本連載も2010年の掲載は今回が最後。というわけで今回は、モバイルにとっての転換期になった……かもしれない2010年に出た機器、連載に登場した機器を中心に振り返り、「今後のモバイル機器がどうなるか」を考えてみよう。
2010年はiPadの年だった!?
2010年は、なんといっても「iPadの年」だった。1月のiPad発売から夏くらいまで、話題はiPad一色だったと言っていい。
800g弱と重いこと、9.7インチというサイズが大きなことから、2010年末の現在では「モバイル機器」としてiPadを見ると、少々人気薄といえるかもしれない。「Galaxy Tab」や「Streak 001DL」といった、より小さなサイズのライバル機が続々登場し始めていることも、インパクトを薄くしている原因かもしれない。
だがそれでも、モバイルシーンにiPadが巨大な影響を与えた事実はゆるがない。これまで非PC系のモバイル機器といえば、携帯電話か「ポメラ」のような専用機が多かった。そこへ、iPadに代表されるスレート型機器が登場することで、新しいニーズを生み出したからだ。
iPadに対する(今となっての)幻滅の理由のひとつは、「パソコンを完全に代替できるのではないか」という期待に応えてくれなかったことにあると考える。筆者もずいぶんそういう質問を受けた。実際のところ、文字を入力するのが目的なら物理キーのあるPCの方が快適だし、ソフトやサービスもPC用のアプリケーションソフトに「よく似たもの」を使うより、PC用ソフトそのものの方がいい。
しかしスレート型端末は、“コンテンツを消費すること”には一番向いている。リラックスしてウェブを見たり映像を見たりするなら、パソコンよりもはるかに気軽に使える。11月には日本でも、ついにiTunes Storeでの映像配信が始まったこともあり、楽しむべきコンテンツが増えたのも大きなポイントだ。
おそらく2011年も、スレート型端末の話題は尽きないだろう。Android端末の動向も気になるが、やはり台風の目になるのは、いつの段階かで登場するであろう「次世代iPad」になるのは間違いない。ソニーやパナソニック、東芝といった日本メーカーも、このジャンルの製品を開発している。2011年前半には出そろう可能性が高いと見られているが、日本勢がどこまでアップルやサムスンなどの先行メーカーに迫れるか? そこがひとつの見所といえる。
逆に、スレート型端末ではない「非PC系機器」は、少々残念な結果に終わった一年だった。例えば、フルキーボード搭載でコミュニケーション系端末という新機軸を狙ったau/シャープ「IS01」はAndroid OSのバージョンアップでつまづき、同様にAndroidを採用した東芝の「dynabook AZ」も、その存在感を示せていない。
2011年には、PCアーキテクチャーの本体でありながらWindowsを使わない「Chrome OSノート」も登場する予定だ。「PC用OSでないところから快適な機器を作る」アプローチには、2011年も引き続き注目していきたい。
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