毎年何種類もの新製品が世に送り出されるプロセッサーの世界。細かい違いや分かりにくい製品変更も多く、「このCPUってどんな特徴があるんだっけ?」なんて迷うことも頻繁だ。今回より始まる、テクニカルライター大原雄介氏による本連載では、CPUやGPUなどコンピューターの中核となるプロセッサーのロードマップを軸に、その変遷を解説していく。第1回はパソコン向けCPUの中心である、インテルのデスクトップ向けCPUのロードマップについて語ろう。
さかのぼればPentium Proに行き着くCore 2シリーズ
もともとのCore 2シリーズの系譜をたどってゆくと、1995年にインテルが発表したCPU「Pentium Pro」まで遡る。このPentium Proをベースに16bit処理を強化し、構造を変更したのが「Pentium II」、それにマルチメディア拡張命令「SSE」を搭載したり、オンダイ(CPUと同じ半導体ダイ上にあること)2次キャッシュメモリーを搭載したのが「Pentium III」。このPentium IIIのノートパソコン版が、Core 2の元祖となる。
もっとも、元祖といっても「設計の出発点」になったという程度の意味合いでしかない。Pentium IIIの内部構造をすべてにわたって見直し、ほぼ新規作成と変わらないほどの手間を掛けて作られたのがコード名「Banias」と呼ばれるCPU「Pentium M」。このPentium Mをデュアルコア化したのが、コード名「Yonah」と呼ばれる「Core Duo」、さらにCore Duoの命令ユニットを強化し、拡張命令「SSSE3」を搭載、Pentium 4には実装されていた64bit拡張命令「EM64T」や仮想化機能「VT」などの拡張機能を搭載したのが、今の「Core 2 Duo」という事になる。
このあたりの変遷を延々と語っているとキリがないので割愛するが、2006年にCore 2という新しいブランド名で登場したこの新CPUは、性能の高さと消費電力の少なさで、一気にインテルのCPUシェア回復に向けて驀進することになった。
というのも、それまでインテルでメインストリーム向けに投入されていた、NetBurstアーキテクチャーを搭載した「Pentium 4」や「Pentium D」といった製品は、とにかく消費電力が多い上に、性能面でもAMDの「Athlon 64」系列に遅れをとっていた。ゆえに、OEM向けにもAthlon 64系列が次第に食い込んできていた。この状況を押しとどめるべく、インテルはCore 2シリーズで積極的なラインナップ展開を開始する。
Core 2シリーズの変遷を整理してみよう
まず2006年7月に発表されたのが、コード名「Melom」「Conroe」「Woodcrest」という製品群である。Melomはモバイル(ノート)向けで、Conroeがデスクトップ、Woodcrestがサーバー向けとなっているが、これらは単にプラットフォームが異なるだけで、内部は同一。そのため以下はConroeで統一して話を進める。
このConroeは、登場当時メインストリーム向けに1.86GHz~2.66GHzまでラインナップされる。それとともに、2次キャッシュを半分無効(4MB→2MB)とし、システムバスクロック(FSB)も800MHzに落とした低価格版「Allendale」が、やはり同じCore 2 Duoのブランドで発売される。こちらはメインストリームからバリューセグメントのちょい上あたりを狙った製品だ。さらに、Conroeの中でも動作周波数を上げやすい製品を、「Core 2 Extreme」というハイエンドCPU扱いでリリースした。
翌2007年1月に、今度はCore 2 Duoのコア2つ(CPUコア4個分)をひとつのパッケージに収めた(MCM:Multi Chip Moduleと呼ぶ)「Core 2 Quad」がラインナップされる。「Kentsfield」というコード名のこの製品は、メインストリームの上~ハイパフォーマンスを指向したCPUだ。もっとも、いくら省電力なConroeコアとはいえ、2つも積んだら消費電力が増えるのは必然で、TDPはCore 2 Duo(65W)よりも増えた105Wとなっている。
また、このKentsfieldの中でも特に動作周波数が上がる物を選別して、同じ名前の「Core 2 Extreme」としてラインナップしている。登場当初は2.66GHz動作のQX6700だったが、最終的には3GHz動作のQX6850にまで達した。
さらに2007年7月には、1333MHz FSBに対応したIntel 3シリーズチップセット(X38 Expressなど)が登場したことを受け、1333MHzに対応したConroeがリリースされる。
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