5月27日、シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)は、「Citrix Business Update」という事業説明会を行なった。また、先頃米国の「Synergy」というイベントで発表されたiPhone版の「Citrix Receiver」クライアントのデモを行なった。
社長と会長がシトリックスを再定義
発表会は3月にシトリックス・システムズ・ジャパン社長に就任したマイケル・キング氏の「シトリックスはなんの会社か?」という問いかけからスタートした。シトリックスという会社の再定義である。
1990年代後半に設立された同社は、アプリケーションやOSの配信からスタートし、ゼンソースやネットスケーラなどさまざまな企業を買収し、製品のフィールドを拡げてきた。長年親しんできたMetaFrameの名称がXenブランドに統一されたこともあり、「シトリックスはなんの会社か?」というやや自嘲的な問いにつながったわけだ。
これに対して、キング氏は「MetaFrame? アプリケーション配信? シンクライアント? 仮想化? ネットワーク最適化? クラウド? すべてがYESだが、これはシトリックスが提供する価値の半分にしか過ぎない」と同社の現状をこう表現した。こうしたソリューションによって「複雑化するITインフラを単一のプラットフォームで提供する。『Simlpicity is Power』が我々のメッセージだ」と同社が提供する価値についてまとめた。
また、取締役会長の大古俊輔氏は「Simlpicity is Power」の例として、日本での顧客との対話を紹介した。「日本では1996年に登場したWindows NTが動いている会社も多い。マイクロソフトもがんばっているが、10年、15年まで使いたいと考えているお客さんもいる。また、Windowsサーバの増殖を抑えたいと考えたいというお客さんもいる。メインフレームやUNIXサーバでは、古くから仮想化で台数が増えるのを抑えてきた。次はオープンシステムのWindowsの世界でも、実現すべき時期。こうしたユーザーに対して、デスクトップやサーバの仮想化、WAN最適化などのソリューションを提供できる」と説明した。ハードウェアやOSへの依存を断ち切り、使いたい機能のみを利用するインフラを提供するのが、同社の「Citrix Delivery Center」製品群というわけだ。
「無償化」と「コンシューマライゼーション」の推進
とはいえ、仮想化の市場では強力な競合ベンダーが存在しており、これに対してシトリックスもさまざまな施策を打ち出している。その1つがXenの管理サーバ「Xen Server」の無償化である。その結果「発表した3月以降、問い合わせが一気に15倍に増えた」(キング氏)とのことだ。
また、「コンシューマライゼーション」(コンシューマ向けの思想での製品化)というテーマで新製品も次々と投入する。まず発表されたのが、ITサービスをiTunesライクなインターフェイスで提供する「Citrix Dazzle」である。これはドラッグ&ドロップでサービスを利用可能にする「ストアフロント」で、コンシューマライゼーションの1つの適用例といえる。2009年後半にTech Previewを公開する予定だ。
また、テレビ操作と同じ感覚で仮想デスクトップを扱えるXenクライアント「Citrix Receiver」も、こうしたコンシューマライゼーションの1つ。高品質なアプリケーション配信を実現するCitrix HDXテクノロジーに対応し、発表会では先日米国で発表された「Citrix Receiver For iPhone」がデモされた。Windows版に続き、Mac OS X版、Windows Mobile版、Symbian版なども提供される。ちなみにこれらのクライアントも無償で提供される予定。
その他、今年の後半にかけ、クライアント側のハイパーバイザとして開発中の「Citrix XenClient」のほか、仮想化ソフトの新バージョン「Citrix XenServer 5.5」、WAN高速化装置の「NetScaler」の新バージョンなど新製品が目白押しとなっている。これらの新製品のいくつかは、6月10日から行なわれるInterop Tokyo 2009の会場に設置される「Xen Technology 2009」で披露されるという。