細部まで凝ったデザインで、全身を黒で包んだ精悍な外観は、とても目を引くものだ。しかし、使いやすさという点ではもう少し配慮がほしかった。特に操作性に大きく影響するタッチパッドは、パームレストと完全に一体化していてセンサー部にディンプルを設けただけである。キー配置に合わせて本体の左よりにあることや、色がつや消しの黒色ということもあって、タッチパッドの位置がつかみにくく「どこを触ればカーソルが動くのか」がわかりにくいのだ。
また、このデザインでは天板を閉じたときに、液晶ディスプレーとキートップが触れてしまう。それを避けるために、ディスプレーのベゼル上部に設けられたゴムダンパーにも、後付け的な違和感が残った。
既存2D BDの擬似3D化も可能
リアルさが増す240Hzの3D表示
新VAIO F最大の特徴である、3D表示について詳しく見ていこう。新VAIO Fが搭載する3Dステレオ表示機能は、アクティブシャッターのメガネとフレームシーケンシャル方式の3D表示機能「NVIDIA 3D Vision」をベースとしたものだ。しかし、そこは3Dに力を入れるソニーのこと、独自技術で3D表示の品質を大きく変えている。
一般的な3D Vision対応ディスプレーでは、左右の視野を120Hz駆動(毎秒120コマ表示)で切り替えながら表示している(左右それぞれは60Hzずつ)。一方、新VAIO Fが採用した液晶パネルは世界最高水準の応答速度を持つもので、240Hz駆動が可能である。GPUに搭載したGeForce GT 540Mが生成する秒120コマの映像の間に、1コマずつ黒画面を挿入すると同時にLEDバックライトの輝度を制御。これにより、左目画像→黒画面→右目画像→黒画像→左目画像といった順で映像が表示されるため、残像によるクロストークを低減した。
その効果は、特にBlu-rayなどのHD映像を3D表示したときに顕著だ。輪郭がくっきりとしているため、自然風景などでは空気感まで再現され、リアルさが著しく向上していた。
ちなみに付属する3Dメガネもソニー独自の、同社の液晶テレビ「ブラビア」用と同じものとなっている。3D Visionでは、液晶シャッター駆動にUSB充電式のバッテリーを用いていたが、新VAIO Fではボタン電池駆動となっている。デザイン面でも洗練されたといえる。
3D表示機能は、独自のランチャーソフト「VAIO Gate」内にある「3D world」に集約されている。ここにはBlu-ray 3D再生対応の「WinDVD BD」のほか、「NVIDIA 3D Vision Video Player」などがある。3D Vision Video Playerには、既存の2D映像を解析して擬似3D化する「3Dモノスコピック」機能があり、表示の奥行き感の調整も可能だ。
WinDVD BDにも、2D DVDを擬似3D表示化する機能がある(奥行き感は自動で最適化)。これらの2D・3D表示切替は、キーボード右上にある3Dボタンを押すだけでよく、このあたりも民生機として考えられているといえる。
さらに、既存の2D BDを擬似3D化する機能も備えている。この3D化アルゴリズムでは色要素も判定しているようで、映像の奥行き感に関係なく青が奥、赤い物体が前に飛び出して見えるというクセがあるものの、立体感は意外にきちんと表現されている。
さすがに最初から3D化されているBlu-ray 3Dのようにはいかない。だが、パソコンで既存BDコンテンツの擬似3D化が可能なことには、正直驚いた。
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