPCIバスにPCI-ISAブリッジ経由でISAバスを付けるという形でISAバスを確保した。ではなぜISAバスを撤廃したのかと言えば、これはマイクロソフトとインテル、それに旧コンパックが共同で策定した「PC 98 System Design Guide」に起因する。
このPC 98というのは、NECの「PC-9801」とは何も関係なく、1998年に策定されたPCの標準化案である。要するに、PCのさまざまな規格を標準化することで、使いやすくしようというものだ。このシリーズの一番最初のものは、1998年2月にリリースされた「PC 97 Hardware Design Guide」だった。PC 97では「ACPI」や「OnNow」※1といった企画の採用が盛り込まれ、「Basic PC 97」「Workstation PC 97」「Entertainment PC 97」といったカテゴリーも定義されたものの、最終的に定義されたものの中で広く使われたのは、キーボード/マウスコネクターの色だけ(PS/2キーボードをパープル、PS/2マウスをグリーン)といった状況であった。
※1 「電源投入後、数秒のオーダーでPCが使用可能になる」という規格。ACPIを使ってこれを実現するはずだったが、ACPIの規格策定が遅れたとか、根本的に当時の技術でこれを実現するのが困難だったなどの理由で、うやむやのうちに消え去ったマイクロソフトの技術のひとつ。
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