楽器ガジェットとウクレレに共通する5つの特徴
動画サイトと楽器ガジェットは、切っても切れない関係にある。
安いので試しに買ってみる。なんとなく弾けるようになった。だから誰かに見せたい。小さいから撮影も簡単。というわけで動画をアップ。それを見て誰かが興味を持つ。じゃあ安いので試しに……という循環が成り立つわけだ。
動画サイトがセールスに貢献していることは、楽器メーカーもショップも分かっている。例えばStylophoneの「イパネマの娘」で有名なkoishistyleさんの動画(関連記事)が、販売店であるDMRのウェブサイトにエンベッド(転載)されているのが面白い。実際、彼の演奏を見てStylophoneを買った人は私の周囲にもいる。その昔、楽器に興味を持つきっかけは雑誌やテレビだったのだが、時代は変わった。
これら楽器ガジェットの特徴を要約すると「安い」「簡単」「小型」「軽量」「ACがなくても鳴る」の5点だ。それはウクレレもまったく同じ。手工品の側面もあるので、価格については一概には言えないが、1~2万も出せば立派に使える楽器が買える。先のJulia Nunesが使っているのも、Bushmanというブランドの、せいぜい200ドル程度の楽器だ。
そして大抵のガジェット楽器同様、1時間もあれば音楽らしきものが鳴らせるようになる。実は私もYouTubeを見まくった結果、うっかりウクレレを買ってしまったのだが、スリーコードを覚えるのに10分とかからなかった。もちろん楽器としての奥は深いが、最初のハードルが低いのだ。
同じコードを弾くにしても、ギターはFが鬼門だ。人差し指で1~6弦をセーハできず、手の小さな女性はここで挫折することが多い。その点、ウクレレなら大抵のコードが指1本か2本で押さえられるし、弦のテンションもゆるくてネックも細い。女子が手にして歌うには都合のいい楽器なのだ。
ウクレレはネット音楽時代のパンクかもしれない
動画撮影向きのサイズも楽器ガジェットと同じだ。たとえばノートPC内蔵のウェブカメラは、机の上に置いて椅子に座り、手をキーボードの上に伸ばした状態で、大抵はバストショットになる。
ウクレレはその状態でも、適切なフォームで弾ける楽器だ。フレットボード(ネック部)まで画角に収まるので演奏はバッチリ撮れるし、楽器の音量が大きすぎないので、声とのバランスも取りやすい。ギターでフレットボード上の運指を見せるには少しパソコンから離れる必要があるし、すると今度は声がオフ気味になる。そうしたことを意識せずに撮れることも、ウクレレ動画を増やしている理由だと思う。
だから何か歌いたいことがあれば、手っ取り早くそのツールになる。「スリーコードが弾ければ誰でも出来る、だから画期的」と、かつてのパンクを評することもあったが、そういう意味でウクレレはパンクな楽器であるとも思う。
例えば、おっさん二人組のGus and Finというユニットは、本当にウクレレでパンクをやっている。おなじみのStylophoneに、Hohner社の鍵盤楽器「Melodica」、そしてウクレレはプラスチック製と徹底的に安く上げているのがカッコいい。では最後に彼らの演奏でThe Stranglersの「TANK」をどうぞ。
四本 淑三(よつもと としみ)
1963年大分県生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科講師。高校時代に音楽雑誌へ投稿を始めたのを契機に各種のコンテンツ制作や執筆作業に関わる。去年は動画サイトに上げたKORG DS-10の動画がきっかけで、KORG DS-10の公式イベント「KORG DS-10 EXPO 2008 in TOKYO」に参加。その模様はライブ盤として近日リリース予定。
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