アップル新CEO、ティム・クック氏とは?
スティーブ・ジョブズという人物の個性やカリスマがあまりに強大で、それ以外のキーパーソンについてあまり脚光を浴びることがない点は、アップルらしさといえるかもしれない。
著名どころでいえば、近年のアップル製品のほとんどのエンジニアリングデザインを担当しているジョナサン・アイブ(Jonathan Ive)氏がまず挙がるだろう。スタイリッシュさと実用性の両方を兼ね備えた製品デザインは、アップルと他社との大きな差別化ポイントの1つだ。そして、もう1人忘れてはいけないのが、今回CEOに就任したティム・クック氏だ。
ジョブズ氏は、これまでにもたびたび病気療養でCEO職を一時的に離れることがあり、その際CEO代理のような形で経営の陣頭指揮に当たっていたのが、当時COO(Chief Operating Officer)だったクック氏である。
COOというと「実務担当者」「会社の次席」といった印象がある一方で、その業務内容が分かりにくいが、クック氏はCOO着任前には長年にわたってワールドワイドのセールス担当責任者を務めており、いわばセールスやマーケティングのプロフェッショナルといった人物だ。同氏のアップルにおける最も大きな貢献事項はといえば、世界トップクラスのサプライチェーンや販売網を構築した点にある。
アップルがライバルらに対して特に秀でている点として、優秀な在庫管理システムが挙げられる。アップルは自身が持つ製品ラインについて、ある一定期間が経過すると新商品へと順次入れ替えていく製品サイクルを実施している。
この入れ替えのタイミングになると旧モデルの在庫が急に品薄になり、新製品発表時には一気に新商品が発売される。読者の皆さんも、「○○という製品の在庫が少なくなっているニュースが出ているので、間もなく新製品が登場する!」といった形で、アップルのこのシステムに慣れ親しんでいるかもしれない。
実は、これ自体が業界的にはすごいことで、旧モデルの在庫をほとんど残さずに新商品へと一気に入れ替えるのは至難の業なのだ。販売予測を含む製造ラインの厳密なコントロールが必要なため、ライバル社のたいていの製品では旧製品の在庫が積み上がる、あるいは品不足が続いて商機を逃すといった事態に遭遇することになる。
サプライチェーンの構築から管理、サプライヤーへの支援、Apple Storeや提携チャネルでの販売網など、アップルの屋台骨を支えるシステムを構築した最大の功労者がクック氏だといえる。
まさに縁の下の力持ちで、ジョブズ氏や前述アイブ氏などと並んで、今日のアップルはクック氏なしではあり得ないといえるのだろう。ジョブズ氏ほどの華はないにしても、ある意味で後任にはこの人しかいないともいえるかもしれない。
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