IPアドレスとルーティング
IPではIPアドレスという論理的な識別子で通信端末(コンピュータやルータなど)を区別する(図2)。IPv4のIPアドレスは10進数や16進数で表記されることもあるが、中身は2進数の32桁の数値だ。このアドレスの中には、通信端末を特定する「ホストアドレス」と、その端末がどのネットワークに属しているのかを示す「ネットワークアドレス」の両方のアドレスが含まれている。
また、ある端末のIPアドレスから、ホストアドレスとネットワークアドレスを得るために、「サブネットマスク」という値を用いる。サブネットマスクはIPアドレスの先頭からの桁数(2進数)で表記される。サブネットマスクが24であれば、2進32桁で表記されたIPアドレスの、先頭から24桁目までがネットワークアドレスで、25桁目から最後までの8桁がホストアドレスである※2。
※2:8桁がホストアドレス 192.168.0.1を2進32桁表記に直すと“11000000 10101000 00000000 00000001”となる。サブネットマスクが24桁であれば、下位の8桁“00000001”がホストアドレスになるIPでは、パケットを直接通信することができるのは、同じネットワークアドレスに属する端末同士に限られている。ネットワークアドレスが異なる場合、必ずルータに中継してもらう必要がある。そのため、ルータでLANを分割する場合、分割された個々のEthernetのセグメントに属する端末は、すべて同一のネットワークアドレスに属するようにIPアドレスを割り当てる。
では、実際のIPパケットのやり取りはどうなっているのだろうか?
まず、通信を行なう端末は、通信相手のIPアドレスからネットワークアドレスを取り出す。それが自分と同じネットワークアドレスであれば、「このIPアドレスを持つ端末は、MACアドレスを返答せよ」という内容を、Ethernetのブロードキャストフレームに載せて送出する。これを受信した通信相手は、自分のMACアドレスを返信する。この動作を実現するプロトコルを、ARP(Address Resolution Protocol)という。こうして両方の端末はお互いのMACアドレスを知り、IPパケットをEthernetフレームに載せて通信する。一方、通信相手のIPアドレスが別のネットワークアドレスに属していれば、Ethernetのブロードキャストフレームが届かない。すなわち、ARPを利用して相手のMACアドレスを知ることができず、直接の通信は不可能である。そこで、送信元の端末はルータに向けてパケットを送出し、中継をお願いする。ルータは受け取ったパケットに格納された「宛先のIPアドレス」を見て、正しい宛先へ届けなければならない。
ここで、送信元の端末からパケットを受け取ったルータが、宛先の端末に直接パケットを届けることができるとは限らない。大規模な組織のLANやより巨大なインターネットでは、複数のルータを経て届けられることもある。パケットを中継するルータは、宛先までの適切な経路を選択しなければならない。
この経路を決定する動作を「ルーティング(経路選択)」と呼ぶ。これはルータのもっとも重要な機能である。
(次ページ、「ルータの経路決定の仕組み」に続く)
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