2009年9月8日に発表されたインテルのデスクトップ向けCPU「Core i5-750」(以下i5-750)は、新しいインテルの“Core i”ブランド戦略発表後の第1弾となるCPUだ。インテルは現在複数のブランドを展開しているが、以前発表されたように、今後は Core iシリーズに集約(あるいはリネーム)していくという。Core i5の登場により残るは「Core i3」だけとなったが、これも遠くない将来に発表される見込みだ。
i5-750と同時に発表されたのが「Core i7-860」(以下、i7-860)および「Core i7-870」(以下、i7-870)の2つだが、Core i7というネーミングから従来のCore i7-900シリーズとの互換性が連想されるが、残念ながら物理的な互換性はない。i5-750、i7-860、i7-870の3つはいずれも、新しいCPUパッケージ「LGA1156」を採用し、まったく新しいプラットフォームを構築することになる。
またCore i7-900シリーズと同様にDDR3 SDRAMメモリインターフェイスも内蔵されている。Core i7-900シリーズとの相違は、メモリクロックがDDR3-1333MHz(i7-900シリーズは1066MHz)に向上し、メモリチャネルは2ch(デュアルチャネル)となった点だ。もっともi7-900シリーズ対応マザーボードはDDR3-1333MHzに対応しているものがほとんどなので、メモリ周りの違いはアクセスチャネル数の違いとなる。
組み合わせられるチップセット「Intel P55 Express」(以下、P55)も同時に発表された。こちらはLGA1156専用となる。従来のチップセットが流用できないのはLGA 1156となったことに関係している。それはCore i5-750およびCore i7-860/870に、PCI Express 2.0 x16インターフェイスが内蔵されたためだ。このインターフェイスはx8+x8としても使用でき、ATI CrossFireXをサポートする。またNVIDIA SLIもサポートされるが、マザーボードごとにNVIDIAのライセンスが必要となるため、対応はマザーボードメーカー次第だ。
P55の話をもう少ししておこう。X58ではSATAを接続するためにサウスブリッジとなるICH10Rを必要としたが、P55は自身にICH相当の機能を取り込み、その結果1チップでマザーボードの主要な機能を提供することができるようになった。またX58ではIOHと呼ばれていたが、P55ではPlatform Controller Hub「PCH」と名づけられたことも覚えておきたい。
ここまでのことをまとめると、次のようになる
・CPUソケットがLGA 1156になった
・i7-860/870はi7-900シリーズと互換性がない
・メモリインターフェイスが内蔵された
・使用できるメモリはDDR3 1333(PC3-10600)
・メモリチャネルは2ch
・PCI Express 2.0 x16インターフェイスが内蔵された
・CrossFireXをサポート
・対応チップセットは現時点でP55のみ
・NVIDIA SLIはマザーボードごとに異なる
現在のCPU/プラットフォームを比較したのが次の表だ。
プラットフォームの比較 | |||
---|---|---|---|
CPU | Core i5-750 Core i7-860 Core i7-870 |
Core i7-900 Series |
Core 2 Series |
CPUソケット | LGA 1156 | LGA 1366 | LGA 775 |
対応チップセット | P55 Express | X58 Express | P45 Express |
メモリインターフェイス | CPUに内蔵 | CPUに内蔵 | チップセットに内蔵 |
PCI Express I/F | CPUに内蔵 | チップセットに内蔵 | チップセットに内蔵 |
PCI Express Graphics | 16レーン x16 + x0 x8 + x8 |
32レーン x16 + x16 + x0 x16 + x8 + x8 |
チップセットに依存 |
CrossFireX サポート | ○ | ○ | チップセットに依存 |
SLI サポート | ○ | ○ | チップセットに依存 |
SATA2 | 6ポート | 6ポート(ICH10) | 6ポート(ICH10) |
RAIDサポート | ○ | ICH10Rにて対応 | チップセットに依存 |
では、もう少しCPUについて解説しておこう。Core i5-750、i7-860/870はコードネーム「Lynnfield」(リンフィールド)と呼ばれていたCPUで、メモリインターフェイスとPCI Express 2.0 x16インターフェイスを内蔵しているのは前述したとおり。
いずれもネイティブなクアッドコアで、L2キャッシュ容量が256KB×4、L3キャッシュ容量は8MBと、Core i7-900シリーズとスペックは共通だ。ただしCore i5-750はHyper-Threadingに非対応。i7-860/870はHyper-Threading対応で、論理CPU数は8となる。
またCore i7-900シリーズと異なる点として、Intel Turbo Boost機能がある。基本的にCore i7-900シリーズの場合、Intel Turbo Boostを有効にすると3コアの倍率が1つ上がり、残る1コアの倍率が2つ上がる。これを1-1-1-2と表現するが、Core i5-750の場合は1-1-4-4となり2.66GHzが、2.8/2.8/3.2/3.2GHzとなる。これに対し、Core i7-860は1-1-4-5、2.8GHzが2.93/2.93/3.33/3.46GHzと大幅にアップする。そして、Core i7-870は2-2-4-5となり、2.93GHzが3.2/3.2/3.46/3.6GHzとなる。いずれも常時最高倍率にまで高められるというわけではなく、あくまでもTDPの範囲、Core i5-750の場合は95Wに収まる中でという条件がつく。よってコアを満遍なく使い、負荷の高いアプリケーションを実行するようなケースでは、あまりCPUクロックは上がらない場合もあるだろう。
CPUの比較 | |||||
---|---|---|---|---|---|
CPU | Core i7-860 | Core i7-870 | Core i5-750 | Core i7-900 Series |
Core 2 Quad Q9550 |
CPUソケット | LGA 1156 | LGA 1156 | LGA 1156 | LGA 1366 | LGA 775 |
CPUクロック | 2.8GHz | 2.93GHz | 2.66GHz | 2.66~3.33GHz | 2.83GHz |
Intel Turbo Boost | ○ | ○ | ○ | ○ | - |
Boost時の加算クロック倍率 | 1-1-4-5 | 2-2-4-5 | 1-1-4-4 | 1-1-1-2 | - |
物理コア数 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 |
Hyper-Threading | ○ | ○ | - | ○ | - |
論理CPU数 | 8 | 8 | 4 | 8 | 4 |
L2キャッシュ容量 | 256KB×4 | 256KB×4 | 256KB×4 | 256KB×4 | 6MB×2 |
L3キャッシュ容量 | 8MB | 8MB | 8MB | 8MB | - |
メモリ I/F | 内蔵 | 内蔵 | 内蔵 | 内蔵 | - |
メモリチャネル | 2ch | 2ch | 2ch | 3ch | チップセットに依存 |
PCI Express I/F | 内蔵 | 内蔵 | 内蔵 | - | - |
TDP | 95W | 95W | 95W | 130W | 95W |
(次ページへ続く)
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