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2013年を占うTECH.ASCII.jpアワード 第2回

2012年注目のネットワーク製品は?

独断と偏見のTECH.ASCII.jpアワード(ネットワーク編)

2013年01月08日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ASCII.jpのITニュースメディアであるTECH.ASCII.jpの担当者が、2012年に発表された製品の中で優れたと思われる製品やサービスを独断と偏見で選んでみた。関連記事とともに2013年の動向を占ってみよう。

 前回に引き続き、はじめに断っておくが、ここで選ばれた製品やサービスはTECH.ASCII.jp担当者オオタニ個人の主観に基づいているものだ。オオタニが参加した発表会や取材に基づき、ユニークで、将来を感じさせるものを感覚的に選び、勝手に「大賞」を捧げている。ここではSDNで大いに盛り上がったネットワーク分野を紹介していく。

なんといってもSDN先取り大賞「UNIVERGE PFシリーズ」(NEC)

 2012年のIT業界のキーワードといえば、やはりSDN(Software Defined Network)であろう。ネットワークの仮想化とオペレーションの自動化を実現するSDNは、その実装の1形態であるOpenFlowとともに大きな盛り上がりを見せた。特にNTTグループでのOpenFlowへの鼻息は荒く、NTT持ち株会社、NTTコミュニケーションズ、NTTデータなど各社が独自にOpenFlowへの取り組みを進めている。長らくネットワーク雑誌を担当していたオオタニからすると、ネットワーク分野でここまで盛り上がったのは、無線LANの登場以来ではないかと思ってしまう。2012年は「サーバーやストレージは仮想化されているが、ネットワークだけはまだ仮想化されていない!」という決め台詞は何度も聞いた。

 こうしたSDNやOpenFlowに対してベンダーとして一番早く対応したのが、NECであることに異論を挟む方は少ないだろう。OpenFlowをベースにNECが独自に開発したプログラマブルフロー技術を搭載した「UNIVERGE PFシリーズ」を世界に先駆けて商用化。未来の技術ではなく、今使えるソリューションとしてSDNを展開した点が高く評価できる。本来は「昨年以前に大賞」というのが正しいが、遅ればせながら2012年のネットワーク部門の大賞として選出したい。

プログラマブルフローに対応する8ポートの10GbEスイッチ「PF5248」

 2012年は金沢大学付属病院などの導入事例も登場し、年末にはコントローラーも大幅に強化された。グローバルにおいても、OpenFlow/SDNをリードするベンダーとして成長することを期待したいところだ。

今そこにあるSDN大賞「Brocade VDXシリーズ」
(ブロケード コミュニケーションズ システムズ)

 さて、2012年がOpenFlow/SDN元年と言われるのは、シスコやジュニパー、HPなど大手のネットワーク機器ベンダーが次々と対応を発表したからにほかならない。こうした中で、OpenFlow/SDNへの対応を他社に先駆け、積極的に進めたのが、ブロケードである。

1Uサイズで54ポートを集積したブロケードのVDX6710

 同社ではネットワークのシンプル化を実現する戦略の一環として、ルーターやスイッチでのOpenFlow対応を積極的に進め、NECなど異ベンダーとの相互接続も行なっている。また、ブロケードの取り組みとして特徴的なのは、既存のネットワークトラフィックとOpenFlow/SDNとの同居を可能にする製品設計になっている点である。OpenFlow/SDNのために新たなネットワークを構築するのではなく、あくまで既存のネットワークからのシームレスな移行を目指しているわけだ。オーバーレイ型のSDNに関しては、ロードバランサーにVXLANゲートウェイを搭載することで既存のVLANとの統合を実現。また、Vyatta(ビアッタ)を買収したことで、仮想化環境でのソフトウェアルーターも手がけることになった。

 大手ベンダーがこぞって製品での対応を発表したことで、OpenFlow/SDNの分野は2013年はいよいよ実用期に入ってくると思われる。

 とはいえ、個人的にはこうしたOpenFlowやSDNの萌芽に当たる取り組みを進めていたのは、NECでも、ブロケードでもなく、スイッチベンダーのエクストリーム ネットワークスだと思っている。同社は、スイッチのOSのAPIを外部に公開し、ネットワーク制御を外部のソフトウェアから行なうという発想を2007年当時から持っていた。まさにSDNを見越した先進的すぎる取り組みだが、正直5年早かったとしか言いようがない。タイムトゥマーケットは実に難しい。

スマホ時代の無線LAN AP大賞「WLX302」(ヤマハ)

 OpenFlow/SDNとは異なる観点で、2012年のネットワーク部門の大賞に推したいのは、ヤマハの無線LANアクセスポイント「WLX302」である。

見える化とMDM搭載が新しい無線LANアクセスポイント「WLX302」

 僭越ながら言わせてもらうと、ヤマハのネットワーク機器は決して時代の最先端を進んできたわけではない。ネットワーク部門でのコア製品であるルーターも、最新技術をふんだんに取り込むことより、安定度とコストパフォーマンスを重視し、適切なタイミングで市場投入されることが優先されている。後発として参入したスイッチに関しても、ルーターと連携した設定や見える化という差別化ポイントをきちんと打ち出して市場投入している。そして、昨年11月に発表されたWLX302に関しても、無線LANの見える化とスマートフォンなどの端末管理機能を標準搭載し、後発の強みを存分に活かしている。

 すでにコモディティ市場になっている無線LANだが、スマートフォンやタブレットの業務利用が増えたことで、今後はリプレースや刷新の動きが拡大してくる可能性がある。出力を高め、パフォーマンスや距離を伸ばす無線LAN製品より、少ない電波リソースを有効活用し、多くの端末で安定した通信が行なえる製品の方が求められる時代になってきているのだ。こうした時代の趨勢を読み切って作られたのであれば、WLX302は単なる白い箱のようには見えなくなるだろう。

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