シングルGPUとしては最高性能を実現
3DMark Vantage
早速ベンチマークスコアをチェックしていこう。
グラフ1は、「3DMark Vantage」の総合スコアである。3DMark Vantageには、旧AGEIAが開発した物理演算ライブラリ「PhysX」を利用するテストが含まれているが、NVIDIAのGeForce 8/9/200シリーズには、PhysXをGPUで高速に処理するためのPhysXドライバが提供されている。それに対して、Radeon HD系GPUにはPhysXドライバが用意されておらず、CPUで処理するしかないため、3DMark Vantageのスコアは低くなりがちだ。
しかし、Radeon HD 5870は、Radeon HD 4890を大きく上回るスコアをたたき出していることはもちろん、PhysXをサポートしたGeForce GTX 275のスコアをも上回っており、負荷が高くなるほど、その差は広がっている。さすがに、デュアルGPU構成のGeForce GTX 295には及ばないが、PhysXをサポートしていないにもかかわらず、このスコアは驚異的だ。一番負荷の高いExtremeでは、Radeon HD 4890の1.63倍ものスコアを出している。
次に、3DMark VantageのFeature Testの結果を見ていこう。結果はすべて「Performance」時のものだ。
Feature Test1(グラフ2)は、Texure Fillと呼ばれるテストで、小さいテクスチャを重ね描きし、テクスチャ転送時のフィルレートを計測する。その結果は、Radeon HD 5870の圧勝である。Radeon HD 4890の2倍近いスコアを出しており、デュアルGPUのGeForce GTX 295も大きく上回っている。GDDR5採用による、高いメモリ帯域が功を奏しているのであろう。
Feature Test2(グラフ3)は、Color Fillと呼ばれ、カラーピクセルを色を変えながら塗りつぶしていくテストだ。こちらはよりシンプルなテストで、ビデオメモリへの書き込み速度に左右される。Radeon HD 5870のスコアは、デュアルGPUのGeForce GTX 295には及ばないが、Radeon HD 4890やGeForce GTX 275より上回っている。
Feature Test3(グラフ4)は、Parallax Occlusion Mappingと呼ばれるバンプマッピングをさらに進化させた複雑な凹凸を実現するマッピングを行うテストであり、ピクセルシェーダにかかる負荷は大きい。このテストもRadeon HD 5870は、Radeon HD 4890やGeForce GTX 275を大きく上回り、GeForce GTX 295に迫るスコアを出している。Radeon HD 4890からの性能向上率は2倍を超えており、Radeon HD 5870は旧世代の2倍のパフォーマンスを同じ価格帯で実現したという売り文句にも納得だ。
Feature Test4(グラフ5)は、GPU Clothと呼ばれるテストで、GPUで、布(旗)が風にはためく様子の物理シミュレーションを行なわせるものだ。主にバーテックスシェーダの性能を見ることができる。結果は、GeForce GTX 275とRadeon HD 5870がやや優れているが、それほど大きな差は付いていない。デュアルGPUのGeForce GTX 295が、GeForce GTX 275よりも低くなっているのが気になるが、次のテストも同じ傾向だったため、デュアルGPUでの並列動作がうまく行われていないのであろう。
Feature Test5(グラフ6)は、GPU Particlesと呼ばれるテストで、数十万もの微粒子(パーティクル)を風に乗せて流し、物体の凹凸状態を可視化するものだ。バーテックスシェーダとジオメトリシェーダのパフォーマンスが反映される。こちらは、Radeon HD 5870がトップで、GeForce勢の結果はふるわない。
最後のFeature Test6(グラフ7)は、Perlin Noiseと呼ばれるテストで、演算によって3つの異なる周波数から生成されるノイズをRGBに割り当てて表示するものだ。ピクセルシェーダの演算性能が効いてくるテストである。このテストでは、Radeon HD 5870が非常に高いスコアを出している。Radeon HD 4890との差は2.45倍にもなり、GeForce GTX 295と比べても2倍以上のスコアだ。Radeon HD 5870は、1600基ものストリーミングプロセッサを搭載したことで、非常に高い演算性能を実現していることがわかる。
(次ページへ続く)
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