前回は、2台のルータを直結して、パケットが転送される様子を追ってみた。一方のルータ(B)を、もう一方のルータ(A)のデフォルトゲートウェイにすれば、ルータAに直結していないネットワークへのパケットは、自動的にルータBに送られる。では、ここにルータCという3台目のルータが加わると、どうなるのだろうか。
ルータをもう1台増やしてみる
ルーティングを考える際、まず意識すべきなのは「適当にパケットを投げてはならない」ことだ。パケットの行き先が複数ある以上、「とりあえず転送する」は選択肢から外すべきだ。もしそんなことをすれば、たまたま相手に届く場合があるとしても、無駄なパケットで溢れかえってしまう可能性がある。設定や管理の手間がかかりそうな予感はするが、ここはきちんと「パケットの転送先を設定しなければならない」と覚えておきたい。
ただ、見方を少し変えれば、ルータの台数が増えることで「管理が面倒になる」というデメリットだけが発生するわけではない。たとえばルータが3台あれば、それらを三角形につなぐことで、経路の冗長化も実現できる。ルータAからルータBに行きたいとき、もしその経路が障害で途切れていても、ルータCを経由した迂回経路を通ればよい。障害に強い「止まらないネットワーク」を構築するには、機器や経路の冗長化は不可欠である。
では、どうすればそのようなネットワークが構築できるのだろうか。その疑問を解くため、3台のルータを使って、迂回経路を作るために必要な設定や考え方を紹介したい。そのあとに動作を見て、仕組みの理解を深めていこう。
転送先をきちんと設定
ではまず、実験ネットワークの環境から確認しよう。今回は図1のように、3台のルータそれぞれに1つのネットワークがつながる環境を想定した。このようなネットワークで設定が必要な項目は、以前解説した、
- ルータのインターフェイスごとのIPアドレス
- ネットワークアドレスごとのパケットの転送先インターフェイスと宛先
の2点である。これらをそれぞれのルータに設定すれば、きちんとパケットが流れるはずだ。具体的な設定方法を見ていこう。
まずは、各インターフェイスにIPアドレスを割り当てる。今回はルータAのlan1(インターフェイス名)を192.168.1.1/24、lan2を10.0.2.1/24、lan3を10.0.0.1/24とする。次に、それぞれのポートの先にあるルータにつながるネットワークを設定する。lan1の先はローカルネットワークなので、そのまま特に設定しない。lan2の先にはルータCを介して192.168.3.0/24が、lan3の先にはルータBを介して192.168.2.0/24がつながるので、そのようにルーティングするように設定する。以上の作業を3台ぶん繰り返せば完了だ(画面1)。
無事パケットが流れるかどうかは、tracertコマンドで確認する。具体的には、ルータAのlan1に192.168.1.2/24のPCをつなぎ、ルータBにつないだ192.168.2.2/24のPCに対して以下のようにコマンドを実行する。
c:\>tracert 192.168.2.2
実行結果は画面2のようになった。無事2台のルータを中継して、宛先まで届いていることが確認できている。
このように、先に挙げた2 点をきっちり設定すれば、パケットは相手に届くことがわかった。しかし、経路やインターフェイスに障害が発生してパケットが通れなくなった場合は、どうすればよいのだろうか。次回は、この点を見てみよう。
本記事は、ネットワークマガジン2008年11月号の特集1「試してわかるルーティング」を再編集したものです。内容は原則として掲載当時のものであり、現在とは異なる場合もあります。 |
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