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マイクロソフト・トゥディ 第29回

なぜ日本マイクロソフトは、仙台にこだわったのか?

2013年01月24日 17時00分更新

文● 大河原克行

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東北支店が取り組んできた先行事例

 そして、もうひとつ仙台市にこだわった大きな理由がある。

 それは、今回の3つの柱のひとつである地域密着型パートナー施策が、約2年前から、東北支店が先行事例として取り組んできたものをベースにしているという点だ。

 Discoverキャンペーンで取り組む地域密着型パートナー施策では、日本マイクロソフト社員と、地場のパートナーが、共同営業部隊「ジョイントセールスチーム(JST)」を結成。共同営業活動を行なうとともに、日本マイクロソフトの各支店施設を活用したり、日本マイクロソフトから、より密度の高い情報を提供をすることになっている。

 実は、東北支店では、JSTの前身となる取り組みを約2年前から実施することで、業績を上げてきた経緯がある。

 中小企業ビジネスを担当する日本マイクロソフトの業務執行役員 SMB営業統括本部長のマイケル・ダイクス業務執行役員は、「東日本大震災前から、東北地区だけで中小企業向けビジネスが急成長し、その成長を継続していることが分かった。その理由を探ったところ、東北支店独自に展開していたパートナーとの共同営業体制の成果によるものだということが分かった」とする。

 日本マイクロソフトにとって、中小企業向けビジネスは最低でも2桁増という成長が見込まれているが、東北支店ではそれを大きく上回る成長を維持していたという。

 これを全国規模に波及させるというのが、今回のDiscoverキャンペーンの狙いのひとつであり、その点でも仙台でのキックオフにこだわった意味があるのだ。

緊密な情報共有を実現

 Discoverキャンペーンによって展開するJSTは、東北支店でのこれまでの取り組みだけを反映したものではない。

 さらに、一歩深堀りした取り組みを行なっている。

 それは、パートナーが日本マイクロソフトの支店施設を積極的に活用できたり、情報に直接アクセスできるような環境を新たに提供している点だ。

 これまで日本マイクロソフトの支店の各部屋には、同社社員が持つパスを利用する必要があった。当然のことながら、パートナーにはこれが付与されていない。

 しかし、今回のDiscoverキャンペーンには、パートナーにも支店施設に入室できるパスを付与し、活用しやすい環境を実現することになる。

 そして、情報に関しても、パートナーに対して新たにアクセス権を提供するといったように、より踏み込んだパートナーシップを展開している。

 日本マイクロソフトでは、テレセールスで獲得した商談見込み案件をパートナーにも提供する仕組みを用意しており、これまでにもその情報を共有してきた経緯がある。

 この情報には、商談確度「100」とする案件から、数字が小さくなるのに従って商談に向けた仕掛けが必要になることを示しており、特に中小企業の場合には、“関心はあるが、まだ商談に至るまでのきっかけがない”という「20」レベルの案件が多数ある。

 全国系ディーラーの場合、どうしても大型案件にビジネスを集中させる傾向が強いため、確度の高い大型商談に関心が高くなる。しかし、地場ディーラーの場合、地域密着の強みを生かして、こうした「20」程度の確度こそが、多くのビジネスチャンスを生むことになる。

 そうした情報をタイムリーに提供するために、パートナーにも情報へのアクセス権を提供して、これをより積極的に活用できるようにしたのだ。

 「毎日更新される最新データにパートナーが直接アクセスできるようにすることで、埋もれていた案件を商談へと発展させることができる」というわけだ。

 だが、パートナーが、日本マイクロソフトが持つデータベースに直接アクセスするというのは、なかなか認められないものだといえよう。

 ここでも、驚くべき取り組みがあった。

 マイクロソフトは、情報へのアクセス権限をいくつかの水準で制御しており、経営層、正社員、そして契約社員という段階に分かれている。これは全世界共通のものとして設定されている。

 ところが、よく調べてみると、世界規模の仕組みとして、正社員と契約社員の間に情報にアクセスできる権限を許すレイヤーが存在していることが分かった。この仕組みを利用することで、パートナーがマイクロソフトの情報に直接アクセスできるようになったのだという。

 このように、これまでにはない異例の措置がとられているのである。

 Discoverキャンペーンによって、日本マイクロソフトとパートナーとの関係はより緊密になるのは間違いない。

 東北地区での成功モデルをさらに発展させた仕組みによって、マイクロソフトの中堅・中小企業向けビジネスは、どんな成果を上げることができるのだろうか。


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