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山谷剛史の「中国IT小話」 第97回

検閲厳しく品質がイマイチな中国地図サイト事情

2011年05月31日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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お国柄が反映された中国版GoogleMap

中国版GoogleMapの沖ノ鳥島(左)と尖閣諸島(右)

 中国限定のGoogleMap中国サーバー版を立ち上げると、中国のお国柄が反映されたGoogleMapとなっていることが確認できる。「尖閣諸島」は「魚釣島」などと呼ばれ、またベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾と領有権を争っている「南沙諸島(スプラトリー諸島)」などは「南沙諸島まで中国のもの!」という主張が前面に見える地図となっている。

中国版GoogleMapで中国の領土をアピール

中国版GoogleMapの竹島

中国版GoogleMapの竹島

 ちなみに「竹島」は日本とも韓国とも表記せず、中国が「島ではなく岩だ」と訴える沖ノ鳥島は「沖鳥礁」と表記、北方4島は日本語(日本語の漢字表記)とロシア語を併記している。世界全体では“日本を除き”中国語表記を併記している。

 日本語のウェブページを検索すると「GoogleMapの尖閣諸島に簡体字中国語で“釣魚群島”等と書かれている」といった内容のページが出てくるが、実は中国からGoogleMapを見ると、同社が中国で地図サービスを展開するために、そもそも尖閣諸島に日本語が表記されていないのである。

地図マニアは楽しめる!? 
おかしな表記の「天地図」

 一方、GoogleEarthに関してはGoogleMapとは違い、天地図リリース後もGoogleEarth公式サイトからダウンロードして利用できる。GoogleEarthがまだ利用できるひとつの要因として天地図の認知度が低い上にまだ未熟であるため、GoogleEarthを延命しているように思う。

天地図はパクリ疑惑がかけられている

天地図はパクリ疑惑がかけられている

 なんたってリリース当初は「中国独自開発のオンライン地図サービス(中国自主研発的網絡地図服務網站)」と自信満々だったのに、衛星写真データがGoogleEarthと完全に一致することが判明。「システムは独自開発でオリジナルだ」と、担当者が必死の弁明をするほど。

 せっかくだからと筆者も天地図を体験。天地図のサイトから2Dの地図が利用できるほか、目玉の3D地図も利用時に指示されたランタイムをインストールすることで利用できる(筆者の日本語Windows 7 64bit版では、文字化けはするがインストールはできる)。

 現在のところ台湾と中国大陸の衛星写真を見ることができ、現データのGoogleEarthと比べて衛星写真の違いを確認できる。衛星写真の精度でいえばGoogleEarthのほうが上だが、パクリ疑惑を払拭すべくオリジナル写真を用意した、ということだろう。

市川の場所が違っていたり、立川が「横田」、大宮がなくて岩槻が「岩」など、表記があちらこちらでおかしい天地図

市川の場所が違っていたり、立川が「横田」、大宮がなくて岩槻が「岩」など、表記があちらこちらでおかしい天地図

細かすぎる情報表示も特徴

 天地図の特徴としては、ビルや店まで2Dの地図のように細かく書いていること。これはこれで便利といえば便利だ。しかしそこで表記される日本地図については、千葉県市川市が埼玉のあたりにあったり、町田が「原町田(東京都)」と書いてあったり、静岡県に「東京都堀内」なる土地があったりと、おろそかというか手抜きとなっている。日本だけでも全国的におかしな点があるので、地図マニアなら楽しめるかもしれない。

北京の愛国心あふれる百科事典の表記

北京の愛国心あふれる百科事典の表記

 地図ではないが、他国地理情報がいい加減なのは中国で人気の百科事典サービス「百度百科」もしかり。百度百科の東京の項目には、東京の行政区画は「江戸川区」と「あきる野市」と「国立市」と「小平市」しかないような表記である。

 一方、北京の説明については「外来人口も含めれば、北京は世界一の1億人超の人口を持つことは“疑いがない”」と、希望的観測を辞典で表記している。

 こうした地理サービスや地理情報になったのは、外国に興味がない人が担当し、作業したためかもしれない。他国も日本の記載同様、手抜きではないだろうか。どうも、中国人的愛郷心・愛国心のベクトルが変な方向に向かった結果のような気がしてならない。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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