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四本淑三の「テレビを捨てよ、動画サイトを観よう」 第12回

コンピュータ言語の「演奏」に見る、未来のライブ像

2009年08月23日 12時00分更新

文● 四本淑三

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我々が期待しているのは「人の手を下した結果、起こる何か」

 キャラクター(テキスト列)をリアルタイムで打ち込むライブコーディング(Live coding)という演奏スタイルがある。人が電子音に介入する新しい手段として、これは実に興味深い。まずは百聞は一見にしかず。ただ、じっと見て欲しい。

 キャラクターを操作しているだけの映像に過ぎないが、不思議なことに音と操作がシンクロしはじめ、音楽の演奏を見ているような気分になる。これは入力されるキャラクターのパターンと音の関係を、画面を見ているうちに視聴者が学習するからだろう。

 この演奏はアレックス・マクリーンという、ロンドン大学のゴールドスミス・カレッジ※1の学生によるもの。彼はHaskellというプログラム言語のコードを、OSC※2を介してSuperCollider※3に送るところからこのプロジェクトを始めたらしい。

 電子音の演奏にどうやってフィジカルな要素を持ち込むか。たとえばElectribeのビートメイキングなどがいい例だが、それは動画時代の実演家のテーマのひとつだろうと思う。

 電子楽器が可能にしたのは完璧な自動演奏だ。非人間的なトレーニングを積まなくても、ピアノのような楽器を思った通りに鳴らすことが出来る。歌が下手でもボーカロイドがある。その点は素晴らしい。

 問題はライブパフォーマンスだ。たとえば、ステージの真ん中に置かれたパソコンにいそいそと燕尾服姿の男が近づき、一礼の後にリターンキーを叩いて演奏開始。そんな様子を眺めるのも楽しいのかも知れないが、それを演奏と見なすには、もうひとひねり何かが必要だと思う。

 おそらく我々が期待しているのは「人が手を下した結果起こる何か」であり、音楽はそれが連続して起こるパフォーマンスなのだ。

※1 ゴールドスミス・カレッジ: 芸術系大学。卒業生にはThe Velvet UndergroundのJohn Cale、Sex Pistorlsのマネージャーとして有名なMalcolm McLaren、ファッションデザイナーのVivienne Westwood、BLURのAlex Jamesや、Graham Coxonなどがいる。

※2 OSC: 「OpenSound Control」の略。電子楽器とソフトウェア間の通信プロトコルのこと。低速で情報量の少ないMIDIの代替を標榜する。

※3 SuperCollider: サーバー/クライアント型の音響合成言語。アルゴリズミカルな作曲とリアルタイムなオーディオ生成が可能。

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