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最新パーツ性能チェック 第118回

28nmの新設計GPU「Radeon HD 7970」は頂点に立つのか?

2012年01月05日 12時00分更新

文● 宇野 貴教(解説) / 加藤 勝明(ベンチマーク)

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 AMDは2011年12月22日に新たなハイエンドGPU「Radeon HD 7970」を発表した。このGPUは今後展開されるRadeon HD 7xxxシリーズのシングルGPU最上位モデルとなる製品で、旧モデルのRadeon HD 6970の登場からちょうど1年を経ての新モデル投入となる。ここでは近日発売予定となるRadeon HD 7970搭載ビデオカードの性能をチェックしていこう。

「Radeon HD 7970」のリファレンスカード。赤と黒を基調としたRadeonシリーズと一目でわかるカラーリングデザインだ

 旧モデルGPUの「Radeon HD 6xxx」シリーズとの大きな違いは、製造プロセスルールが40nmから28nmへの大幅に微細化されたことと、「Graphic Core Next」と呼ばれる新アーキテクチャを採用したことだ。そのほかにも、PCI Express 3.0とWindows 8で採用されるDirectX 11.1に初めて対応するGPUでもある。

VLIWからGCNにアーキテクチャー変更

 基本スペックはコアクロック925MHz、メモリークロック5.5GHz相当、メモリー容量3GB。Radeon HD 6970と比較するとコアクロックが約5%上昇しているが、新モデルのアップ率としてはさほど高くなく、パフォーマンスアップはGPUコアの仕様変更に大きく依存するとみてよいだろう。最大消費電力は260Wで、補助電源としてPCI Expressコネクターの8ピンと6ピンを各1つずつ使用する。推奨電源容量は500W以上だ。

各ビデオカードの比較表
  Radeon HD 7970 Radeon HD 6970 GeForce GTX 580
コアの開発コード Tahiti Cayman GF110
製造プロセス 28nm 40nm 40nm
DirectX対応 11.1 11.0 11.0
コアクロック 925MHz 880MHz 772MHz
シェーダープロセッサー数 2048 1536 512
ROPユニット数 32 32 48
メモリ転送レート(相当) 5.5GHz 5.5GHz 4GHz
メモリタイプ GDDR5 GDDR5 GDDR5
メモリインターフェース 384bit 256bit 384bit
メモリサイズ 3GB 2GB 1.5GB
最大消費電力 250W 250W 244W
外部電源 6+8ピン 6ピン×2 6+8ピン

 では、Radeon HD 7970最大の注目ポイントである「Graphic Core Next」(以下GCN)について解説しよう。これでまのRadeon HDシリーズは、Radeon HD 2000~6000シリーズでVLIW(Very Long Instruction Word)方式を採用しており、Radeon HD 7970はGCNで久しぶりのアーキテクチャー転換を果たしている。とはいうものの、GPUコアの核となるRadeon Core(各種演算を実行するいわゆるStream Processor)自体はVLIWから変化はなく、GCNはRadeon Coreやその他ユニットの組み合わせを見直すことでスループットを引き上げている。

GCNのStream Processorは、Radeon HD 6900で採用されたVLIWと同じもの。ただし、Radeon Coreやその他ユニットの組み合わせを見直すことでスループットを引き上げている

 Radeon HD 6970では、4×16基のRadeon CoreをVLIW方式でまとめたものを1つの「SIMD Engine」とし、SIMD Engineを24基搭載してGPUを構成していた。利用されているRadeon Coreは、4×16×24で合計1536基である。これに対しRadeon HD 7970はSIMD Engineがなく、かわりに32基の「GCN Compute Unit」(以下GCN CU)が搭載されている。

コアアーキテクチャーの歴史。Radeon HD 6970では、4×16基のRadeon CoreをVLIW方式でまとめたものを1つの「SIMD Engine」としていた

 GPU CUの構成は16基のRadeon Coreをまとめたものが4基、16KBの命令キャッシュ、32KBのデータキャッシュなどだ。Radeon Coreは16×4×32で2048基とRadeon HD 6970の約1.33倍に増加しており、単純にRadeon Core数だけを見ても1.3倍程度のパフォーマンスアップが期待できる。
 そのほかにもSIMD Engineの外にあったテクスチャユニットや命令キャッシュがGCN CU内部になり、GCN CU単位できめ細かな処理が行なえるようになっているのも特徴で、GPUの利用効率を向上させやすくなる。これはGPUコンピューティングにおいて大きなメリットで、AMDは汎用コンピューティングの分野に注力しようとしているわけだ。

Radeon HD 7970のブロック図。SIMD Engineがなく、かわりに32基の「GCN Compute Unit」を搭載している

 かといって3Dグラフィックスが疎かになっているわけではない。ゲームにおいて重要なメモリー性能は、メモリーインターフェースが64bit×6で、384bitバス幅となる。組み合わせられるメモリーが5.5GbpsのGDDR5なので、メモリーバス帯域幅は最大264GB/sと高速だ。
 さらにメモリーインターフェースの設計変更によりROPの利用効率が引き上げられている。そのほかにもテッセレーターがRadeon HD 6900シリーズから世代アップしており、テッセレーション処理の速度が大幅に向上している。Radeon Core数の増加もあり、3Dゲームも順当な性能向上が期待できると言えるだろう。

Radeon HD 7970搭載マシンでのGPU-Z実行結果

省電力性能も進化
離席状態なら3W以下!

 Radeon HDシリーズは電力管理機能として「AMD Power Tune Technology」を搭載するが、これもRadeon HD 7970では一新されている。これまでよりもより細かく動作クロックを変更できるほか、ディスプレーの電源がオフになるような状態ではPCI Expressから以外の電力供給をカットすることで待機電力を3W以下に抑えられるとしている。製造プロセスルール微細化により、アイドル時の消費電力も従来よりも大きく下がっているとアナウンスされており、節電志向のユーザーは注目しておきたい。

電力管理機能の「AMD Power Tune Technology」を強化。より細かく動作クロックを変更できるようになり、カードの限界まで電力を消費して性能向上に振り向けることも可能になった

アイドル時の待機電力を3W以下に抑える「AMD ZeroCore Power Technology」が追加された

カードサイズはRadeon HD 6970とほぼ同じ

 Radeon HD 7970のリファレンスモデルのビデオカードを見てみよう。ハイエンドモデルらしく全体がカバーで覆われており、外形寸法はRadeon HD 6970とほぼ変わらない。

左からRadeon HD 7970(実測約280mm)、Radeon HD 6970、GeForce GTX 580。Radeon HDシリーズはカードサイズがわずかに長い

 補助電源コネクターは8ピン、6ピンともに1系統ずつ。カードをマザーボードに装着した状態で上から垂直に差すよう設置されている。出力端子はHDMI(HDMI1.4a準拠)とDVI-Iが各1系統、Mini DisplatPortが2基用意されている。

PCI Express補助電源コネクターは8ピンと6ピンが各1系統。コネクターはカード上部にあり、ケーブルを差しやすい

外部出力端子は合計4系統。DVIコネクターはアナログ出力も兼ねる

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