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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第83回

タブレットにUltrabook 2011年のモバイル機器を振り返る

2011年12月22日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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 UltrabookとMacBook Airでは、どちらが優位だろうか? 現状では「一般論としてMacBook Air」としておく。OSとのマッチングによるスリープからの復帰時間の早さなどで、MacBook Airのほうに分があるからだ。

 他方、現行のSandy Bridge世代のMacBook Airは、昨年モデルに比べバランスが崩れた、とも感じる(関連記事)。元々アップルは発熱対策に無頓着なところがあるが、今世代では特にそれを感じる。新モデルでは発熱が大きくなり、旧モデルほど快適に使えない。モバイルでのニーズを考えると、処理速度よりそういった「官能性」の部分が重要。そういう点では、設計が巧みな企業の製品の方がプラスといえる。

 Ultrabookについては、2012年にプラットフォームが「Ivy Bridge世代」に移行してからが本番、とも言われている。ここからは、本格的に薄型でバッテリー動作に特化したノートパソコンが現れることになりそうだ。そのときはおそらく、MacBook Airもリニューアルすることになる。どちらがどのタイミングで出てくるかはわからないが、そこでもう一度、このスタイルのパソコンの価値が問われることになりそうだ。

見直される「国内パソコンメーカー」の力

 2011年のモバイルノートで特に感じたのは「日本製品の復権」だ。といっても、まだまだ一部の製品だが。本連載で取り上げた中では、富士通の「LIFEBOOK SH76/E」、ソニーの「VAIO Z」がそういった製品に当たる。

モバイルノートのメインストリームと言える13型・光学ドライブ内蔵路線で完成度を高めた「LIFEBOOK SH76/E」

GPUと光学ドライブを光インターフェースで外付けにした超薄型モバイルノート「VAIO Z」

 パソコンといえば生産の拠点は中国であり、設計面でも製造面でも、彼の地を拠点とする企業が有利、と言われている。それは今年も大きくは変わっていないだろう。だがモバイルに特化した製品では、日本国内に高精度の生産・研究拠点を持つ企業の価値が高い。そういう意味では、レノボの大和事業所もそういった場所である。

 2011年に入ると、生産工程の効率化などによって「中国での生産のメリットが一時に比べ薄まりつつある」という言葉を耳にするようになった。それはなにもパソコンだけの話ではないし、ベトナムや南米など、別拠点での生産が増えている証ともいえるが、こと日本のパソコンメーカーの中には、日本生産を進めるところも増えている(関連記事)。

 前出の2機種は、機構の面でとてもユニークな製品であり、発売から時間が経過しても、独自の価値を維持し続けている。そういった製品が増えていくことは、モバイルPCというジャンルを肥沃なものとし、各メーカーの力を世に示すチャンスともなる。以前から続く傾向ではあったが、特に2011年は、この2社から高く評価できる製品が出たことで、そういう思いを強くした。

 実際、IT業界・マスコミなどでも、これらの機種を持つ人の姿を見かけることが意外なほど多い。来年以降も、各社の創意工夫による「他の国から出てこないパソコン」が見られることを期待したい。

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