このページの本文へ

古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第78回

人気サイトなんてなるもんじゃない 医学都市伝説・作者が語る

2010年08月31日 12時00分更新

文● 古田雄介

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

サイト運営のきっかけは「院内が暇だったから」?

―― サイトを始めたきっかけを教えてください。

坂木 1999年夏頃、当時勤めていた病院の広報ページ作りの担当になったんですよ。それで最初は普通に病院案内や行事のお知らせなどを載せていたんですが、それだけではやっているほうも面白くないと。何かこう、コラムみたいなものを盛り込みたいなということで、医療にまつわるおもしろ話を紹介するようになりました。それがきっかけですね。

 それから半年後に勤務先が別の病院に移ったのですが、今までのコンテンツを捨てるのはもったいないということで、「じゃあ個人のホームページでも立ち上げるか」と始めたわけです。

坂木氏。ネット関連は手探りだったが、ハード系には昔から強かった。「小学生の頃からアマチュア無線をやっていまして、真空管だったらラジオもオーディオも自分で設計して作れます」という。職場にある自分用PCも自作したものだった

―― その当時から医学系の都市伝説という体裁だったわけですね。

坂木 そうですね。かねてから都市伝説に興味があったんですよ。「なぜ都市伝説なのか」というページで詳しく語っていますが、都市伝説はよく考えれば嘘や誇張とわかることでもまことしやかに語られるという、非合理的なところがあります。しかし、それ以上にエンタテインメントとして完成度が高くて魅力があるから広まっていくと思うんですよ。ただ、話の非合理さという点に関しては、私の専門である精神科で立ち会う妄想の症状も共通しています。そういう小難しい見方と、単純な個人的な好奇心という面があって。

「なぜ都市伝説なのか」。3部構成でやや長いが、坂木氏の「精神分析と都市伝説」という立場からの主張が分かりやすく、とても面白い

―― なるほど。アウトプットできる場ができて、そうした関心事が開花したという感じですね。サイト運営の指名は、やはり坂木さんがITに詳しかったからですか?

坂木 いや、一番暇だったから指名されました(笑)。そのときは本当に何も知識がなかったんですよ。一応パソコンはワープロとして使うくらいしていましたが、HTML言語というのも知らないくらいで。とにかく紆余曲折して何とか作ったという感じでしたね。

 自分のサイトを運営する頃になっても、HTMLを書き出すソフトでしっくりくるものがなくて、わからないことの連続でしたよ。それであるときたまたまCMSというものを知って、Movable Typeを導入してみたというわけです。まだ日本語マニュアルもない時期でしたが、失敗してもあまり気にしない性格なので、とりあえず試してみようという感じで入れてみました。あとは、英語サイトでよく情報収集しているから、そういうニュースに割と早く触れられるというのはあるかもしれません。

―― 情報収集はどれくらいの頻度で行なっているんですか?

坂木 雑誌でいえば、英米の総合医療雑誌と精神医療系雑誌をそれぞれ1ヵ月に2冊読んでいます。あと、暇なときはだいたい英語サイトを見ています。仕事柄、医療系の総合ニュースサイトのようなものをよく見ますが、この業界のものはやはり英語のほうが早くて深いんです。

 日本語の医学情報も海外とのタイムラグはかなり少なくなっていますが、速報的なものは二行くらいしか文がなかったりするんですね。そのニュースについて詳しく知ろうとすると、結局英語のページを見ないと分からないという感じです。そういう過程でIT系の向こうの情報も入ってきて、ブログやツイッターなどの情報も早めに仕入れることができたわけです。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン