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米FCCが3/17に議会へ報告する内容とは

スマートグリッドを「オープン」なものに

2010年03月12日 14時00分更新

文● 福井エドワード

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3月17日に、米FCC(連邦通信委員会)が行なう「ブロードバンドに関する議会報告」が、スマートグリッドにも関連して注目を集めている。通信当局の狙いは、スマートグリッドに関連するさまざまなイノベーションを促すような制度設計を行なうことにある。

「スマートグリッド」とは、送電ネットワークとITとを融合させる新たな技術のこと。家電製品からハイブリッド自動車・電気自動車まで、家庭内の各種機器の電力消費を最適化することを目指しており、さまざまな新ビジネスを創出する可能性を持っている。


FCCロゴ

 今年1月、カリフォルニア州南部のリゾート地パームスプリングで、環境技術の業界関係者と投資家、政策当局者が数百名ほど集う会議「Cleantech Investor Summit 」が開催された。その席上、通信面での新しい制度設計について、政策当局の担当者が行なったプレゼンテーションが注目を集めた。

 そのプレゼンテーションを行なったのは、FCCの環境・エネルギー担当部長であるニック・シナイ(Nick Sinai)氏だ。



FCCが議会報告に盛り込むであろう内容とは?

 シナイ氏が昨年(2009年)の春に現職に就任する以前は、エネルギー分野での新しいコミュニケーション・ネットワーク、つまりスマートグリッドに対する姿勢について、FCCはあまり明らかにはしていなかった。だが、今回のシナイ氏のプレゼンテーションによって、3月17日に予定されている米議会での報告に向けての、FCCの「考え方」が示された。

 現時点では、議会報告に盛り込まれる項目の範囲や内容は明確にはなっていないが、シナイ氏がプレゼンテーション中で挙げた主なポイントは、以下の3点だ。

  • スマートグリッドの通信ネットワークは、商用ネットワークとし、オープンな接続性を確保すること
  • 電力会社に、電力消費データのユーザーへのリアルタイムな提供を促すこと
  • スマートグリッドの構築のために、新たな帯域を割り当てることを検討すること


FCCの環境・エネルギー分野での制度設計の狙い

 FCCは、放送・通信に関する規制・監督を行なう政府機関で、電波の周波数の割り当てや免許の交付を行なっている。スマートグリッドでは、たとえば「スマートメーター」と呼ばれるインテリジェンスな電力メーターが、WiMAXやRF Meshなどの無線通信を用いて、電力に関するデータをグリッドとやりとりする。そのための通信部分については、FCCの所管となる。

 今回、シナイ氏は「オープンな接続性を確保する」ことを語った。これはすなわち、スマートグリッドが誰でも接続できるオープンなものとなることを意味している。ちょうどインターネットがそうであったように、さまざまなビジネスや起業家が、この新しいネットワークの上で新しいサービスを提供できるということが、制度設計の基本理念として示されたのである。

 マクロ的には、オープンなひとつのネットワークの上でさまざまな投資がなされることで、スマートグリッドを構築するコストを最小化できる可能性がある。投資の重複を排除し、多様な方式が試されることで、最も効率的・合理的な方式が生まれてくることが期待される。

 すでにスマートグリッドに参入している、シスコやIBM、シルバースプリングスネットワークスといったIT企業にとっては、新たなビジネスチャンスが広がることになるだろう。

 ただし、スマートグリッドのネットワークは、インターネットのように主に文字や画像などのコンテンツを運ぶだけではない。エネルギーというミッション・クリティカルな財を運ぶ役割を担うことから、セキュリティや信頼性・冗長性についても独自の設計思想が必要であり、ここは現在様々に議論されているところである。

 そこで、ネットワークの信頼性を確保し、エネルギーの供給の安定性を従来にも増して強固にするひとつの方策として、スマートグリッドに新たな周波数帯域を割り当てることが検討されているのだ。

 電力の供給インフラは、国や地域により様々な個性がある。一方で、通信はグローバルなものであり、アメリカの仕組みがそのまま全世界に波及するものではない。むしろ、「オープンな接続性」によって、どこかの国が制度を設計するのではなく、これからまさにネットワークの中で仕様が決定されてゆくであろう。新たなビジネスの立ち上げを促し、またイノベーションを促進する方向性に、多くの叡智が結集する未来が想起される。


スマートグリッド関連セミナーが3月18日に開催!

 アスキー新書『スマートグリッド入門』の著者でもある福井エドワード氏や、NEDOの諸住 哲氏、日本IBMの岡村 久和氏を講師に迎えた『MS、Google、IBMが続々進出する「スマート・グリッド」最新事情勉強会』が、3月18日に開催されます。

■日時
3月18日(木)16:30~19:30(開場16:00)
■会場
ビジョンセンター秋葉原
東京都千代田区神田淡路町2-10-6 OAK PLAZA(オークプラザ)
■主催
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・ルビーインベストメントリサーチ株式会社クリーングリーンリサーチ
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