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試してわかるルーティング 第11回

RIPよりも柔軟なルーティングが可能なルーティングプロトコルを知ろう

大規模ネットワークでも使えるOSPFとは?

2011年04月26日 06時00分更新

文● 編集部

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 前回に解説したRIPは、事実上ルータが15ホップまでで、ルータが増えると経路の収束(すべてのルータに経路情報が行き渡ること)に時間がかかる欠点がある。こうした欠点が顕著になる規模のネットワークで、RIPに代わって使われるルーティングプロトコルがOSPFである。

リンクステート方式のOSPF

 OSPF(Open Shortest Path First)は、Shortest Path First(最短パス優先)という手法を標準化したルーティングプロトコルで、リンクステートと呼ばれるルーティング方式が使われている。

 リンクステートは、ネットワークに接続されている各ルータが、それぞれ自分でネットワークの地図「リンクステート」を持ち、それを基に最適な経路を計算するという方法だ(図1)。

図1 リンクステート方式

 このリンクステートを維持するために、ルータ間では経路のリンク情報を交換している。このリンク情報は、どのルータがどのルータと接続されているかといった接続情報が中心になっていて、これを受け取ることで地図を描くことが可能になる。また、ネットワークの一部でリンクの変更があった場合には、その情報だけを交換すれば短い時間で変更をルーティングテーブルに反映できる。

コストによる経路選択

 OSPFの場合、リンクステートは「LSDB(Link State Database)」という形でルータに格納されている。また、ルータ間ではLSA(Link State Advertisement)と呼ばれるリンク情報を交換することになる。OSPFのリンク情報には、RIPでのホップ数にあたる「コスト」と呼ばれる値が付けられる。これはそのリンクの帯域幅や利用料(従量制課金の場合)といった要素を数値化したもので、コストが少ないほど「よい」リンクだ。

 ルータは、手元のLSDBが完成すると、ネットワーク内の各ノード(ルータ)までの経路をすべて抽出し、経由するリンクの総コストを計算する。そしてもっともコストの小さな経路を、そのノードへの最短経路であると判断する。これを繰り返して最短パスツリーを作る。こうしたアルゴリズムは「ダイクストラ(Dijkstra)アルゴリズム」とも呼ばれている。このような計算によって、最短パスツリーを算出したら、ようやくそれをルーティングテーブルにまとめていく。

 図2の例で考えてみよう。左の図が元のネットワークで、AからJまでのノードがある。また、それぞれをつなぐリンクにはコストが設定されている。Aが自分自身とした場合、隣接するノードはB、C、Dとなる。このリンクのコストは10なので、B、C、Dへの経路のコストはいずれも10である。さらに、離れたノードEのコストは、Bまでの10と、BEのコスト50を加えたものになる。つまりB経由でEへたどり着くまでのコストは60というわけだ。

図2 コストの計算と最短パスツリー

 では、ノードHはどうだろう。AからHへ行くためには、Bを経由する経路と、Dを経由する経路がある。それぞれのコストを計算してみよう。結果からいえば、B経由はコスト125、D経由は170となる。つまり、近いのはB経由である。こうした計算を繰り返して、最終的な最短パスツリーは右側の図になる。

 こうしたコストに基づく計算を行なうため、OSPFはRIPよりも柔軟なルーティングが実現される。たとえば、図3のような回り道のほうが高速な経路が存在するようなケースだ。

図3 RIPとOSPFの違い

 RIPではホップ数だけで判断するため、経由するルータの数が少ないほうを選ぶ。つまり、より高速な経路があるのに遅いほうを選んでしまうわけだ。しかし、OSPFであれば、コストを最適に設定することでこうした不具合を起こさずに済む

 ちなみに実際のルータでは、コストは自動計算されることが多い。ヤマハのルータでは、LANは最小値である1がデフォルト値である。その他のインターフェイスでは、

100÷帯域幅(Mbps)

をデフォルトのコストとして採用している。たとえば、「64kbpsのISDNは100÷0.064=1562」、「100Mbpsの広域Ethernetは1」という具合になる。

 ギガビットクラスの回線を用いる場合は、計算方法を少し変えて、

100÷帯域幅(100Mbps)

などのようにして設定するが、計算したコストが最大値の65535を超える場合は、そのまま65535をコストとするのが一般的だ。

 本記事は、ネットワークマガジン2008年11月号の特集1「試してわかるルーティング」を再編集したものです。内容は原則として掲載当時のものであり、現在とは異なる場合もあります。

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