2010年7月からスタートした「KDDIまとめてオフィス」は、固定・ケータイの通信サービスはもちろん、通信機器・OA機器の提供、設定、メンテナンス、サポートまでをトータルに提供するユニークなサービスだ。順調に会員数を伸ばすサービスの現状について、KDDI ソリューション事業企画本部 サービス企画部 1グループリーダー 上原三典氏に聞いた。
電話を使うと、オフィス用紙が買える
KDDIまとめてオフィスを簡単に説明すると、オフィスのIT環境の面倒をまるごと見てくれる会員制プログラム。ケータイや通信などKDDIのサービスを2つ以上利用し、上記の請求書を1つにまとめている契約者に提供される年会費・入会費無料のサービスである。なかなかイメージできない読者も多いと思うので、具体的なサービスについてKDDIの上原氏に聞いてみよう。
まず業務に必要な通信機器やOA機器をまとめてコーディネイトしてくれる。「もともとやっていたビジネスフォンや複合機のほか、パソコンまで提供できるようになりました。最近では、コピー用紙やUSBメモリ、メディアなどのオフィスサプライも販売しています」(上原氏)ということで、オフィスサプライは毎月100点ずつ増やしていく予定だ。
また、今までサービスやメーカーによって異なっていた窓口が完全に一本化されるほか、通信料金や機器の請求書も一括で提供される。これに関しては、窓口が異なっていたり、請求がバラバラだったりといった従来の顧客の不満を解消するという面もあるという。「今まで問い合わせに関しては、一般問い合わせ、故障受け付け、ケータイ、IT機器など4つも窓口があったので、これらを一本化しました。また、固定電話やケータイのほか、IT機器のリース代行しておりますので、これらの請求もまとめて出せるようになりました」(上原氏)。
さらに、PCのサポートも提供している。こちらは有料サービスだが、「1事業者ごと3045円/月で年間の電話サポートと1回分の駆けつけサポートを付けました」(上原氏)とのこと。今後は延長保証やPCの買い取り、PC資産の延命サービス、ウイルス駆除なども提供していく予定だ。
サポート内容 | ||
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パソコン設置設定 | ユーザーアカウントの追加 | メモリー増設 |
内蔵ボード・カードの設定 | 内蔵・外付けドライブ増設の設定 | パソコンのTV機能設定 |
TVチューナー&キャプチャ機器設定 | 有線LANアダプタ取り付け | パソコンの梱包 |
ネットワーク共有設定 | インターネット設定 | オンラインサインアップ |
メールアカウントの追加 | Windows/MacOSリカバリ | Windows/MacOSアップグレード |
Windows/MacOS Update | リカバリディスク作成 | データバックアップ |
データ移行 | ルータ設定 | IP電話設定 |
ひかり電話設定 | PLC設定 | 多機能型プリンタ設定 |
プリンタサーバー設定 | スキャナー設定 | デジカメ・デジタルビデオカメラ設定 |
Webカメラ設定 | ワイヤレスヘッドセット設定 | その他周辺機器設定 |
ドライバアップグレード | ファームウェアアップグレード | ウイルススキャン |
ウイルス駆除 | ウイルス対策 | ウイルス対策説明 |
各種ソフトウェア設定 | 各種ソフトインストール | Windows/MacOSインストール |
各種ソフトアンインストール | 家電テレビのインターネット設定 | 家電テレビと内蔵HDDレコーダ設定 |
家電テレビのネットワーク設定 | 家庭用ゲーム機のネットワーク設定 | 基本操作指導 |
特別技術料 | 購買代行 | ラック・椅子組立 |
そして、もっとも特徴となるのが、利用料金に応じてポイントが貯まるという点だ。ポイントが付与されるサービスは、KDDIの法人向けサービスの全般に拡がっており、溜まったポイントは、auのケータイの購入やオプション品の購入はもちろん、通信機器・OA機器の購入、オフィスサプライの購入、PCサポートサービスなどに幅広く利用できる。つまり、ケータイを使って溜まったポイントで、オフィスで使うコピー用紙が買えるというわけだ。
複合機を入れたら内装まで取れた!
通信事業者が提供する法人向けサービスでありながら、カウネットやアスクルのような法人向けコマース機能を含みつつ、システム構築や運用までSIerっぽいサービスまで提供。なおかつポイントが貯まって、オフィスサプライはじめ、いろいろ使えるというこの摩訶不思議なビジネスは、どのようにして生まれたのか? これにはKDDIがここ5年で行なってきた組織変更や顧客満足度向上の取り組みが密接に関わっている。
もともと同社は営業チームが顧客に直接足を運んでヒアリングした内容を、ソリューションとして仕立てるという取り組みを2004年頃から本格的に行なってきた。当初は1000名以上の会社をカバーする程度しか人員が割けなかったが、2007年に子会社のKDDIネットワークシステムとの合併。営業力が大幅に強化され、300名以上の会社までカバーできるようになったという。2009年にはケータイと固定電話の事業が統合され、営業体制もさらに整備された。しかし、今までのサービスでは100名以下の企業にフィットしなかった。そもそも内線を使っていないユーザーに、外線と内線の統合を提案しても意味がない。こうしたことから、中小企業向けのサービスとしてKDDIの幹部が頭をひねって考えたのが、ITの導入から運用まで提供するというまとめてオフィスの原型だという。
では、そのコンセプトは受けるのか? 同社が全国から営業マンを集め、テストマーケティングと調査を行なったところ、まとめた方が喜ばれるというデータが出てきた。「業者からではなく、会社のパソコンを自分で買ってきている社長がほとんど。つまり、提案している人が誰もおらず、たまたま近くにいた人に頼む例も多かったんです。ホームページの更新をできない企業も6割いました」(上原氏)とのこと。こうしたアンケートを受け、KDDIブランドのご用聞きとしてスタートしたのが、KDDIまとめてオフィスというわけだ。
7月に正式に全国展開して以来、9末には3万5000を突破し、順調に会員数を増やしている。「一番多いお声は、やはりポイントです。昨今、ケータイの販売方法が変わり、買い換えのサイクルが長くなっています。その間、ポイントは貯まり続けるのですが、機種変更以外に使うところがなかったのです。KDDIまとめてオフィスでは、さまざまな商品でポイントが利用できます」(上原氏)。法人では通話料金はそこそこだが、台数がまとまって出るため、ポイントの貯まるスピードはかなり速いようだ。
中小企業にとってKDDIという名前は大きい。知らない名前の会社が売り込みをかけるのに比べ、KDDIの営業が行く方が、成約率は2桁(!)違うという。他社の製品を含め、KDDIがまとめて扱うことで、顧客からは安心を得られる。こうした営業スタイルを上原氏は「サザエさんに出てくる三河屋サンのサブちゃん」と表現する。「先日は複合機を導入したら、オフィスの内装まで任せていただけるという話になりました」ということで、顧客の信頼を勝ち得、大きなビジネスになった事例をすでに持っている。
とはいえ、比較するサービスがないため、理解しにくいのも事実。そこで、東京都新宿に先日予約制のショールームをオープンした。ここでは他社製品を組み合わせたさまざまなソリューションをチェックできるという。
