必要ないからといって置かないわけにはいかないテレビ
そんなわけで若者にとって機能だけで言えば、「プレイステーション 3」や「Wii」などを所有する熱烈なコンシューマーゲームファン以外は、テレビは無用の長物以外の何者でもない。
ただし中国の住宅の見取り図を見るとわかるが、玄関のドアを開ければ通路なしに、即リビングルームとなる。リビングルームでは自分の格を表現する必要があることから、ステータスにあったテレビとソファを置いて、お客様をお迎えする必要がある。テレビが要らないからといって、置かないわけにはいかないのだ。
テレビが生活必需品でなければ、それに付帯するDVDプレーヤー(CBHDやEVD含む)も不要だ。確かに住宅街のどこにでもある海賊版DVD屋で好きなコンテンツをタダ同然で買うことはできるが、PCで再生すればいい。
中国の若者に言わせれば「タダ同然ではあるが、ネットでダウンロードしたほうがさらに安い」。CDだってPCひとつあればいい。オーディオシステムもPCが欲しい人に行き渡った今、オーディオファンやオーディオセットを居間に揃えてステータスを表現したい人以外には不要だ。
日本のマンションと異なり、中国の集合住宅はプライバシーを配慮していない設計なのか、向かいの家の中が筒抜けで見えてしまう物件ばかり。筆者の中国の仕事場からも、向かいの棟の部屋が見えてしまうし、その逆もまたしかりで見られている。
筆者の仕事場(家)はその都市では上のクラスのマンションではあるが、その向かいの棟の家々の居間の多くで、古い大画面ブラウン管テレビが液晶テレビらに置き換えられずに稼働しているのが見える。
また中国人の知人宅を訪れても、中高年が集う居間は古い大画面ブラウン管テレビが置かれている一方で、若き知人の部屋のみでPCを軸に、ITガジェットがいろいろあるといった具合だ。
ところで、最近中国でもエコがよく叫ばれるようになったが、スーパーでもマンガン電池やアルカリ電池ばかりが売られている。単3、単4電池が必要なモノを考えるに、ガスレンジと時計とリモコン、さらに子供がいればおもちゃくらいしか使われるケースがない。
電動歯ブラシやWiiを持っている人は割合で言えば非常に少ないし、デジカメは多くの製品が専用バッテリーになっている。懐中電灯ですら、最近は専用バッテリーを内蔵し、コンセントに直づけして充電するタイプが売れている。
テレビとDVDプレーヤーが居間に置かれていても、使うのはハイテクに疎い中高年。テレビやプレーヤー類を使わない若者は、使わないリモコン用の充電池を積極的に買おうとはしない。充電池の普及がイマイチなのにはそのような訳がある。
日本と中国の住宅の造りの違いから来る、IT製品の普及の違いを考えてみた。庶民の暮らしは日中の違い同様に、各国それぞれで違うだろう。日本での生活感覚を基に、中国(外国)での新製品発表や統計紹介を分析したところで、習慣を知らぬゆえの的外れな予想となることもままある。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
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