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サーバーを熱くさせないための現場での熱い戦い

40℃動作保証を実現したNECスリムサーバー開発の舞台裏

2011年06月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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6月6日にNECが発表したエントリサーバーの新製品は、空調に配慮して40℃での動作をメーカーとしてサポートしているところが、大きな特徴だ。NECのサーバー・ストレージ事業部の担当者に、消費電力の削減や40℃での動作サポートを実現するまでの道程を聞いた。

顧客の声を最大限に取りこんだ省電力サーバー

 NECのサーバー・ストレージ製品における省電力の取り組みは古く、グリーンITという言葉が生まれる以前の2005年からノートPCのCPUを用いた省電力サーバーに取り組んでいる。その後、省電力・省スペースなどをコアに据えた「Express5800/ECO CENTER」ブランドを立ち上げ、昨年は省電力プロセッサーであるAtomプロセッサーを採用したモジュラー型サーバー「E110b-M」を投入し、業界を驚かせた。

NEC プラットフォームマーケティング戦略本部 主任の高橋輝圭氏

 こうした省電力サーバーの登場は、データセンター向けサーバーの開発において、顧客の声に耳を傾けた結果だという。NEC プラットフォームマーケティング戦略本部 主任の高橋輝圭氏は、「5~6年くらい前まで、われわれは性能の向上を第一義にサーバーを開発してきました。ですが、データセンターの事業者に聞くと、むしろ1つのラックの中にどれだけサーバーを詰め込めるかが勝負という意見が多かったんです。とても衝撃的でした」と語る。CPUのブランドではなく、あくまで提供できるサービスに対するコストと性能のバランスが重要というわけだ。「(われわれのような)企画サイドはどうしても他社との比較で機能を盛り込み過ぎる傾向がありますが、事業者さんとはメモリスロット数というレベルまで話を深めて、最適解に近づけていく作業を続けてきました」(高橋氏)という。

NEC ITハードウェア事業本部 主任兼サーバ事業部主任の多和田 諭氏

 開発側も、こうした顧客の声をきちんとヒアリングして製品に反映している。開発を担当したITハードウェア事業本部 主任兼サーバ事業部主任の多和田 諭氏は「データセンターの場合、1日を通してサーバーの負荷のかかり方が違います。ですから、負荷がかかるときは性能を出して、低いときはファンやCPUの制御をきちんと行ない、電力を落とすように設計しています」と語る。こうした製販一体の取り組みが、NECの省電力サーバー開発を支えているわけだ。

オフィスサーバーでも省電力に本気!

 そして、この省電力の取り組みをオフィス向けサーバーにまで拡大したのが、6月6日に発表された新製品だ(参考記事:「業界の不文律を破る?動作温度40℃に対応するNECサーバー」)。

 新たに投入されたエントリ向けのサーバー5機種、ストレージ製品2機種では、仮想化を前提とした高い性能を実現しつつ、省電力CPUや高効率電源の採用で消費電力を大きく削減している。

 また、節電運用を容易にするため、OSに依存しないリモート管理やUPS未接続システムでのスケジュール自動運転、さらには電力の上限設定を行なうパワーキャッピングなどの機能も盛り込んだ。注目したいのは、これらの機能がすべて標準搭載されている点。サーバー単体を購入すれば、すぐにエコ運用が実現できる点は評価できるポイントだ。

EXPRESSSCOPEエンジンによる運用でのエコロジ

 特に大きいのは従来から5℃アップの40℃の動作温度を保証したほか、空調の電力削減まで可能にしたという点である。オフィス向けのサーバーはPCやプリンタのように人に近い場所ではなく、むしろ熱だまりになりやすい場所に設置されることも多い。サーバールームと異なり、夜間と日中での温度差も大きく、安定稼働のためには余裕を持った動作温度が重要になってくる。こうした点に特に配慮されたタワー型のスリムサーバー「Express5800/GT110d-S」(空冷モデル)で、40℃対応を実現したこだわり設計を見ていこう。

(次ページ、40℃対応をめぐって企画サイドと開発サイドでバトル?)


 

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