iPadは「Apple II」以来の革命
山脇 知り合いがiPadでモテたって話もあります。
── モテたって何ですか(笑)。
山脇 米国版のiPadをある人に買ってきたんですよ。そうしたら「山脇さん、もうすごく感謝してるよ」というんで、何かと聞いてみたら飲み会で女の子にモテまくりだったという(笑)。「俺に勝ったら1杯おごってやるよ」ってエアホッケーのゲームをしかけて、わざと負ける。勝負事になった瞬間、さっきまでと違う顔が見られて、ちょっと楽しいという。
── それはiPhoneでも、今までのパソコンでも、できなかったことですね。
山脇 iPhoneだと画面が小さいので、距離が近過ぎるんですよね。iPadの適度な距離感だから180度のコミュニケーションが成り立つんです。
あとお店の呼び込みにも便利だという。「いい席ご用意できますよ」っていうのでは分かりにくいけど、それをiPadの画面で見せれば、ここで「予約」ボタンを押してすぐに確保できますよ……と案内できる。このリアルタイムコミュニケーションはスゴい。
── ネットワークにつなげるiPadなら、実現可能ですね。
松村 お店の呼び込みだけじゃなくて、例えば、アーティストや画家が、iPadに作品を入れてパトロンに直接渡すって使い方も考えられます。だって、4万8800円からって価格は、考え方によっては安いものですよ。
── ちょっと前の高価なデジタルフォトフレームって、それくらいしましたよね。結婚式とか、記念品としてフォトフレームごと贈るってやり方は、普通にありますし。
山脇 500万円ぐらいの仕事を取るのに、プレゼンで5万円程度の出費だったらアリですよね。100分の1のコストなので。プレゼンのときに「はい」ってiPadを出されて「これ、別に返さなくていいですよ」っていわれたらすごく響く。
韓国ではヒュンダイが自動車のマニュアルをiPadで見られるようにすると発表してますよね。車だと数百万円で売るからできることです。
── そんな使い方を聞いて、iPadの便利さが何となく見えてきました。私はiPadをパーソナルビューアーやパーソナルコミュニケーションツールの延長としてとらえていたんですよね。iPod touchが単に大きくなっただけで、使い方まで同じだと思い込んでいた。iPadって割とすごい存在なのかも。
山脇 人生で生きてるうちに、「うわっ、これは見たことない!」ってものに出会う機会って、そんなにないと思うんです。iPadは、そのうちのひとつだと思います。
松村 向こう20年で最後かもしれません。
山脇 よく話してるんですけど、おそらくコンピューターという領域で、iPadのような「何これ!?」という新しいものはそうそう出てこないと思う。
iPadは何年も前から「iPhoneの画面が大きくなれば便利なのにな」って要望があって、それが爆発寸前のタイミングで出てきた。でも、コンピューティングの中で次に出てくるものって、全然思い付かない。あとは、性能のよくなったiPhoneやiPadくらいじゃないでしょうか。なんとかのチップが入ったとか、一般の人にあまり見えない部分の差異ですよね。
このタイミングでiPadに出会えるってことは、こういうガジェットが好きな人であれば、たまらないことだと思うんです。俺は「Apple II」や「Macintosh 128K」をリアルタイムで経験していないので語れませんが、iPadはそれと同じくらいのインパクトを持ったものとして、後世で語れると思います。
これは今から5年ぐらい前に出た「Origami」では、なかった感動です。同じタッチデバイスで私も買ったんですが、全然感動がなかった。
── 私もタブレットPCの可能性を感じていて、Windows機をいくつも買っていたんですよ(そういえばこんな座談会にも出た)。でも、iPadはそれらと違うというのは分かります。
山脇 結局、できることが多すぎるんです。「あれができない」「これができない」って言われて、全部の機能を盛り込んだら、結局、使いにくくなってしまう。
Windowsのタッチ端末は、既存のコンピューターをそのまま触れるようにしただけじゃないですか。今までキーボードとマウスでできていたことをタッチでしましょうといっても、使っていくうちにマウスやキーボードで操作したほうが早いって気付かれてしまう。
だからiPadのような割り切りってすごい重要だなと思うんです。割り切りって、前で触れた集中化にもつながりますよね。余計なことをさせないっていうのは重要です。
── なるほど。シンプルだからいい。それが、iPadの本質なんだなぁ。
山脇 iPadって、別になくても困らないんですよ。盗まれたといいましたが、95%はほかの端末で代替が効くので問題ない。でも、そのiPadでしかできない残りの5%のエクスペリエンスがすごく大きい。
私は固まったライフスタイルの上に、ガジェットを入れるという主義なので、これから先、iPadを持ち歩くことはそう多くないと思います。じゃあどこで使うかといえば、アップルが狙っている通り圧倒的にリビングなんですよね。「何でもできる」っていうのはまったく期待してないので、あとは仕事だったらプレゼンですかね。出先でTwitterっていったら、iPhoneを使うと思います。
松村 うん、そうですよね。
山脇 iPadじゃないと実現できなかったところはすごく少ないんですが、ほかの端末ではなかなか難しい。じゃあ、その5%を埋めるためなら、4万8800円でも安いんじゃないかって。iPadはそんな気にさせてくれる端末なんですよね。

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