このページの本文へ

仮想化対応モデルの登場で、アプライアンスはなくなる?

マルチコアCPUを最大活用した2つのNetScaler

2009年06月09日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

6月8日、シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)は、同社のWebアプリケーションの高速化装置「NetScaler」の新製品を発表した。マルチコアCPUを活かした並列処理により、高いパフォーマンスを実現。さらにCPUパワーの余剰能力を活かし、仮想化対応まで実現した。

中小企業向けのNetScalerを追加

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 マイケル・キング氏

 シトリックスには「XenDesktop」「XenApp」「XenServer」「NetScaler」の4つの戦略製品があるが、今回発表されたのはWebアプリケーション高速化を実現するNetScalerの新製品。「NetScaler MPXの新ラインナップは初のSMB(Small & Medium Business)市場に向けた製品で、NetScaler VPXも業界初の仮想化対応製品」(マイケル・キング氏)とのこと。

 NetScaler MPXは、これまでサービスプロバイダ向けとして展開されてきたWebアプリケーション高速化装置で、ロードバランシング、プロトコル最適化、キャッシング、SSLアクセラレーション、アプリケーションファイアウォールなどの機能を搭載する。昨今では、ロードバランサ専用機を強化した「ADC(Application Delivery Controller)」と呼ばれる製品ジャンルとして認知されつつある製品だ。

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 ビジネスデベロップメント シニアマネージャー 村上愼一氏

 同社の調べでは、「レスポンスの向上で、サーバの台数を50%削減することが可能で、効果的な運用が実現した」(シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 ビジネスデベロップメント シニアマネージャー 村上愼一氏)とのことで、少ないサーバでパフォーマンスが実現されるため、高いコスト削減が見られるという点をアピールした。

 NetScalerは複数ユーザーのトラフィックを並列的に管理するため、パフォーマンスが必要になる。これに対して、「従来のNetScalerはシングルコア前提だったが、新しいNetScaler MPXのプラットフォームでは、複数コアにパケットエンジンを分配して動かす『Citrix nCore Technology』というテクノロジーが搭載されている」(村上氏)とのことで、最大で18Gbps(NetScaler MPXのハイエンド機種 17000)という高いL7スループットを実現している。

発表会会場で展示されたNetScaler MPXの2モデル

 今回発表されたNetScaler MPXの新製品は、「MPX5500」「MPX7500」「MPX9500」の3機種。すべて1Uのラックマウント型筐体を採用した企業向けの製品ラインナップとなっている。

NetScaler MPXシリーズの仕様と価格

モデル搭載ポート搭載メモリL7スループット(Gbps)希望小売価格
55001Gbps×44GB500Mbps198万円
75001Gbps×88GB1Gbps363万円
95001Gbps×88GB3Gbps第3四半期登場予定

Xen上で動作するNetScaler VPX

 もう1つのNetScaler VPXは、アプライアンス版で提供されているNetScalerの機能をソフトウェアで実現したADC。「Xenのハイパーバイザ上で動作する仮想アプライアンスイメージで提供される、まったく新しい製品」(村上氏)とのことで、物理レイヤ回りの機能を除くNetScaler MPXのフル機能を仮想環境上で実現する。同じソフトウェアでも、Xenのようなハイパーバイザ上で動作するという点が、汎用OS上で動作する通常のソフトウェア版と異なる点だ。

NetScaler MPXの機能の99パーセントをXen上でも実現できるという

 NetScaler VPXを使うと、単一のサーバに複数のADCを搭載できるため、アプライアンスの台数を減らすことができる。また、迅速に導入が行なえ、スケールアウトや冗長性といった面も優れているため、サービスプロバイダでの利用にも向いているという。設定や管理は「Command Center」という集中管理ツールで行なえる。

 NetScaler VPXはテックプレビュー版が現在公開されており、商用版は2009年第3四半期に登場する予定となっている。

 昨今、セキュリティ機器やアプリケーショントラフィック管理装置など、マルチコアCPU搭載のモデルが次々と登場しているが、今回のNetScalerの新モデルもこうした流れの1つと位置づけられる。以前のようにカスタムASICを搭載しなくても十分なパフォーマンスが稼げるのが、マルチコアCPU採用の大きな理由だ。さらにこれを一歩進めハイパーバイザ上のソフトウェアとして実現したNetScaler VPXは、今までのアプライアンスという製品形態を大きく変える可能性をかいま見せている。

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード