このページの本文へ

NECが考える今必要なオフィスサーバーの姿 第1回

スペースや電力、熱など課題は山積み

震災とクラウドでオフィスサーバーは消えるのか?

2011年09月01日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 記事協力●NEC

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

クラウドコンピューティングの台頭や震災による電力不足により、オフィスサーバーの課題は大きく変わりつつある。日本のオフィスサーバーを牽引してきたNECは、この課題にどのように対応していくのだろうか? オフィスサーバーは震災やクラウドでどう変わるのか?

 

日本のビジネスはオフィスサーバーが支えている

 「SMB(Small & Medium Business)市場での事務所へのサーバー設置は約半分」。これが日本の企業のほとんどを占める中堅・中小企業で使われているサーバーの現状である。

 中堅・中小企業におけるPCサーバーの導入動向を調べたノークリサーチの「PCサーバー導入実態調査2011年版」によると、対象企業1066社のうち、導入しているPCサーバーの台数が3台以下という企業は実に約45%を占める。そして、そのうち約70%がタワー型サーバーを導入している。この市場において、ブレードサーバーの導入率は4%に過ぎないのだ。

 

中堅・中小企業におけるPCサーバーの導入について(ノークリサーチ調べ)

 この数年のIT動向をチェックしている人にしてみれば、これはやや意外な調査結果かもしれない。オフィスに設置されていたサーバーはデータセンターに移行し、システムのアウトソーシングが加速しているというのが昨今の常識だ。先頃の大震災の影響もあり、クラウドコンピューティングへの移行は加速し、ともすれば「オフィスからサーバーが消える?」とまで喧伝されている。

 

 確かに、サーバーのデータセンターへの移行は進んでいるし、仮想化も浸透しつつある。しかし、この調査を見ると、タワー型サーバーを現場に設置するというニーズがきわめて高いことがわかる。さらに、オフィスサーバーにおいてはまだまだ仮想化のニーズが高いとはいえないことも明らかだ。

 

 データセンター向けサーバーとは異なる要件や課題を意識し、こうした現場設置のオフィスサーバーを長らく手がけてきたのが、PCサーバー「Express5800シリーズ」を展開するNECである。NEC プラットフォームマーケティング戦略本部 グループマネージャー 本永実氏は、クラウド時代のオフィスサーバーの存在意義について、「クラウドコンピューティングが浸透してきたということで、『今後はデータセンターとスマートフォンだけになるのか?』と、われわれも自問自答したんです。しかし、実際はそうではありませんでした。データセンターでの集中処理を中継する端点(ステーション)となるような現場設置サーバーは確実に存在しているんです」と語る。

 

NEC プラットフォームマーケティング戦略本部 グループマネージャー 本永実氏

 クラウドコンピューティングや仮想化というキーワードが業界を席巻する昨今においても、用途に合わせて複数台のサーバーを並べて使うという日本企業のサーバー利用の実態が見えてくる。「中堅・中小企業はやはりクラウドへの移行がかなり緩やかで、現場に置いておきたいというニーズがやはり高いんです。いずれなくなるといわれたタワー型サーバーも、結局根強い人気を誇っています」(本永氏)。

 

現場マーケティングと国内生産で実現した 「こだわりサーバー」

 しかし、オフィスへのサーバー設置は、さまざまな課題をクリアしなければならない。本永氏は、オフィスサーバーを取り巻く背景として、「そもそも日本のオフィス賃貸料は米国の約2倍になりますし、電気代も欧米に比べて高いのが実態です。ですから、省スペース・省電力は必須。さらに、従業員が業務を遂行しているオフィスに設置するため、「動作音」も大きな問題となります」(本永氏)などを挙げる。また、管理者がいないのにも関わらず、目的ごとにサーバーが乱立していく傾向にあるのも、オフィスサーバーの課題だ。

オフィスサーバーにおける課題

 NECは、こうしたオフィスサーバーの課題に応え、いくつかのユニークな製品を世に送り出してきた。

 たとえば、代表的なオフィスサーバーとして、サーバーとしてのスペックをPC並の設置スペースで実現したスリムサーバーが挙げられる。これは前述したオフィスの賃貸料や電気料金の高さといった課題を克服するため、省スペース・省電力を追求したモデルである。また、同社オリジナルともいえる水冷サーバーは、サーバー設置環境においての不満のNo.1が実は「音」であることを現場から吸い上げた結果として生まれたものだ。その他、省スペースと静音を追求し、ラックマウント型サーバーをオフィス設置するための専用ラックまで作ってしまった。

 

Express5800シリーズのこだわり製品の取り組み

 こうしたこだわりサーバーは、「現場マーケティング」と「国内開発・生産」という両輪により実現した。価格と汎用性を売りにしたスタンダードサーバーのようなアプローチと異なり、営業担当者だけでなく、マーケティング担当者や技術者がユーザーを訪問することで、潜在的なニーズを掘り起こし、これを開発に生かすことで、唯一無比な個性を持つ「こだわりサーバー」を作る。オフィスサーバーの分野においても、同社は長らくこのこだわりを突き通し、とがったサーバー製品を次々と提供してきたわけだ。そしてこのこだわりは、2011年6月に発表された新製品にも着実に反映されている。

 

省電力を追求した1ソケットのスリムサーバーのExpress5800/GT110d-S

  NECの新オフィスサーバーは、中堅・中小企業に最適な1ソケットのエントリモデル5機種になる。小型筐体にサーバーとして相応のスペックを詰め込みつつ、「導入」「運用」「空調」の3つの観点で徹底的な「エコ」を追求した。特にオフィスでの空調節電を実現するために、従来に比べて5℃高い40℃での動作環境温度を保証したのが大きなトピックとなる。また、仮想化によるサーバー集約を前提にCPU、メモリ、HDDなどの基本性能を充実させたのも特徴として挙げられる。さらに省電力の運用が現場で容易に行なえるよう設定・運用ツールも強化された。

 

 次回は省エネや仮想化対応の強化を推し進めたNECの最新オフィスサーバーについて探っていく。

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事