めっきり寒くなり始めた11月1日の深夜0時、私は新宿西口の家電量販店前のシャッター前に立っていた。革新的な携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル go」(PSP go)があと数時間で発売される。もし行列ができていたらどうしよう! と勢い込んで向かったものの、行列などどこにもなかったのである。
これでは「並ぶ」というより店の前にただ1人で徹夜で立っている、というだけになってしまう。あまりにも寂しいので、仕方なく終電で帰り、翌日改めて出向いて購入した。
まあ、よく考えてみると行列ができないのも致し方ない部分もある。発売される前から、PSP goには暗雲が垂れ込めていた気がする。
PSP goは従来の「プレイステーション・ポータブル」(PSP)が搭載していたUMDドライブを省略し、それによって大幅な小型化を実現したモデルだ。ゲームはすべてネット経由での配信となり、従来UMDで販売されていたゲームをプレイすることはできない。それでは従来のPSPを使っていたユーザーが購入済みのゲームをPSP goで遊べないということで、移行プログラムの提供が検討されていた。しかし結果的には権利処理の問題から提供できないということになってしまった。
しかも、ソニー・コンピュータエンタテインメントが運営する「PlayStation@Store」で販売されるPSP用ゲームのタイトルも多くはない。同社が配布している「PlayStation Official Catalogue」では、PSP用タイトルが39本紹介されているが、その中でPlayStation@Storeでも販売されるのは17本で、半分にも満たない。つまりPSP用のソフトであっても、それがPlayStation@Storeで販売されない限りPSP goではプレイできないわけだ。
さらに逆風になったと思われるのが、既存モデルである「PSP-3000」の値下げである。従来1万9800円だったモデルが1万6800円と3000円の値下げが行なわれ、2万6800円のPSP goよりも1万円も安い。これだけ安く入手することができて、UMD版しか発売されないゲームもプレイできるということになれば、多少大きくてもPSP-3000をユーザーが選んでも不思議ではない。

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