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データセンターでも、キャンパスでも、FlexNetworkがニーズを網羅

VEPAやTRILL対応スイッチも!HPがネットワーク製品拡充

2011年10月21日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月20日、日本ヒューレット・パッカードは「HP FlexNetworkアーキテクチャ」に基づいたネットワーク製品の拡充を行なった。最新技術をキャッチアップするデータセンター向けスイッチからSMB向けの低価格L3スイッチまで、さまざまな製品が投入された。

FlexFabricでは最新技術がてんこ盛り

 HP FlexNetworkアーキテクチャは、同社のネットワーク機器をデータセンター、キャンパス、ブランチなどの適用領域に配置し、さらにこれらを統合管理する環境を提供するコンセプトで、今年の7月に発表されたばかり。既存のHP ProCurveブランドに加え、スリーコム・H3Cの製品を傘下に収めた同社が、多岐に渡る製品群を用途に合わせて整理したものといえる。今回は、すべての領域において製品が拡充され、発表会ではHPネットワーク事業本部 事業本部長 大木聡氏が新製品や改良点を説明した。

エンタープライズストレージ サーバー ネットワーク事業統括 HPネットワーク事業本部 事業本部長 大木聡氏

 まずFlexFabricと称されるデータセンター向け製品としては、ToR(Top of Rack)スイッチの「A5830AF-48G」、「HP 5900」のほか、コアスイッチ「HP 12500」のアップデートが発表された。

 A5830AF-48Gは、1Uラックマウント型ToRスイッチで、1GbE×48、10GbE×4(固定のSFP+×2、拡張モジュール)を搭載する。最大の特徴は「ディープパケットバッファー」と呼ぶ巨大なバッファ。大木氏は「バーストトラフィックが発生した場合にどのようにふくそうを防ぐかは、今後の製品でのポイント」ということで、今後重要な要素になっていくと説明した。複数台のスイッチを単一の論理スイッチとして扱える独自の仮想シャーシ技術「IRF(Intelligent Resilient Framework)」を用いることで、最大4台のスイッチを単一のスイッチとして統合できる。さらにデータセンターの要件にあわせ、前面と背面、いずれからも吸気が可能なファントレイの選択式になっている。最小構成は158万円から。

大容量バッファを持つ1Uラックマウント型ToRスイッチ「A5830AF-48G」

 今回の目玉商品として紹介されたのが、新製品のHP5900だ。A5830AF-48Gと同じく1UラックマウントのToRスイッチだが、こちらはスイッチング容量も1.28Tbpsで、10GbE×48、40GbE×4のポートを搭載し、より大容量な伝送が可能となっている。最大4台までの接続をサポートするIRFのほか、FibreChannelをEthernetで伝送するFCoE、L2でのマルチネットワークを実現するTRILL/SPB、仮想サーバーのマイグレーションでCPUの負荷をオフロードさせるVEPA(Virtual Ethernet Port Aggregator)など最新の最新技術を満載した。大木氏は「正直いって、今までVEPAに関しては、VEPAを使わずサーバーに投資した方が安価だったと思っていた。しかし、標準化の動向が明らかになってきており、仮想スイッチを使ったNICでの折り返しではなく、スイッチに処理をオフロードできるVEPAのメリットが出てきた」と述べる。また、仮想サーバー上のソフトスイッチではなく、VEPAで外部スイッチを使うことで、ネットワーク設定をサーバー管理者が行なうという事態を避けられるという点も利点と説明した。

サーバーの負荷をオフロードするVEPAに対応

大規模なL2ネットワークではIRFとTRILL/SPBを併用できる

 HP5900の特徴としてもう1つ紹介されたのが、大規模なL2ネットワークを構成するIRFとTRILL/SPBが共存できるという点だ。現在、データセンターでは仮想マシンを前提とした堅牢・高速なマルチパスL2ネットワークの構築が重要になっているが、1万サーバー以下の小・中規模のネットワークではもとよりIRFにより、このニーズを満たすことが可能になるという。一方、1万サーバーを超える大規模なネットワークにおいては、IRFとTRILL/SPBのハイブリッド構成をサポートする。IRFで複数スイッチが論理的に単一化されているため、TRILLを利用した場合でも、経路制御に使うIS-ISのテーブルが肥大化しないというメリットがあるという。製品は2012年春に投入され、価格は未定となっている。

 最後にデータセンターコアスイッチ「HP 12500」のアップデートも紹介され、IRFによる接続シャーシ数が従来の2台から、4台に拡大された。これにより、コアでの10GbEポートの収容密度を大幅に向上できるという。

HP 12500ではIRFにより最大4台まで論理シャーシで構成できる

FlexCampusではメッシュ型スタック製品が売り

 いわゆるエンタープライズLANを実現するFlexCampusの領域では、シャーシ型スイッチの「HP A10500」、メッシュ型のスタックが組める「HP E3800」、そしてL3スイッチ「HP E2620」が紹介された。

 シャーシ型スイッチのHP A10500は、1スロットあたり160Gbpsの帯域を有する。2.6Tbpsというスイッチング容量を実現し、最大128のノンブロッキング10GbEポートを搭載できる。もちろんIRFにも対応しており、40/100GbEにも対応予定となっている。最小構成価格は400万円から。

会場で展示された「A10504」

 スタッカブルスイッチの新製品であるHP E3800は「Flex Chassis Mesh」という機能により、メッシュ型のスタックを組むことができる。チェーン型やリング型とは異なり、メッシュ型のスタックではホップ数を減らすことができ、遅延を最小限になる。また、各スタックポートは84Gbpsという非常に広い帯域を提供しているほか、リンクが冗長化されているため可用性を高めることも可能だ。最小構成価格は45万8000円。

メッシュ型のスタックを組むことができるHP E3800

会場で展示されたHP E3800の24ポートPoE+モデル

 HP E2620は100Mbps対応のL3スイッチで、コストパフォーマンスを追求したモデル。IEEE802.1X/MAC/Webのトリプル認証をサポートし、sFlowやRIPルーティングにも対応する。PoE+対応モデルも提供される。

 大木氏は、今回の製品の一部でサーバーの高効率電源をそのまま採用している例を挙げ、「グローバルで展開するHPのバイイングパワーがコスト面でも効いてくる」と述べ、競合に比べた優位性をアピールした。

IPv6への移行サービスも拡充

 大木氏はブランチ用のサービスをネットワーク機器側で提供するためのHP Advanced Services zl ModuleにCitrix XenServerやVMware vSphereを搭載したことや、2012年の上期で管理ツール「IMC(Intelligent Management Center) 5.1」でモバイル機器のアクセス管理をサポートことなどを発表した。

 また、IPv6の移行サービスも発表された。同社のネットワーク機器は早い段階でIPv6への対応を済ませているが、移行サービスでが単なる機器の入れ替え提案ではなく、ビジネス要件やIT戦略を見越した上での移行計画を提案するという。

ビジネスニーズにあわせたIPv6対応をサポートする

 今回、数々の製品が発表されたなか、FCoE、VEPA、TRILL/SPBなど最新のデータセンタートレンドを取り込んだHP5900は、特に注目といえる。後発ながら、データセンターでどこまで受け入れられるか、製品が登場する来春が楽しみだ。

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