同じロスレス圧縮で、どうして音が違う?
コア部分を持つDTS方式の秘密
最新のロスレス圧縮においても、「ドルビーTrueHD」と「DTS-HD Master Audio」という規格が対立している。ここで気になるのは、仕様的な側面ではどちらも差がなく、ともに元の信号を完全に復元できる圧縮方式となっていることだ。
では、どちらも同じ音が再生されるかというと、そうではない。Blu-rayソフトには「ドルビーTrueHD」と「DTS-HD Master Audio」の両方で音声を収録したタイトルがあり、それを聴き比べてみると音の聴こえ方は確かに違う。
この理由は、完全に元と同じ情報が復元できるという点では同じだが、圧縮のアルゴリズム自体が異なっており、その微妙な差異が音にも現れるのだろう。その違いをもっともわかりやすく示しているのが、DTSのサラウンド方式に必ず含まれる「コアストリーム」だ。
DTS方式は互換性を保証するために、DTS-ESやDTS-HD Master Audioなどでも必ずコアストリームを内部に持っている。コアストリームとはDTSサラウンドそのもので、そこに「拡張ストリーム」として、DTS-ESならば追加されたサラウンドバックチャンネルの音声、DTS-HD Master Audioならば、コアストリームには含まれない原音情報との差分情報が含まれている。ちなみに、DTS-HD Master Audioの拡張ストリームだけを聴くと、それぞれのチャンネルから極めて微小な音が含まれているという。
ちなみに、ドルビーTrueHDの場合は、互換性を保つための「ドルビーデジタル信号」は独立した音声ストリームとして収録している。
DTS-HD Master Audioの場合、1ストリーム内にある全ての下位互換性を保証する「コア」と拡張部のエクステンションを含む全てのデータが収録されている。このあたりの違いが、どちらも元の信号と同じでもあるにも関わらず、明らかに再生音に違いがある理由だと推測する。このあたりの違いをふまえて、両方の音を聴き比べてみると、きっと面白い発見があるだろう。
映画タイトルでも、DTS-HD収録ソフトが続々と登場
BDソフトは今やほとんどのソフトがロスレス圧縮による音声を収録しているが、ドルビーTrueHDだけでなく、DTS-HD Master Audioで音声を収録するソフトもどんどん増えている。
映画会社でみると、20世紀フォックスやウォルトディズニースタジオ、日本ではVAPやバンダイビジュアルの最新タイトルでDTS-HD Master Audioを採用することが増えている。また、「崖の上のポニョ」のDVD版もDTS-ESで音声を収録している。BD版の発売は12月の予定で、音声はDTS-HD Master Audioだ。
国内に比べて発売タイトル数の多い海外版では、さらにDTS-HD Master Audioのタイトル数は多い。主にヨーロッパ版のBDソフトタイトルを一覧できる「Blu-rayStats.com」で見ると、およそロスレス圧縮採用のタイトルは約8割を占め、なかでもDTS-HD Master Audioは32.97%と、ドルビーTrueHDの26.76%を上回る。
この傾向は日本にも反映されると思われるので、今後はますます「DTS-HD Master Audio」タイトルを見かけることが増えるだろう。