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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第78回

人気サイトなんてなるもんじゃない 医学都市伝説・作者が語る

2010年08月31日 12時00分更新

文● 古田雄介

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「有名になるもんじゃないですね」

―― サイトの反響についてお聞きします。ブレイクしたのはいつごろでしたか?

坂木 2002~2003年頃ですね。それまでは、病院の公式サイト時代も含めて全然アクセスがなかったんです。せっかく書いてるのにそれじゃつまらないからと「ReadMe! JAPAN」に登録したり、一時期は積極的に宣伝しましたね。やはり人気サイトになりたいという気持ちもありまして。その甲斐があって、数ヵ月経った頃からリンクしてくれるサイトがぽちぽち出てきて、メールをもらうことも多くなりました。

―― 実際に人気サイトになってみて、どうでしたか?

坂木 うーん……。まあ、たいして面白いものでもないなと(笑)。多少は知られるようになって記事に対する反響も大きくなったんですが、そのなかでアドバイスをくれたり応援してくれたりする声が7割くらい。残り3割は、もう罵詈雑言なんですね。

 ずっと匿名で医療関係や患者さんの話を書いたりしたわけですけど、そこを「匿名で患者のプライバシーに関わることを書くんじゃねえ」と言われたりました。ただ、そこは一番気を遣っているところなんですけど、患者さんの症例やエピソードを書く場合は、2~3人の患者さんの話をパターン化して個人と結びつかないようにしつつ、現場のリアリティも出るように工夫しているつもりなんです。

 でも、そういう苦労なんて伝わらないから、ものすごい勢いで罵倒してくる人が出てくると。まあサイトをやっていて、そういう不愉快さが増えてしまったというわけです。

HTML時代のコンテンツは「旧サイト」コーナーに集約。このなかの「medical urbanlegend/医学都市伝説」ページに医学関連の都市伝説をまとめている

―― 色々なサイトをみていると、そうなったときに閉鎖を選ぶ人も多いですね。

サイトの人気がピークに達した時期、イーストプレスからサイトをまとめた書籍「死体洗いのアルバイト――病院の怪しい噂と伝説」を発行した。現在も購入可能だが、坂木氏は「個人サイトで書く方が自由だから、もう書籍化する気はないです」と話していた

坂木 でしょうね。私も「有名になるもんじゃないな」と思いましたし(笑)。それでRaedMe! JAPANの登録はすぐ外しました。人気サイトなんて目指さずに、もっと地道にやっていれば良かったなんて今でも思います。

 ただ、それでサイトを閉鎖とはなりませんでした。何でしょう。当時は自分にとって、ほかに楽しいモノがなかったということですかね。それと同時に、自分に対する意地で毎日更新を続けようと決意したことも大きかったです。それで2005年頃までは、どんな短い文章でもとにかく更新していました。毎日何かしら書いて、しばらく後にそこから膨らみそうなネタを選んで。色々な情報を混ぜ込みながら長文にしていくという感じで。

―― 不愉快さに対抗しうる良いこともありましたか?

坂木 やっぱり、読者から感謝のコメントやメールをもらったときは嬉しいですね。応援やアドバイスを送ってくれる読者にも、ちょっと見当違いというか、真意が伝わってないかなと思うものも多いんです。でも、その中から本当に実のある指摘や、私の記事からの考察などをもらったときは良かったなと思います。あと、自分なりに良い記事が書けたかなと思うときも、充実感がありますね。

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