セレモニアルスタート後
ついにSS1開始!
セレモニアルスタート後のSS1「オビヒロ」。ここはラリーパークの横に併設されている約1kmのショートコースで、本日のアタックはこれ1本のみ。観客向けのお披露目ステージで、本来ならここでは何も起こりようがないはずが……いきなりの大波乱が起きてしまった! 何と、メロン号の1つ前でスタートしたシリーズランキングリーダーの曽根崇仁選手/桝谷知彦選手組セリカが、駆動系トラブルからコース上でストップ。観客席から見ていた筆者も我が目を疑ったが、その脇を通過していったメロン号の2人のクルーも心底驚いたようだ。
眞貝知志選手(ドライバー)「昨年このラリーでグラベル初出場しましたが、今回もSS1は自分的には超スロー走行。でも何故かタイムはクラス2番手で、それだけ周りが安全策でスロースタートしたということなんでしょう。曽根選手は大変気の毒なマシントラブルでした。同じ立場だったらさぞ悔しいだろうに、なんて感傷に浸っている場合じゃなく、いよいよ完走してポイント稼いで、新城では優勝して、奇跡の逆転チャンプ!? と、セリカの横を通過しながら大分動揺しましたね」
翌10月1日(土)。本格的な競技スタートとなるこの日は、帯広から北東に約100km離れた陸別町にリモートサービス(メインのサービスパークとは別に、遠隔地に置かれる小規模なサービスパークのこと)が置かれ、ここを拠点として周辺の3本のステージを巡るスケジュールが組まれている。パルクフェルメ(車両保管)明けの最初のサービスをメカニック隊に任せ、筆者は陸別に先行して現地の偵察を行なう。
その頃、北愛国サービスパークを出たメロン号は、この日最初のSS2「アショロロング1」をアタックしていた。前半は牧草地帯の丘陵上を行くスピードの乗るセクションで、後半からはぐっとコース幅が狭まり、しかしスピード域はそれほど変らないというステージだ。
ここでメロン号はペースノートの精度が合わずに大苦戦。今回、MRCはレッキ(事前試走)にレンタカーのSUVを使ったが、インテグラよりも大柄ボディゆえにコーナーを実際よりもキツめに見立ててしまったようだ。ところが、終わってみるとタイムは3番時計で想像ほどに悪くない。この結果に一番疑問符を浮かべていたのは、何よりクルー自身だったんじゃないだろうか?
眞貝選手「なんせスピードが速い道なので、いきなりのアタックはあまりにもリスキーと考えてスロースタート。ところがノートの精度がメチャクチャで、とても全開では走れませんでしたね。1年間の成長を感じるどころか、逆に退化しちまってるんじゃないか、と思えるステージでした。途中からは後続に追いつかれるんじゃないかと気になるくらい。2人のテンションはダダ下がりでしたね」
SS3「ニュークンネイワ1」。深い森林の中を縫うように走るステージは、コース幅がきわめて狭く、しかしスピードレンジはとてつもなく高い。インカー映像を見るとわかるように、5速フルスロットルが1分近く続くところもあり、サーキットでも見られないほどのスピードの高さを誇る。しかし路面はギャップやジャンプが頻発し、ワンミスが即大クラッシュを招く、国内随一の難ステージなのだ。
依然としてノートの精度が合わない。無数のコーナーがブラインドで現れるラリーの場合、ペースノートが合わないと目隠しをされたも同然の走行となってしまう。さらに、事前に懸念されていたエンジントラブルの症状がここに来て再発し、思うように加速すらできない場面も。しかし、これで何故かタイムが出ているのだ。なんとこのステージではクラスベストタイムを記録。たしかにインカー映像上ではかなりのスピードで走行しているが、ここにきてクルーの違和感は最高潮に達していた。これが後の伏線になったとは思いたくないが……。
眞貝選手「2分後ろからスタートしている前年度チャンピオンの香川秀樹選手の走りを気にしながらも、自分的には徹底的に完走ペースに切り替え、涙をのんで慎重な走りに徹したステージでした。それなのに後で周りの選手たちにタイムを聞くと、SS2は3番手、SS3はベスト……? いやいや絶対にオフィシャルの計時間違いだと、自分でもまったく信じてませんでしたね」
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