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仮想版のADCは新市場を掘り起こすか?

新兵器「NetScaler VPX」でF5を狙い撃つ

2009年09月29日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月28日、シトリックス・システムズ・ジャパンは同社のADC(Application Delivery Controller)であるNetScalerについての説明会を行なった。説明会ではADC市場でのポジションや新製品のバーチャルアプライアンス「NetScaler VPX」について説明が行なわれた。

急成長を遂げるNetScalerの現状

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 ビジネスディベロップメント ディレクター 山中理恵氏

 NetScalerは複雑化するWebシステムにおいてトラフィックを最適化し、パフォーマンスや信頼性、セキュリティを確保するADC。F5ネットワークスをリーダーとして、シトリックス、ラドウェア、ブロケード、アレイネットワークス、A10ネットワークスなど多くのベンダーがADCの市場に参入している。シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 ビジネスディベロップメント ディレクター 山中理恵氏は「現在のインターネットのトラフィックの70%以上がNetScalerを経由していると考えていただいてよい」とADC市場でのNetScalerの存在感をアピールした。

 こうしたNetScalerの優位性をさらに拡大していく「新兵器」が、6月に発表したNetScaler VPXである。これは今までアプライアンスで提供されてきたADCをXenのハイパーバイザ上で動作するようにしたもの。「高価な印象が強かったADCもより手頃な価格で導入できるので、SMB(Small Medium Business)の市場にもリーチする。2011年には、物理アプライアンスの売り上げを仮想アプライアンスが抜いていくと考えている」(山中氏)と鼻息も荒い。

仮想化アプライアンスのNetScaler VPXの真価

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 ビジネスディベロップメント シニアマネージャー 村上愼一氏

 次にビジネスディベロップメント シニアマネージャー 村上愼一氏がNetScalerの概要やVPXのデモを行なった。NetScalerはロードバランシングやプロトコル最適化、圧縮、QoS、SSLオフロード、アプリケーションファイアウォールなど多彩な機能を持っている。こうしたさまざまな機能を99%以上、Xen上で実現するのがNetScaler VPXで、「NetScaler VPXをブレードサーバで展開すれば、ラックスペースや消費電力を削減できます」(村上氏)という。

 使用されるサーバのスペックによって異なるものの、NetScaler VPXでは、最大で1GbpsのHTTPスループット、500Mbpsのアプリケーションファイアウォールを実現。CPUの性能向上や仮想化支援機能の拡充によって、昨今では仮想化環境でも十分なパフォーマンスを得られるようになったという。スループットに合わせて3つのモデル、機能に合わせて3つのエディションが用意されている。

Xen上で動作するNetScaler VPXの概要

NetScaler VPXのパフォーマンスについて

 村上氏はNetScaler VPXが提供する新しい価値として、クラウドサービスの実現、データセンターのマルチテナント化、ISVパッケージソフトとの組み合わせ、ソフトウェアの開発・システム検証環境などの4つを挙げた。「物理アプライアンスは必要なく、VPX自体もクラウドサービス上の仮想マシンで提供できます。セキュリティの強化やリモートアクセス性能の最適化、サーバの負荷軽減などが簡単に実現します」(村上氏)。村上氏はXenServerのツールからNetScaler VPXを導入するデモを披露し、アプライアンスに比べた設定の容易さをアピールした。

株式会社ブロードバンドタワー 代表取締約社長の大和敏彦氏

 最後にゲストとしてスピーチした株式会社ブロードバンドタワーの大和敏彦氏は、データセンター・ホスティング事業者の立場から、NetScaler VPXの可能性についてコメント。「昨今はインフラ貸しではなく、サーバやアプリケーションまで用意していくのがトレンドとなっている。今までこうした機器は別途用意しなければならなかったが、NetScaler VPXであれば通常のホスティングサービスと同じように汎用のサーバを用意すればよい。これは我々のようなデータセンター業者にとっては大きな可能性」と語り、NetScaler VPX導入を検討中であると述べた。

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