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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第83回

タブレットにUltrabook 2011年のモバイル機器を振り返る

2011年12月22日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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タブレットの常識は「2012年」に変わる

Androidタブレットが多数登場したが、いまだ「iPad 2」の一人勝ちを打破できてはいない

 非PC系、特にAndroid系タブレットが活発に商品化されたのも、2011年の特徴といえる。2010年に「iPad」が登場してタブレットというジャンルに火をつけると、2011年にはAndroidに拡大した。グーグルがタブレット向けのAndroidとして、「Android 3.0」系(Honeycomb)をリリースしたことも大きかった(関連記事)。

先陣を切って登場したAndroidタブレット「MOTOROLA XOOM」

 だが、こと製品の完成度でいえば、Honeycomb系タブレットは残念なものが多かった。Honeycomb系はアプリの互換性の点で問題も多く、タブレット用アプリがなかなか出なかったことも問題だろう。結局いまだ、タブレット製品のシェアはiPad(2011年はiPad 2)の一人勝ち状態が続いている。

 PCを代替する存在として、NECの「LifeTouch NOTE」やASUSTeKの「EeePad Transformer TF101」なども登場したが、使い勝手はいま一歩だった。むしろ、新アーキテクチャーと新ボディーでありながら、用途をほとんどぶらさなかった「ポメラ DM100」の実用性はさすがに高かった。

タブレットではないが、非PC系では大きなモデルチェンジを果たしながら、本質がぶれなかった「ポメラ DM100」が印象に残る

 「そもそもタブレットはノートパソコンの代替物ではなく、AndroidにWindowsの代わりをさせるのは間違っている」という正論もある。それは確かにそのとおりだ。しかし、テキストワークやプレゼンなど、さほどマシンパワーを必要としない用途ならば、「バッテリーが非常に長持ちするタブレット系を使いたい……」というニーズがあるのもまた事実。日本語入力部を入れ替えることができないためか、この分野ではiPad向けアプリも精彩を欠いている。

 ただしプレゼンは別だ。iPad用プレゼンソフト「Keynote」は非常に高い完成度を誇っており、AndroidでなくiPadを選ぶ理由のひとつになっている、と筆者は考えている。

 タブレットについては、2つの観点がある。ひとつは「WAN系通信機能を内蔵すべきか否か」。特にLTEやWiMAXといった高速通信機能を内蔵したタブレットは、バッテリー容量の大きさもあって、テザリングを使っての「モバイルルーター代わり」に最適だ。「GALAPAGOS EB-A71GJ-B」は、そういう点で評価できる商品である。

WiMAXモバイルルーター代わりとしても最適な「GALAPAGOS EB-A71GJ-B」

「Windows 8」のプレビュー版を搭載したタブレット端末「Samsung 700T」。Windows 8以降はx86やARMを搭載したこうした製品も増えてくる

 2点目は、「そもそもAndroidである必然性はあるのか」という点である。2012年には、次期Windowsである「Windows 8」(仮称)がやってくる。Windows 8では、CPUアーキテクチャーとしてx86系だけでなく、ARM系が使えるようになる。現在聞こえてくる話では、ARM系Windows 8ではこれまでのx86 CPU用アプリ(Win32 APIで記述されたDesktopモード用アプリ)が使えなくなる可能性が高い。その代わりAndroidタブレットがそうであるように、省電力で薄型・小型の「Windows 8で動くタブレット」が登場することになる。「アプリの蓄積がない」という前提で考えるなら、AndroidとWindows 8にどれほどの違いがあるだろうか?

 率直に言って、x86 CPU用に作られたWindows 8搭載機は、やはり「パソコンはパソコン」という出来になると思う。良くも悪くも想像できる範囲の製品になるはずだ。だがARM系で作られた製品は、もう少しユニークなものになる可能性も高い。

 それが使い物になる、よい製品ばかりになるかはわからない。しかし「新しいモバイル機器の姿」を生み出す元にはなるだろう。2012年は、2011年までに考えた「パソコンとタブレット」のジャンル分けが揺らぐ、最初の年になるかもしれない。

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「災害時ケータイ&ネット活用BOOK」(共著、朝日新聞出版)、「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)。最新刊は「リアルタイムレポート デジタル教科書のゆくえ」(TAC出版)。

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