8月13日は「平沢唯のギー太を作った人」の命日だ
子どもの頃は「Les Paul」はギターの名前だと思っていたし、マルチトラックレコーダーで遊んでいた時代も、それを誰が発明したかなんて考えもしなかった。もっと早い時期に知っていれば別の側面から音楽に興味を持てたかも知れないのに。
そういう個人的な反省に基づき、この偉人について広く知ってもらうには、今なら躊躇せず、こう言い切ってしまっていいのではないかと思った。
「平沢唯のギー太を作った人だよ」と。
Les Paulの業績で最も知られているのは、共鳴胴を持たないソリッドギターの原型※を発案し、自身のシグネチャーモデルである「Les Paul Model」を開発したこと。
これはGibson初のソリッドギターとして1952年から量産が始まり、今ではエレキギターの普遍的な形のひとつとして認識されている。
※ソリッドギターの原型: THE LOG。1本の木で出来た中央部と側面のボディーは切り離し可能だった。
それにしても「平沢唯モデル初心者用エレキギター」には驚いた。本物のLes Paul Modelはメイプルとマホガニーで出来ていて、女の子が持つにはちょっと重い。そこで素材を変えて軽量化というのがウリらしい。重くて辛いより軽くて楽な方が初心者には全然いいし、値段が高くて駄目な楽器はいくらでもある。「けいおん!」の主人公みたいに最初から25万円のGibsonが買えるのは、あれはマンガだからだ。
そのLes Paulも8月13日、94歳で遂に亡くなってしまった。彼はジャズギタリストにしてソングライターであり、多重録音の手法を編み出し、マルチトラックレコーダーを発明した人でもあった。彼が作ったものによって無数の音が創られ、我々はそれで様々な音楽を耳にすることができた。
Les Paulは自身のプレイスタイルを確固として持っていた人だったし、他人の音楽や表現にいろいろ思うこともあったはずだが、自分の作った楽器がどう使われようと文句は言わなかった。原形を留めないメチャクチャな改造を施されたり、フォー・レター・ワードを叫ぶ傍若無人なパンクロッカーにかき鳴らされたりしてもだ。

この連載の記事
- 第12回 コンピュータ言語の「演奏」に見る、未来のライブ像
- 第10回 ビバ☆ヒウィッヒヒー、そのアッサリすぎた偉業について
- 第9回 ロックバンドからニコ動にシフトした、キャプミラPの生き様
- 第8回 iPhoneでメロトロンが弾ける「マネトロン」作者に聞く
- 第7回 なぜ我々は「電子工作!」に燃えてしまうのか?
- 第6回 なぜ我々は「けいおん!」に萌えてしまうのか?
- 第5回 地デジカ騒動とYouTubeリミックス動画に思うこと
- 第4回 「忌野清志郎は死んでない」に考える、動画サイトとロックの関係
- 第3回 ウクレレは最強のネット楽器か?
- 第2回 初音ミクよりスゴイ「UTAU」って何だ?
- この連載の一覧へ