40℃対応をめぐって企画サイドと開発サイドでバトル?
同社のオフィス向けのスリムサーバーは、日本の狭いオフィスに置くのを前提に開発された、Express5800の十八番ともいえる製品。従来は、ホットプラグ非対応とか、サーバーCPUが載らないといった制限があったが、新製品はサーバーとして十分なスペックを持つ高いレベルが要求されたという。多和田氏は、「サーバー向けのXeonが載ること。HDDが5台搭載でき、かつホットプラグで交換できること。LANポートは2つ搭載。従来機種のサイズはキープし、性能を上げつつ、電力は下げること、といった数多くのリクエストが開発側に来ました」と語る。こうした仕様に関しては、企画サイドと開発サイドで、かなりのバトルがあったようだ。
開発側では高温稼働を可能にする部品選定やエアフローの最適化を進め、限られた筐体内で冷却が効率的に行なえるようにした。
まずサーバー向けのXeonプロセッサーを載せるために巨大なヒートシンクを採用。前面に5台のHDDを搭載するベイを確保しつつ、マザーボード上には遠隔管理チップや効率的な電力変換を実現する高密度VRを実装した。センサーを用いた熱流体シミュレーションによる検証を地道に行ないうことで、最適なエアフローを実現するためのマザーボード上の部品配置を模索したという。
CPUやメモリ、高密度VRなどの主要熱源を効率的に冷却するため、前面に二重反転する大型ファン、背面に大型ダクトを配置。前面から背面への空気の流れにあわせ、整流板も用意し、メモリスロットの配置を垂直方向から平行方向に変更した。
また、電源自体は独立した空冷機構を設けたほか、「下部にあるPCI Expressスロットのカードもきちんと冷やせるよう、CPUの冷却ファンをずらすオフセット配置しました。排熱用のファンも傾斜を付けてあります」(多和田氏)といった工夫も盛り込んだ。ときにmicroATXのマザーボード設計としての掟破りを犯しながら、高温稼働に耐えうる製品設計を実現したわけだ。実際、40℃稼働の温度分布シミュレーションを見ると、見事なまでに筐体全体がきちんと冷却され、低温を表す青になっていた。
オフィス設置派にも納得の作り込み
もう1つ細かい改良点として、防塵への工夫が挙げられる。「店舗の入り口でほこりが多かったり、粉を吹くような環境での設置もあります。そのため、ほこりの吸い込みを低減する防塵ベゼルを用意しました」(高橋氏)という。目詰まりアラートもすでに試作しており、空調機器のような使いやすさを実現している。
とかく昨今は「サーバー機器はどれを買っても同じ」と無個性を喧伝する向きもあるが、今回のExpress5800はなかなか個性的。目玉商品でもあるスリムサーバーは、「10万円弱から」という価格もきっちり維持している。クラウドの時代が到来してサーバーはすべてデータセンターに行ってしまう錯覚すら覚えるが、日本では手元にある安心感からオフィス設置の需要は根強い。その点、今回のスリムサーバーはスモールビジネスや事務所での用途はもちろん、自宅サーバーとしても魅力的といえる。